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ごちゃごちゃ

表にでないはずの黒歴史設定

Q 実際のところ、テリカは休憩に応じる?敵の出した飲み物を飲む?

「こっちももう終わるね。そっちは?」


「問題ないわ。」


 休憩モードでのほほんとし表情だったマアカの顔つきが変わる。治療は終了するってことね。

確かにこの戦いももう終わる。と見てもいいだろう。


「はあ、はあ、はあ。」


「もう終わりじゃないかしら?」


「まだよ。」


 四つん這いになりながらもギラついた目で返すミティ。まだ闘志は衰えていないのがわかる。精神はともかく体のほうはついてこれるか?それとも精神が肉体を凌駕するってやつを見るのか?


「でももうそんな状況じゃないと思うわ」


「はあ?」

 

 ミティは困惑した表情となり、愛音は俺達の右側のほうを見る。マアカ、才華も愛音と同じほうを見た。クロスティ、エルージュもそちらを警戒している。俺も見るけどなにもいない。隠れてるんだよな。それとも俺には見えないのか?前者だよな?前者ですよね?


「出てきなよ。今の私は緊迫した戦いのおかげで感度さんぜ・・・・ビンビンでバレバレだよ。」


 才華が誰もいない木々に向かって指さす。指先には炎がともっていることから、出てこないなら撃つつもりなのか。さあ反応は?あ!


「・・・・・。」


「・・・・・・・。」


 指さした方向よりフード2人組が飛び出てきた。フードのせいで老若男女もわからん。もうあの姿は完全にあれだ。ミステリアンパートナーじゃあないか。あんな恰好を実際見ることになるとは思わなかった。コスプレではないのだけはわかる。


「まんまミステリアンパートナーね。」


「そうね。」


 同じ感想を持った2人だが、感嘆はないようだ。むしろ落胆している。色合いなんだろうか?それとも空気感なのだろうか?もっと不気味であれってことなのか?


「もう1人も来たわね。」


「やれやれ、どういう状況なんですかね。」


 愛音の言葉と同時にもう1人降りてきて周囲を見渡す。これもフードで姿形はわからないが、声で男なのはわかる。若くはないかな? 


「さらに1人ね。」


 降りてきたのは女子。こちらはフードをつけていないし、ダークカラーな服装とツインテールから女子と判断できる。見た目はフォトゥより下に見える。


「ミニン!?・・・・・。あなた、なんでここに?」


「ふうん。」


 降ってきた子をにらむミティ。ミニンと呼ばれたそいつは無視してこちらを見る。状況確認というよりは品定めに見える。ミティたちの仲間、テリカの弟子なんだろうか?か?じゃなくそうなんだろう。


「在人、見た目で騙されちゃダメだよ。あれはシク達のような純粋な子とは程遠い腹黒ではすまない全身真っ黒な奴。」


「そう。才華に近いくらいドス黒な奴ね。」


「マアカには言われたくないな。愛音にもだけど。」


 言い合う2人だが今回は目をそらさない。ただマアカの言い方だと、才華のほうが上のように聞こえる。どっちにしろ同類達はドス黒いことに変わりはない。


「ですか。」


 って言ってる場合ではない。3対3のところに、向こうの味方1名。あと謎の3人。しかも乱入って温泉のときのローネでもう経験しているのに。そういえばローネも最初は猫かぶりをしてたな。・・・ミティもだ。なんだ?あのミニンといい。スタンドじゃなくて腹黒も引かれあうのか?あれ?ってことを考えている場合じゃあない。


「ってミティたちって3人だけじゃないのかよ。」


「なに驚いているの。ザアイ?さっき才華が確認してたでしょ。」


「そうね。」


「うん。」


 3人に驚きはない。想定していたのか?


「だからいないんだろ。」


「この場にはいないってこと。彼女の言葉は良く聞いとかなきゃダメだよ。もう。フードは別かもしれないけど。」


「・・・・・・あ。そういうこと。」


「「「そういうこと。」」」


 理解した俺と理解していた3人はうなずく。


「ってそんな場合じゃない。」


って、突っ込んでいる場合でもない。


 謎存在3名とミニンが一緒にいるってことはどう考えても向こう側。こっちはめっちゃ不利じゃないか。一気にピンチ。


「気づいていたなら、ここから逃げたほうがよかったんじゃないか?」


「逃げるとなったら当然、ミティたちにも追われる。追われながら戦うのって大変だし、場合によっては挟み撃ちになるわ。それにスタッフの子もいるしね。」


 確かに愛音のいう通りか。しかもスタッフの子を背負って移動だから、移動速度事態も遅くなるか。


「そうなると無傷に近いミティたちと万全状態のフード組と戦うことになるわ。だからこの場で3人を戦闘不能にして人数の不利をなくそうとしたわけ。」


 なーる。マアカ。人数の不利と連戦の不利なら、連戦のほうを取ったわけか。結果的にマアカと才華は休息をとることができてる。


「それに、ミティはなにかを隠しているとも見た。それがあのフード組に関するんだろうね。ふっ。面白くなってきたぜ、っていうべきかな?」


 両手でミティを指さす才華。面白くない!と内心突っ込むが、ミティの様子も変だ。


「質問に答えなさい、ミニン。私の招集に応じなかったのに。なんで彼らと一緒にいるのよ。」


 えーっと、つまり、ここに来るどころか、ミタキの街にいるってわけでもないってことか。じゃあ、なんだ?あとフードがなにものかは知っているってことだな。ここまではわかる。うん。面倒になってきた。


「結果を確認するためです。」


「結果?ふがいない私たちを笑いに来たってことかしら。」


 自嘲的な笑いをしたミティ。仇を討つどころか、3戦3敗は想定していないんだろうなあ。


「笑うこともできませんでしたけどね。」


 ミニンの雰囲気がいきなり変わった。


「1人も始末されていないなんて想像できないでいたわ。テリカといい、あんたといい、はあ。肝心な時に使えない。って本当にあるのね。」


 溜息をするミニン。目つきも冷たい。


「ほらね。」


 雰囲気が変わったことに平然としている才華。完全に想定内だったようで。


「ミニン、あなた・・・姉さまに対して。」


「あ。ごめんなさい、ミティ。つい・・・・・」


 ミティに憎悪のこもった目で睨まれ、気弱そうな雰囲気へと変わるミニン。


「つい。本音を言ってしまったわ。ふふっ。」


 外見と釣り合わない言葉遣い。見た目以上に年上なのか?


「あなた・・・・・・・。あ。・・っち。」


 雰囲気が冷いものに戻るミニン。あの目はミティも、もういないテリカをも見下している。それを感じ取ったミティは立ち上がろうとするも、左腕の負傷のせいで立ち上がれながった。怒りのせいか、左腕からも出血が激しくなっている。


「おーい、ミティ。内輪もめしないで、私たちにも説明してくれないかな?とりあえず、ミニン、君は何者なのかな?もうちょい詳しく教えてちょうだいよ。それとフード組も何者なのか?」


 空気を読まずに才華は手を振りながら割り込む。・・・そうだそうだ。内輪もめは他所でやってくれ。時間かかるなら帰らせてくれ。ぼちぼち帰りたい。不機嫌なミティと楽しそうなミニンの目線がこちらに。


「うーん、まあ、いいわ。」


 ミニンは口元を手で抑えて少し考え、答えた。いいんかい!こっちに向き直ると雰囲気が幼くなる。


「私はミニンと申し上げます。既にご承知と思いますが、テリカ・ヒッスの弟子、配下の1人。よろし」


「「「嘘ね。」」」


 恭しく頭をさげようとしたミニンに腹黒3人がピシャリと言い放つ。そうなんだ。


「っていうのは偽りの身分で、本名はヴィテス・プロン。『教団』の一員よ。」


「ほう。」

「へえ。」 

「ですか。」


 また目だけ笑っていない笑顔で顔をあげるミニンもといヴィテス。


 『教団』?また新しい用語が出てきた。『凶弾』や『教壇』ではないような。どう考えても『教団』。・・・・宗教がらみだったらより面倒そうだ。というより、殺し屋と関係ある時点でイカれた宗教だと思う。間違ったらごめんなさい。俺と同じで『教団』なんて知らない3人はさも知っているようにしている。


 だが、この紹介に一番驚いているのはミティだった。


「ヴィテス?ミニン、あなた、なにを言ってるのよ。『教団』の一員?どうゆうことなの?話しなさい!」


「そのままよ。この世界にあなたの知っている、幼い殺し屋ミニンという人物は初めから存在しない。」


 衝撃の告白?を楽しそうにするミニン。


「あなたの知る全ては演技。あなたたちと一緒に過ごした休日もこなした仕事も全ては偽りの笑みと私の手の上でのできごと。これでお分かり?哀れなお嬢ちゃん。」


 唖然として固まったミティ。良好な関係を築いてはいたんだろうな。だがそれは一方的な思い込みだった。それを知ればそうはなるか。どう見てもミニンのほうが年下に見えるが、実年齢は上なんだろう。


「テ、テリカ姉さまはそれを知って・・・・」


「知らないわね。いつか教える日は来ると思っていたけど、知ることなく死んじゃったからね。あなたみたいに驚く表情が楽しみだったのに。ふふっ。残念だわ。」


「な・・・。」


「ぷっ。つ~。」


 空気を読まない突然の吹き出し笑い。その声の主に皆注目した。


「ああ。ごめんごめん。つい我慢できなくて笑っちゃった。いいよ、いいよ、続けて続けて。くくっ。」


 声の主は必死に笑いを堪えている。 


「会話の邪魔をしちゃ駄目じゃない、才華。」


 飽きれた顔の愛音。そう空気読んでないのは才華。


「そういう愛音だって我慢してるでしょ。」


「ふふっ。まあそうなるわね。」


 手を口元にあてた愛音。僅かに口元が緩んでいるのは分かる。なにが2人のツボに入ったのだろうか?


「・・・・なにが可笑しいのかしら?お嬢ちゃんたち?ぜひ教えてくほしいわね。」


 癪にきたのか、声のトーンが落ちたヴィテス。


「ぷっ。テリカが知らない?ははっ。そんなわけないじゃん。どう考えても知ってて放置してたんじゃない。そっちのほうがおもしろそうだからね。」


 にやにやしている才華。


「『あら。そうなの。へえ。』ってあえて知らなかったふりをすると思うわ。口元をこんな感じにすしてね。」


 テリカのものまねまでした愛音。マアカが俺を見て「あれに似てる?」と確認してきたので無言で頷く。雰囲気といい口調といい、正直背中に嫌な汗が流れた。まじで似ていた。


「ねえ。在人もそう思うでしょう。」


「へ?」


 俺にまで振られるとは思ってもいなかった。生前、死後のテリカを思い出す。ヴィテスの演技を見てほくそ笑んでいるテリカの想像図。うん。しっくりくる。


「言われるとそうかも。うん、そんな気がする。気付いていないってことはなさそうだな。」


「でしょ。そう思うでしょ。在人だってそう思うんだよ。まさに知らないふりして体よくあんたを利用したってところね。」


「才華の言う通りね。」


「へえ。それを聞くと一度会ってみたかったかな。」

 

 あきらかに見下す笑みを見せた才華。同意する愛音。目の前の人物よりテリカのほうに一層の関心をもったマアカ。周囲から見たら煽っているように見える。あおりにあおったなあ。おい。怒らせたいのだろうか?


「・・・・・・・・そう。」


 ヴィテスは不機嫌な表情となるも、冷静だ。


「まあ。今となっては真実は分からないし、死んでおいかけるわけにはいかないんだから、この話は置いといて。『教団』の皆さんは私たちは何のようなのかな?」


「ミティたちを利用して、私たちを始末しようとしたのは分かるけど。」


「その理由、動機ががわからないのよねえ。ねえザアイ。心当たりはないでしょう?」


「え、あ、うん。そうそう。心あたり全くない。」


 反射的に答えてしまったが、俺達ってこの教団に狙われているの?教団に狙われる理由は全くない。恨みを買っているけど、


「・・・・・・君たちは色んな理由で邪魔になりそうですからね。」


 フードの男が口を開いた。こりゃまた、丁寧の口調だが、演技の可能性もあるような胡散臭さがある。


「邪魔ねえ。ミタキの街でなにをするつもりなのかな?」


「それは言えません。ですが、我々の行動理念は常に1つです。」


「ふうん。まあ、いいや。で。あんたたちはこれからどうする?」


 才華は一瞬だけ、ミティたちのほうを見た後、戦闘態勢をとる。この状況だと逃がしてくれないよな。愛音、マアカもだ。無言フのード2人が警戒したように見える。


「そうですね。我々で止めをさせる状況なら戦ったんですが・・・・。」


 フードの男は俺達の状態を確認する素振りをしつつ、無言2人を手で制する。フードの男が階級上か。治療を終えた才華とマアカ。ほとんど無傷に近い愛音。楽に倒せる状況ではない。


「この場は引き下がらせてもらいますよ。いいですね?ヴィテス。」


「まあ、それしかないわね。私たちは死体回収しにきただからね。」


 ヴィテスは観念したように大きなため息をした。この場は引いてくれるのか。解決するわけではないが、連戦は回避できそうだ。


「でも、後始末はしないとね。ね、ミティ。」


 ヴィテスの目がミティをとらえると同時に術式が展開。光り輝く刃がミティを襲った。眩しい。手が早いし発動も早い。口封じだよな!ミティは負傷で動けないでいる。あ!


「っち!きゃあ!」


「まあ、そうなるわよね。」


 愛音がミティのどう見ても負傷中の左わき腹を足蹴した。そのため刃は地面に突き刺さる。刃よりダ蹴りのほうがダメージ大きそうに見えたのは気のせい。ではないなああ。ミティは吐血している。


「あら?命を狙った相手を助けるなんて意外ね?っと。」


「情報源を失うわけにはいかないでしょ。」


「そうゆうこと。ネ!」 


 炎と鉄球が襲ったため、ヴィテスたちは間合いを広げる。


「エルージュ!」


「ザアイは愛音とミティの確保!スタッフの子は私とクロスティが守るから。」


「あ、はい。」


 才華が叫ぶと同時にヴイテスたち炎を吐くエルージュ。俺はマアカの指示に従い、走り出す。懸念したスタッフの子のこともちゃんと考えているのは流石だ。


「はあ。があ。触らないで!」


愛音の蹴りが効いているため、呼吸が荒い。目つきと気迫は力強いが、体にそこまで力はない。


「あーはいはい。と。暴れるなよ。」


 力はないが抵抗してくるので、あた。顔に拳があたる。ええい、気に入らない状況なのはわかるけど、あ。


「あなたたちに助けられ、がっ。く~。」


「今のうち、マアカのところまで下がるわ。足を引きずるでもいい。まだ反抗するなら気絶させる。」


 愛音は喚き散らすミティの鳩尾を蹴り上げた。ミティは悶絶して抵抗がやんだ。容赦ないっと。これなら、マアカの魔法もあるから抱えて持っていけるかな。ミティは声にならない声をあげるがスルー。あ、お姫様だっこは俺だって相手を選ぶから。


「愛音。いいよ。ってか、他の2人はどうする?あれ?」


 俺は肩にミティを抱えてた。と同時に2人のほうを見る。フォトゥがいない。


「ん。あの2人はね。ほら。」


 エルージュの吐く炎の向こうで人が動く。指さす方向には大鎌でフードの1人の頭を撥ねたフォトゥ。


「はっはー。」


「むううん。」


 鉄球でもう1人にフードも頭がつぶされた。2人は復活していたのか。


「ヴィテスたちが来たときにはもう気付いて、様子見してたみたいね。気絶からこんな短時間で復活するのは流石ね。」


 愛音が感心している。たしかにそうだ。特にレイダーは顔面滅多打ちされていたのに。


「ほら、よそ見はここまでにして。マアカたちのところに行くわ。レイダーたちだってどう動くか分からないんだから、情報源兼人質として、ミティは確保しとかなきゃ。」


 躊躇なく人質発言が出ることはどうかと思うが、反論するべきところはない。レイダーたちは味方じゃないのは確かである。


 俺達がマアカのところまで戻ると、フォトゥ、レイダーとヴィテス、フード男が対峙している。


「やれやれ。想定外すぎる状況とはいえ、彼らには悪いことをしてしまいました。せめて彼らの働きも無駄ではないことを祈りましょう。」


「そうね。祈っといて。」


 ヴィテスが前に出る。


「きひっ。ミニンじゃない、ヴィテスだっけ?ずいぶん、面白そうなことを隠していたね。」


「喜んでくれているならなによりだわ。」


「ひひっ。もっと楽しませて頂戴よっ。」


「それは嬢ちゃん次第ね。」


 ヴィテスの両手に術式が展開され、1、2、3、・・・・・20以上の輝く刃が宙にできあがる。


「いつものナイフや胸のリボンは?」


「使う理由がもうないからね。」


「あ。なるほどねえっと。」 

 

 ナイフとミティのドレスみたいな素材のリボンを使っていたのかな。そしてそれも演じていただけってことかか。


 会話が終わる前に飛んでくる刃を避けたフォトゥ。狂気をはらんだ笑みで互いを見据えるフォトゥとヴィテス。


 全ての刃をよけるなり、大鎌で逸らしたフォトゥ。あと数歩で大鎌の間合いだ。ヴィテスはフォトゥに向かって右手を伸ばし、術式を展開させる。


「はっ。」


 フォトゥが飛びあがると、その陰よりレイダーの鉄球。 


「っち。」


 ヴィテスは左手で術式を展開させ、隆起した地面が鉄球の軌道を逸らした。鉄球はヴィテスからフォトゥの方へ向かう。さらに先に展開していた術式から多数の刃もフォトゥに飛んでいく。数本が輝いて目がくらむ。あの状況でどう避けろと?


「レイダー!」


 フォトゥが叫ぶと、鉄球は衝突する前に一瞬停止する。そして、フォトゥはその鉄球を蹴って加速し、飛んできた刃も大鎌を逸らした。


「にひっ。さよなら、ちょっとだけど楽しかったよ。」


 2つの魔法を使った直後だから、術式の展開も間に合わない。ただの魔法を撃ってもあの大鎌でならたやすくそらされる。フードも動く様子はないから、あの振りかぶった大鎌をヴィテスはもう避けれないだろ。


「フォトゥ、止ま!」


 この様子を見ていた才華が叫ぶ。なんだ?


「ええ。さよなら。」


 笑みを浮かべて見上げたヴィテス。背中がざわついた。嫌なよか、あ!


「フォトゥ・・・・・」


 俺におぶられたミティもその状況を目にとらえ声を漏らす。


「フォトゥーーーーーーーーーーーーーーーーー!」


 ミティの絶叫。大鎌を振り下ろす前にフォトゥの首、胴体、太もも、両腕に横線が入り、次の瞬間

つながっているべき肉体はバラバラとなって重力落下していった。なにが起きた?

 フォトゥは死んだ。それだけは理解できる。



 フォトゥをバラバラにしたのはなんだ?


 その答えは宙にあった。宙からフォトゥの血が垂れ落ちている。血の流れ方から、刃があるように見える。大鎌を振り上げ、鉄球を蹴ったフォトゥは自らあの見えない刃に突っ込んでいったってことか?


「いつ・・・いつ、あんな刃を設置したんだ?」


「左手の術式ね。」


 愛音が冷静に答えた。


「あれって、鉄球を逸らしたんじゃないの。」


「そう見せて、あの刃を設置。地面の隆起はふつうに魔法を放つ要領ね。私や才華も足から凍結させたことあるでしょう。」


 ですか、愛音。


「あの多数の刃が数本輝くのも、見えない刃を意識させないためね。」


 ですか、マアカ。


「数もあるから見えない刃の感知もしにくい。フォトゥは間に合わなかった。」


 ですか、才華。がああ?!ミティは俺の顔面に肘を決めて、その後膝げりが飛んできた。俺は倒れこみ、ミティは背負われている状況から脱出。


「ミニン!!!!」


 怒りのままに走り出す。


「あ、おい。おおおおっと。おお・・・・・・」


 反射的に止めようとしたところ、愛音に腕を引っ張られ、尻もちを付く。俺が立っていた場所には鉄球が飛んできていた。あっぶねえええ。


「油断しない。」


 すいません、愛音。鉄球はやっぱりレイダーの投げたもの。いやいや、狙うは俺じゃなくて、フォトゥを殺したヴィテスにだろう。


「現状は三つ巴状態ってことを忘れない。ザアイ。」


 ごめんなさい、マアカ。


「在人、ミティは情報を得る有効手段。それをレイダーもヴィテスも理解している。殺すか助けるかの違いはあるけど。」


「ですか。才華。」


 3人は異様なほど冷静に見えた。反省・・・・終了前へ進もう。


「で、これから、どうする?情報源なくしたけど。」


「そうだねえ。まずはスタッフの子は抱えておいて。魔法がある以上、いつ広範囲の攻撃がくるかわからないからね。マアカ。」


「わかってる。ザアイ。」


 マアカが身体強化の魔法をかけなおした。そして、促されたので、俺はスタッフの子を持ち上げ、肩に掲げる。この間にレイダー、ミティとヴィテスはぶつかり合っている。負傷のせいか、1対2の状況でもミティたちは押され気味に見える。


「フードは戦う気がないのか、戦えないのか、わからないけど、こっちは見てるのよねえ。どうする、才華?」


「情報はあきらめて、まず生き残るほうを優先しようか。だから・・・・・札を見せつつ、私とマアカで作戦名『エンドオブワールド』でいこう。愛音は反撃に備えて。」


 ニイっと笑みを浮かべる才華。聞いたことのある言葉だが、なんだっけ?


「ああ。OK」


「ええ。」

 

 マアカは理解した表情で、愛音は表情からは分からないが刀を持つ手に力が入った。俺は置いてけぼり。


「心の準備はいい?」


「え、あ?」 


 愛音は心配した表情で俺を見てくれる。ええい、分からないのはいつものことだ。切り替え、切り替え。できることをしよう。今できるのは俊敏に動く。それだけだ。それだけでもできるようにしておこう。


「ああ。」


「あ!在人にも役割があるから、ちょっとこっちによれい。ひひっ。」


 俺の顔を見てひらめいた才華。呼ばれたので近づくと耳元で役割を教えられる。はい?それ本気?という前に表情を見るが、本気だ。空気読めよ、嫁よ。


「なら、さっそくいくよ。狙いはあのすました表情のフード男。」


「え、顔見えた?」


 フードも深すぎるくらいかぶっているから、向こうからもこっちからもなにも見えんと思う。


「見えてない。が。そんな気がする。」


「そんな気配はするわね。」


「あの佇まいはそうね。」


 才華の勘に同意を示す愛音、マアカ。ですか。


「在人!いくよ。」


「あ、はい。あーうん。」


「3・・・2・・・1・・・・」


「『ファイナルベント』」


 才華に言われたように合図を出す。こういうのが欲しかったそうです。実践でだよ。バカって思うよ。俺だけじゃないと思うよ。


 俺が無駄思考をするよりも早く、才華とマアカは術式を展開させて、魔法を放った。フードたちの前にやりあっているミテイたちが重なったタイミングでだ。しかも互いに正面に走り出したタイミングで。


 ミティたちの周囲にブロックが浮かびあがる。反応したミティたちへ氷塊と炎がうねるように飛んでいき、上方からは雷撃がミティたちを囲むように円状に落ちていく。これ逃げれないよな。


 さらにブロックが爆破していく。4種の攻撃に巻き込まれたミティたち。


「「本家には劣るけどね。」」


 才華とマアカがはもる。ですか。こっちに被害がきそうだけど、愛音が氷壁を作り上げていたので、とりあえず安全。才華さらになぎなたの術式を発動させるがなにも起きない。


「よし、ミタキの街までダッシュ。」


「ええ。クロスティ、エルージュ行くわ」


「ザアイも!」


 煙が晴れないうちに3人が街道のほうへ向き直り走り出した。俺もマアカに引っ張られたことから走り出す。えええ?なんで?この状況で?反対はしないけど。

A テリカ「まあ、相手が面白そうならねえ。 こいういやりとりをした後で音は変化するから、気になっちゃうのよねえ。それも楽しみだから。無論サイカたちの場合は応じるわ。むしろ、応じたかったわ。」

 

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