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あ、泥棒。

 飲みすぎた日から3日が過ぎた。さて、今日は何のクエストに挑戦するか。掲示板を眺めていると、受付の方から怒号が聞こえた。振り返り、受付を見ると、ガーゼットさんと2人組の登録者が睨み合っていた。


「なんで、俺たちにアラクネル捜索の依頼を受けさせてくんねーんだよ。」


「ですから、あなたたちの実力では無理です。」


 太めの男がガーゼットさんに詰め寄っているが、ガーゼットさんは毅然とした態度で応対している。その態度に業を煮やしてもう1人のひょろ長い男がガーゼットさんの肩をつかんだ。こういう状況なら助けたほうがいいんだろうけど、正直ガーゼットさんなら大丈夫そうだ。


「なんでてめーに実力がわかるんだよ。」


「先日の東方面道路の魔物討伐クエストであなたたちの討伐は数は2です。しかも倒したのは三つ目犬のみ。また、ニワトリ確保のクエストでも他の登録者とともに参加してますが、討伐数1のみ。これだけではこの件を依頼することはできません。」


 ガーゼットさんの表情が冷たい。俺がいうのもあれだけどよくそれでアラクネル討伐に挑む気になるもんだ。まー報酬は高額。見たところ、金にも困ってそうな2人だし。やりとりを見ている俺たちに気づいた太い方が俺に近づき凄んでくる。こういう輩に絡まれるのには悲しいかな慣れているので、あんまり気にしない俺。あー面倒くせー。


「見せもんじゃーねーぞ。」


「まーそうですね。見る価値はないですね。ガーゼットさんは別ですけど。」


 そう言っておく。なめられる俺の特性故、怒りまかせで殴ってくる太い男。俺がそれをかわすと男はバランスを崩す。ふー避けれる実力でよかった。バランスを崩した男へ才華はなぎなたの石突を顎へ、千歳が刀を納刀したまま腹へそれぞれ入れる。男はそのまま気絶したみたい。いやー相当強くなってますなー。2人の背中が遠いじゃすまないなこれ。


 ただ、ガーゼットさんは2人の格闘能力より俺が回避したことに驚き、視線を俺に向けていた。まぁそうなるか。一応俺だってじーさん、ばーさんに才能なしと言われながらも鍛えられていたんだ。防御と回避、逃げならそこそこできる。達人、超人、複数人相手には無理だけど。まぁいつも絡まれた際には、最終的に1対複数になって、才華、千歳に助けられてたけど。


 太い男の末路に驚いてる長い男に、ガーゼットさんが男の手を払いながら言い放つ。


「少なくとも、あの3人ぐらいの実力がないと任せれないわ。」


 うーん。俺は過大評価です。まぁ説得材料に利用するのは構いませんが、


「はぁ、俺らがあんなガキより弱いってか。見てろって。」


 長い男は右手にナイフを取り出す。が。その手をガーゼットさんが蹴りあげナイフを打ち上げる。そしてナイフをキャッチし、長い男の首筋にあてる。


「いい加減にして。これ以上騒ぐなら、登録抹消よ。」


 顔というか、目つきがすごい、これがイナルタさんたちとやりあってた時の顔なのかな。こえー。声もトーンが低い。あーでもカッコいいかも。まだ登録抹消と言ってるのは優しさか。昔なら問答無用で殺してたんじゃないのかな。想像だけど。


 ガーゼットさんにビビった2人組「分かったよ。ブス。」の捨てゼリフとともにスタコラ逃げていった。


「かっこいい。ガーゼットさん。」


「すごいですね。」


 才華、千歳がガーゼットさんに駆け寄る。


「はいはい。静まって。」


 ガーゼットさんはいつも通りの雰囲気に戻る。


「それよりも、1つ依頼を受けてくれない。イナルタから聞いたのザイト、君の特性が活かせるかもしれないの。」


 ん?俺の特性?なめられるのが活かせる?アラクネルでも呼び出すとか?訳が分からないが初めてガーゼットさんから俺を頼りに(うぬぼれが強いか?)依頼されたクエストだ。断る理由もないだろう。



「依頼内容は街で頻発している窃盗の犯人を捕まえること。依頼者はニワトリの件でのボトムスさん。ボトムスさんは奥の部屋で待っているわ。」


 ガーゼットさんが説明してくれる。街に来たときから置き引きやスリが発生していたもんな。なるほど、泥棒になめられるから狙われる可能性が高い。確かに囮としては適任だな。ただ、ボトムスさんかー、報酬は期待できるんだけど。前みたいな態度だと、いつ才華、千歳を爆発するか不安だなー。

 

 部屋に入り、ボトムスさんと対面する。今日は1人だ。


「ニワトリのときの奴じゃあねーか。こいつらで大丈夫なのか?」


「はい。信頼できますし、この件には適任と私は考えてます。」


 ボトムスさんの質問にガーゼットさんがはっきり回答する。信頼できるって言葉はうれしいなぁ。


「それでは、私は下がります。」


 一礼をして、ガーゼットさんは退室する。



 各自が椅子に座り、俺が詳細を確認する。2人には黙っててもらうことにした。


「街の東門近くで、商品の入った袋を盗まれた。その犯人を捕まえろ。できるだけ早くに。以上。」


「泥棒の見た目とかはわかんないですか。」


「袋を置いて少し離れた間になくなっていた。だから分からん。」


「従業員さんたちはいなかったんですか?」


「奴らはいま東にニワトリを運んでいるところだ。もう直、街に戻ってくるがな。」


「はーそうですか。じゃあ、商品ってなんですか。」


 この質問にボトムスさんはピクと動いた。


「お前らの仕事は捕まえることだろ、関係ないだろ。」


 不機嫌な顔で答えるボトムスさん。禁制品でも運んでるのか?犯罪の協力なんてしたくない。


「あーでも、最近この街で泥棒多いじゃないですか。俺たちが捕まえたとしても、ボトムスさんの物を盗んだ奴とは限らないですよ。便乗した奴かも知れない。少なくともボトムスさんの物を盗んだことが判明しないと解決にはならないと思います。」


 理由としては筋が通っているだろう。どうだ。


「蓋をした赤色の壺だ。あと袋は白色。」


「分かりました。」


 さらに被害状況の詳細、報酬を確認した後、


「うちも商売だから、商品の管理上、壺は開けるなよ。捕まえたらギルドに連れてこい。」


 ボトムスさんは最後にこう言い、俺たちはギルドを出た。


 

 一旦自宅に戻り、3人で準備と作戦会議。


「才華は俺の前を歩いて、俺はそれに付いていくから。で、千歳が俺の後ろから付いてきて。見失わない程度に距離は取ってね。被害にあった時点で、千歳は追尾。才華には俺が叫ぶから、はさみうちで捕まえる方向で。まー俺が捕まえることができたら、一番いいんだけど。」


「分かったわ。」


 千歳が頷く。だが才華は


「えー。それじゃ私は在人を見れないじゃない。やだー。」


 頬膨らませごねてきた。あのさ、これ仕事。3人で一番足が速いのは千歳だよ。仕方ない。


「でも、付いてくために、俺は才華をずっと見てることになるよ。」


「ちゃんと、私のこの美脚と整ったお尻を見てね。」


 笑顔で答えながら、自分の足とお尻を叩く才華。切り替え早。ちょろい。


「うんうん。目の保養にさせてもらうよ。」


 この発言に今度は千歳が不服そう。あー面倒。


「千歳の足を頼りにしているから。」


「まかせて。」


 千歳も笑顔になる。ちょろい。


「万が一犯人を見失ったとき、2人とも、魔力感知で追跡できる?」


「「できる。」」


 俺の質問に2人は即答でうなずく。流石のハイスペック。


「才華は犯人の顔もできたら覚えて。千歳は俺に近づく不審者いたら距離を詰めてね。あと泥棒はできたら人通りの少ない場所で確保しようか。万が一、魔法とか使われて周囲の人に被害でたら困るから。」


「「オッケー。」」


 OKサインを出す才華と千歳。


「頼りにしているよ。愛しの2000万パワーズ。そしたら、中央広場から街を一巡した後、人通りの少ない道に行ってみるか。」


 とりあえず「愛しの」を入れて2人をおだてておく。これで2人はノッているに間違いはない。だから解決できると思うが。・・・うまくいくかな。俺の立てた作戦ってのが不安だ。この2人は作戦なんて立てず、いきあたりばったりで解決する方が得意だから仕方ないけど。


 

 街の中央広場に着き、作戦開始。才華が広場からギルド方向へ歩きだしたので俺も追尾開始。すると後ろからドンと人がぶつかる


「ごめんなさい。急いでたの。」


 そう言って去っていく。が。そいつと俺の間をゴムがびょーんと伸びている。あ、泥棒。泥棒は俺の財布を盗んだが、その財布にはゴムがついており、それに驚いている。自宅で俺と財布をゴムで繋げる準備したかいがあった。でも開始と同時って。俺ってそんなにカモに見えたのかな。これが特性のおかげか。なんか特性を知ってからより狙われてる気もする。それとも2人の運のおかげか。どっちにしろ複雑な気分。


「才華ー。」


 俺は叫びつつ、泥棒を捕まえようと手を伸ばす。泥棒は財布を俺に投げ、俺の顔に財布がストライクする。痛い。左目に当たった。そのスキに泥棒は逃走。俺が顔を押さえてると千歳が俺を追い抜きながら


「大丈夫?よくも在人に。」


 慈愛の言葉と憎悪の言葉を残し、泥棒を追尾。泥棒を殺さないでよ。才華も泥棒を追いかけている。

しかし、泥棒も結構俊敏で、人通りの少ない方へ逃げてった。俺が追いつけるのか?


 運よく、人通りの少ない路地裏で確保した。とういか、才華と千歳、2人とも泥棒が路地裏に入るまで速度を落として追尾してたな。路地裏に入った途端、一気に距離を詰めてたし。俺は3人を見失わないように追いかけるので精一杯だった。


「はーはー。追いついた。きっつ。」


 千歳が泥棒を地面に抑え込んでいた。右腕も極めている。


「はい、動かないでねー。1ミリでも動いたら、折るから。右も左も両足も。」


 財布の件でだろう。目も声も冷たい。泥棒は観念したようで抵抗も声もない。泥棒はフード付きコートを着ており、頭部をフードで隠していた。体格は小柄というより子供だ。


「まず、フード取ろうか。そこから質問していこ。」


 才華がフードに手をかける。


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