3対3後半戦
表にでないはずの黒歴史設定
Q 世間はバレンタインですが3人の渡し方計画は?
微妙な空気からピリついた空気と変わる。互いの気になることは解決したから、戦いにより集中できるのだろう。永井戦いとなる?それとも一瞬で決着が着く?修羅に近づく?得るものはなにもない?俺にはわからん。
「と、その前に。愛音!マアカ!」
才華がフォトゥを見たまま叫ぶ。
「「なに?」」
2人も目の前の敵を見据えたまま返事をする。
「会話できるのも最後かもしれないから一言。」
俺はそんなことを言うなと言いたいが、絶対とは言えない。テリカとは人数差もありなんとか生き残れた。今回は3対3でここまで互角の戦いを繰り広げている。なにが起きるかはわからない。それを才華たちも感じているのだろう。見てるだけの俺以上に感じているんだろう。だから才華らしかぬ発言に2人も驚いたりはしていない。
「武運をい」
言い終わる前に才華の指先から氷塊がフォトゥに向かって放たれる。いつもよりは鋭利に見えた気がする。たぶん。はっきり見えていないのは氷塊が放たれると同時に愛音とマアカも飛び出したから。そっちの動きに俺の目はつられてしまったから。
事前に打ち合わせでもしていたのだろうか。3人の表情が邪悪なのは気のせいだろう。・・・・気のせいじゃないよな。
どっちが悪人だかわからん。じゃあない、この場には悪人しかいないのか?うん、そうだ。そうに違いない。悪党同士の生き残りを賭けた戦い。戦わなければ生き残れないってやつだ。
不意打ちについて普通なら卑怯って思う人がいっぱいいるんだろうが、ミティたちは違う。慌てることも「卑怯者」など叫ぶこともなく、フォトゥは大鎌で氷塊を逸らして回避。ミティ、レイダーも横に飛びながら、愛音、マアカの攻撃を回避。
才華対フォトゥ・愛音対ミティ・マアカ対レイダーの後半戦が始まる。後半戦で解決すればいいな。
というより、ぜひ終わらせたい。あえて他人事風にがんばれ。頑張ってくれ。
「あんだけ密集してたら、大鎌も振り回せないよねえ。あとこの間合いだと逸らしても当たるよねえ。」
互いの武器が大振りするのは困難な近距離戦を挑む才華。指先が大鎌の刃に触れるまで接近すれば魔法を逸らそうとも距離的にフォトゥへ命中する。なるほどねえ。
「そうだよ~」
魔法を撃たせまいとしたフォトゥの攻撃は互いの武器で押し合う状況となった。これだと指先からは魔法は撃てない。指先しか撃てないなら膠着状態になっただろう。ん?
「じゃあ、これでどうだい?逃がさないよ~この炎は」
才華はなぎなたの刃先に術式を展開させる。ん?あの術式って?
「なら放たれる前にっと!」
「おおっと」
なぎなたを払った後、大鎌を振り上げるフォトゥ。体勢を崩され、尻もちをつく才華。
「なら振り下ろされる前に」
振り下ろす直前の動きが止まった瞬間、その瞬間を狙っていた才華。つま先より顔面狙いの氷塊を放つ。難しいらしいが指先以外からも魔法を放つことはできる。これは虚をついた。
「っと。」
フォトゥは首を後ろに反らすことで氷塊を回避。あら、脅威の反射速度で、今度は才華がやばい。このままだとまずい。
「危ないよ。ってもう遅いか。」
ニィと口を歪ませるフォトゥ。勝利を確信した目。ぶった切れることを喜んでいる目。大鎌が動く。
それに対してすまし顔の才華。
「危ないよ。ってもう遅いか。」
声真似しながら言い返す。
「ん?!」
背中と後頭部に氷塊が命中し、フォトゥは動きが止まる。背中の氷塊は当たったっていうよりは突き刺さった。下手したら心臓に届いているんじゃないのか?フォトゥは驚きながら後を振り返るが誰もいない。その様子を俺は冷静に見ていた。
なぎなたの術式は放たれた魔法を収束するもの。俺の位置からでも分かった。それにより先ほどまでに放たれた2発分の氷塊がなぎなたに向かい、その軌道上にいたフォトゥに命中した。術式を見ていたら気づいたかもしれないが、この場所に突撃した際、フォトゥは愛音に吹き飛ばされてこの術式は見ていない。見たとしても立方体に浮かび上がった地面が才華の元へ引きよせられるところだけだ。
止まった瞬間を逃さない才華はなぎなたの柄尻で正面から心臓を突く。
「ぐっ・・・・うわあああああ」
吐血しながらも大鎌を振り下ろするフォトゥ。だが才華はそれより早く追撃に入った。大鎌を避け、なぎなたで頭部を叩き付ける。大鎌は空を切り、先端が地面に突き去る。
才華は小さく飛びながら大鎌の柄を抑えるようになぎなたを押し当て地面とフォトゥの両足を凍結させる。大鎌の刃は凍結を逸らしてはいるが、なぎなたが添えられた柄の部分は凍り付いている。これで大鎌となぎなたは使用不可。
脳が揺らされたせいか、動きの緩慢なフォトゥに才華は左手の掌底を心臓に叩き付ける。違った揉んだ。なにやってんの。
「ふむふむ。」
「っち」
フォトゥは大鎌を手放した右手を振り払ってくるも才華もなぎなたを手放し右腕で防御。カウンター左ストレートを顎に決める。そこから才華は右手でフォトゥの左耳を掴みそのまま前に引っ張る。見てるだけでもイタイ。さらに右膝蹴りをみぞおちへ決めた。
「サイカちゃんって魔女じゃないの?」
魔法より物理がメインの魔女に疑問を持つか。理由は『才華だから』だフォトゥよ。
「魔法を使う女、じゃあなくて、魔性の女ってことよ。」
今度は顎を左アッパーで打ち上げた。魔法や魔性を微塵ま感じない攻撃である。
アッパーが決めてとなったのか、ふらつきながらも大鎌につかまったフォトゥ。
「どうする?逃げるなら追わないけど。」
「・・・・・少し考えさせて。」
「もし妙な動きをしようと思ったと私が思った時点でって言えばわかるよねえ。」
今の言葉は行動ではなく、思考した段階でとどめを刺すのか。しかも判断基準は才華がそう思ったらってことだよな。理不尽では?いやまあ、嘘を見抜けるならわかるのかもしれないけど。
「あ、う。」
返事を待たずにパンチラハイキックが決まり、フォトゥは大鎌につかまったままガクンと気絶した。
「まあ、寝てなよ。」
凍結を溶かして、なぎなたを回収した才華。なぎなたを回収した後は倒れないようにするためか、フォトゥの下半身を凍結させている。見てただけで身震いしてしまった。
「一番のりいいい。」
Vサインと笑顔で俺の元へ来た才華。まさか3人で速さ勝負してたわけではないよな。前もってこのような状況になった際、誰が一番早く戦闘を終わらせることができるか?終われば俺の横。言ってて気持ち悪いな。
「怪我はなさそうだな?」
「ううん。ヒビじゃあ済まないね。こりゃ。いやこれで済んだとおもうべきかな。」
才華は首を振りながら右腕を見せる。うげ、色が変わっている。よくまあ平気そうにしているな。
「これって振り払ったのを防御したときだよな。」
「そうそれ。あの細腕に騙されるけど、あの大鎌を自力で振っていたんだからこうはなるか。」
「・・・・あの鎌にこの盾みたいな取り扱いやすくする工夫はないと。」
才華はうなずきながら、なぎなたを俺にあずけ、治療を開始する。
「私も・・・・まだまだだね。」
某王子様風にいいながら、盾に隠れるように俺にもたれ掛かってきた。あの大鎌の迫力は精神的にきつかったのかもしれない。
「ちょい休憩。」
「あいよ。」
俺は左腕を才華の脇下に通してそのまま支える。まだ終わっていないが、無事であることにホッとし、お疲れと心の中でつぶやく。
「ウラー」
マアカの叫びのあと、鉄球とハンマーの衝突音。自然と目線はそちらへ。ウラー?ジェロニモ?
「そっちはウラララー。あれもロシア語。「万歳」とか突撃の喚声。」
「ですか。」
才華はこっちを見ないで突っ込んだ。俺は視線を一瞬だけ才華に向ける。マアカはロシア出身なのかとも思うが、世界各国に滞在しているマアカなら話せはするか。そしてそんな突っ込みをしている場合でもないか。
「ふう。」
鉄球を弾き飛ばしたマアカ。先ほどは手を痛がっていたが、慣れたのか、やせ我慢なのか平然としている。
「フォトゥは放っていおいていいの?」
「・・・・・・・・・」
マアカの質問に対して、無言のまま鉄球を一直線に投げてきたレイダー。
「返事ないのね。」
つまんなさそうな顔をしながら、マアカは左手に術式を展開させた。
「魔法なしであなたを倒すのは無理そうだからね。」
レイダーの前面に多数のブロックが浮き上がる。ブロックの大きさこそ均一だが、高さや場所はばらけている。さらにスッタフ救助のときよりも密集して数も多い。
「むん!」
お構いなく鉄球を投げたレイダー。最も近い位置に位置したブロックは鉄球がぶち当たり、ブロックが砕けた。だが砕けただけでその場から落ちることはなかった。むしろ落ちたのは鉄球だった。
「!」
鉄球がブロックを砕いて突破し続ける。そんなイメージをしていたのは俺とレイダーだけのようだ。
「壊せてもあり続ける。さあ、どうする?」
小悪魔な笑みで挑発するマアカ。投擲系はあれを躱して投げる必要があるか。それだけでも難しそうなのに当てるとなると・・・・・。
「・・・・・」
囲まれた状況だがレイダーは冷静だ。
「・・・・・・マアカはどうするんだ?」
「・・・・・・どうしよう?」
ふと漏らした俺の疑問がマアカにも聞こえたようだ。困った顔でこちらを見ている。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・えええ?
いやいや、あの魔法は自分で開発したんでしょ。なんらかの運用方法はあるんじゃあないの?
「いやそんな顔で頬をかいてる場合じゃないって。かわいいけど。」
こんなときに言っているんだ俺。そして、このやりとりを気にせずレイダーは鉄球を振りぬいた。
見事に隙間を抜けてマアカに迫る。マジですか?
「マアカ、ま」
「大丈夫でしょ。」
俺が叫ぶと才華はのほほんと答えた。ですか?そうですか?理由は?俺は腕の中の才華に目線を下す。才華は治療を終えて、俺の腕と盾の中で寛いでいる。おいおい。いやそれよりマアカ。目線を戻す。ええいあわただしい。落ち着け俺。
マアカの目前で鉄球の動きは止まった。むしろ戻った。
「これもよし。」
水平移動したブロックが鉄球の鎖を上へ右へと引っ張っていた。これで鎖が限界まで伸び切り、マアカには届かなかった。
さらに動きの止まった鉄球と鎖の結合部分に4つのブロックが取りついた。これでもうこの鉄球は使えない。
レイダーは抵抗して鎖を引っ張る。がびくともしないでいる。レイダーで無理なら大抵の人物で無理だろう。
マアカは走り出し。ブロックを踏み台にして、レイダーに近づいていく。
レイダーはもう1つの鉄球を振り回す。だんだんと鎖が伸びていきさらに回転速度も上がっていく。今まで気にしてなかったが、腰元から鎖が伸びている。あれか都合のいい収納のできるポーチなりを腰元に装備しているのか?
「だけど、あれだって下手したら、さっき見たいな結果になるよな。」
つまりマアカが有利。
「なーに言ってるの。レイダーの腕をよく見なよ。」
才華に言われた通り、腕に注目。素手ではない。
「・・・・小手?手甲?」
「そ、手甲。たぶん、キャノさんやフォトゥみたいな展開があると思うよ。」
「ですか。」
こういう観察力の差が、俺と才華たちの違いなんだろうな。レイダーはマアカに向かって鉄球を投げた。
この鉄球は先ほどと同じく軌道上のブロックに衝突。ただし結果は真逆で、ブロックを粉砕し突破した。
「ハラショーッ!」
何故この結果に?マアカも声を上げて、向かってきた鉄球をハンマーで迎撃。マアカは反動を利用したのか、浮かびあがり、ブロックの上に着地。
「左は対魔法用の鉄球ね。魔法効果を消すのかな?」
俺の目線に応じて、才華が解説してくれた。ですか。次々ブロックは破壊され、今度は鉄球を抑えていたブロックに伸びる。マアカは察してハンマーをフレイルモードに変えて、ブロックの上で一回転し、鉄球を投げた。
レイダーは左腕で鉄球を防ぐ。手甲があるといはいえ、ダメージはあるはずだがレイダーは気にも留めず、そのロープを左手でつかんみ引っ張った。
マアカは織り込み済みのようで、ロープに電流を流しつつ、自らレイダーに向かって飛んだ。レイダーはロープを手放し、拳を握りこむ。
「うおおおお。」
「ラアアア」
レイダー渾身の正拳に対して、マアカは鉄球を抑えるための爪を左手に突き刺した。
「む。ぬおおお!」
「ラッ!」
レイダーは爪が刺さったまま、左腕を引き下げ、右手でマアカに掴み掛ろうとする。マアカは足元にある鉄球を蹴り上げた。鉄球はレイダーの顔を跳ね上げる。
流石にこれは効いたのかグラついたレイダー。 だがすぐさまその目はマアカをとらえ、両手でロープを掴んで、引っ張る。
「だあああああ。」
「わわわ。」
レイダーは鉄球と同様にロープを振ってマアカを洞窟の入り口付近に投げ飛ばした。マアカは壁にぶつかり、地面に落ちる。
「マアカ!」
「受け身とってる。」
叫んでしまう俺と冷静な才華。とっても痛いよな、あれは。
「いったーい。」
少しだけ痛みで悶えたマアカ。その間にレイダーはブロックで封じられた鉄球を回収した。
マアカは素早く立ち上がり、才華曰く、
「女の嗜み」
として汚れを払いながらだが術式を展開させた。レイダーの周囲に数個のブロックが浮き上がるが、レイダーはそれを無視して左の対魔法の鉄球を投げた。
軌道上のブロックを粉砕しながら迫りくる鉄球に突進するマアカ。迫りくる鉄球の右側をすり抜けたところに、弧を描き右手の鉄球が対魔法の鉄球の影より迫る。
この位置だから鉄球2個の軌道がわかるが、俺がマアカの立場だとたぶん気づかず、粉砕される。
マアカは2個目を避けるためジャンプ。これで鉄球と鎖が空を斬る。
かと思ったが、鉄球というか鎖の動きが変わった。あれ?一瞬止まったようにも見えた。地面に対して平行に弧を描いた鉄球の起動が、マアカ目掛けて修正された。魔法ってある程度都合にいいものがある世界だけど、物理的におかしい動きだ。
軌道が変われど、威力は変わらない気がする。マアカは鉄球の変化に気づいているのか? !気づいているようだ。でもどうやって?
「レイダーの手や腕の動き。」
ですか。才華。なーる。
気づいているとはいえこれからどうする?空中だからこれ以上動きようがない。才華みたく氷塊を作ってそれを押して避ける。には時間がない。ハンマーで迎撃する?ハンマーも間に合うか?がマアカの選択はどちらでもなかった。
「アアアア!」
マアカは足元から迫りくる鉄球を踏み台にして前に移動した。絶対足いったはず。
マアカは前のめりとなり倒れこんだ。この間にレイダーは2つの鉄球を引き戻す。
「うおあああああああああ!」
マアカが立ち上がると対魔法鉄球が飛んでくる。明らかに右足の様子がおかしい。が、マアカはお構いなしに体を一回転させてハンマーを鉄球に叩き込む。
「ラアアアアッ!」
鉄球をそのまま進行方向に加速させるように打ち込んだマアカ。
「む。ぬうううう。ぬん!」
一瞬だけ鎖に引っ張られたレイダーは足腰に力を入れその場に耐える。結果、俺の腕くらいの太さはある鎖がぶった切れた。あんなの引きちぎれるの?
今まで聞こえていた金属の衝突音や空を切る音とは違う衝突音が響く。
洞窟の壁に鉄球がねじ込まれ、壁に亀裂が入り、あ、入り口が崩れてふさがった。とそんなことを気にしているのは俺だけで、マアカとレイダーは次の行動に移っている。
左の鎖を投げ捨て、両手で右の鉄球を投げつけるレイダー。マアカは術式を展開させた。さらに右足に拳を叩き込んでそこから走り出した。負傷中の足に克を入れた?
数個のブロックが浮かび上がり、階段上となり、それを駆け上がる。そのブロックに鉄球を防がれ、レイダーは鉄球をひき戻す。
「ぬん!」
「えええい!」
マアカが最上段に上り詰めたところで、レイダーが鉄球を投げた。マアカも鉄球を投げつける。
互いの顔を狙った一撃。俺なら全力で避ける。それかびびって動けないから直撃。そんなイメージがわく。
レイダーは鎖を捨て頭部狙いの鉄球を両手でキャッチした。手の負傷から血が飛び出る。あいつに避けるという選択はないのか?すごいというべきか?
鉄球を投げ終えたときにはもう既にマアカは動いていた。レイダーは逃げないで受け止めると思っていたのかもしれない。
鉄球を回避しつつ、ブロックを足場にマアカはレイダーへ突っ込む。そして、ハンマーの柄の爪で、キャッチされた鉄球を挟み込んだ。さらにメイスモードへ戻しつつ自身の腕をねじる。
マアカは鉄球と爪でレイダーの指を潰す。ほんの僅かだがイヤな音が聞こえた。
「ぐっ」
レイダーの顔が少しだけ歪み、マアカはそのまま鉄球を押し込こんだ。この動きで鉄球から地面に何かが落ちる。潰れて、ちぎれた指先だ。
だがレイダーは指先なぞ気にせず、のけぞった体勢から腕で柄を払い、マアカにサバ折りをしかけた。
「ぬおおおおおお」
「はあああああああ」
マアカはハンマーを持ち直して鉄球部分を垂直にレイダーの顔面にたたきつける。何度も何度も。そのたびに血が飛び散る。マアカも口から吐血している。
数発の叩き付けののち決着はつく。レイダーが倒れ、マアカがそれを見下ろしていた。獣のごとき戦いはマアカが勝った。
足を引きずりながらマアカは戻ってくる。
「いたた。っと」
「大丈夫か?」
「左足とあばらはすぐ治療ね。才華、足をお願いしていい?」
「へいへい。」
俺の腕の中にいる人物が才華からマアカへ。マアカのほうに目がいっていたから気にしていなかったけど、才華の腕の治療はとっくに終わっていたんだろう。
「じゃあ、ザアイ、よろしく。ふはあ。」
さも当然とマアカは俺にもたれかかってあばらの治療を始める。才華もしゃがみこんで足の治療を始めた。とりあえず、目線は愛音へ。
「はあ。はあ。はあ。」
「あとはあなただけね。」
片膝をつき、肩で息をしているミティと中段の構えで涼しい顔の愛音。あの謎スカートも当初の3分の2くらいしか残っておらず、あとは地面でバラバラ。ミティも泥やほこりでボロボロ。
「あの汗と左脇腹の汚れ。骨がいってるみたいね。」
「私が休憩中に膝蹴り、刀の柄での攻撃は見たよ。でもその前にはもう汚れてたから、追い打ちかな。愛音のことだから、まだまだ狙うと思うよ。無表情か小さく笑いがならね。」
マアカと才華とが解説してくれる。ですか。
「どうする?まだやる?」
「はあ。はあ。っく。」
ミティは愛音に向かって走り出し、スカートを下から上へと振った。スカートの裾は地面を削り、土砂ち土煙を巻き上げながらあげる。目くらましか?あと布なんだよな?
「服全体若しくは一部が強固になって、裾や折り目はより鋭利かつ強固になるみたい。」
「あれもこのハンマーやフォトゥの大鎌のようなものね。布だけど。」
マアカと才華が解説してくれる。ですか。
愛音は手のひらサイズの術式を展開させて2歩下がった。
「こんなところかしら?」
さらに小さな氷塊を指先より放った。
愛音の前に氷柱が出来上がり土砂を防ぐ。目くらましの土煙の中から螺旋状になったスカートが氷柱を貫いた。
止まったように見えたスカートは愛音を追うようさらに絞られ伸びてくる。スピードも上がった気がする。当たる?じゃなくて貫かれる?
「安心して、届かないよ。」
「そうね。ザアイ。ほら。」
マアカが指さす方向を見る。ミティの脇腹には氷塊がぶち当たっていた。だた指先から放った氷塊の大きさではない。倍以上というかもう圧倒的に大きくなってる。なんでだ?・・・・あ!氷柱とつながっているのか。
「かっ・・・・・・」
吐血し動きが止まるミティ。そこから氷柱はミティをも氷漬けにしようと凍結が広がっていく。足元もだ。あれがさっきの術式の効果か?
「くっ」
左腕を動かし、スカートで氷柱を砕こうとするミティ。すると氷柱の凍結は左腕に伸びていく。
「なによこれ。」
スカートをというより腕を振れば振るほど凍結がミティを襲う。
右手の剣を振るも同じだ。
「水の滴るいい女。氷と舞う女。言葉だけだと素敵な響きね。」
愛音は高めの山なりで水玉を放つ。水玉はミティに当たり、弾けた。びしょぬれ濡れだ。濡れておわればいいけど、より広範囲に凍結が襲う。
「簡易な盾と思わせた陰湿な罠。ある程度の質量と魔力が動くと反応するのかしら?愛音が考えそうなことね。たぶん才華。あなた対策よね。」
「あーやだやだ、あれの相手をするだけで疲れそう。愛音の性根の悪さが出てる魔法だね。」
同類たちが同類への感想を述べる。・・・・・ノーコメント。
「才華だと小さいからすぐ氷像になるんじゃないの?おうちで飾ってあげようか?」
「マアカこそ、揺れるものが狙われるんじゃない。外したら?」
「外せれるなら、真っ先に貸してあげたいところだけど。ごめんなさいね。自前だから無理なのよ。」
「はっ。いらんわ。」
にらみ合う2人。・・・・ノーコメント。うう。なんでこっちのほうが冷ついた空気なんだ?
「えーとあの魔法を2人ならどう対応する?」
空気を換えるため、話題を変える。
「ん。私なら溶かす。」
「私ならあの発生源である氷柱から離れる。たぶん効果範囲も狭くて、持続時間も短いと思うわ。ミティもそうするようね。」
2人から愛音たちに目線を戻す。
ミティはスカートを腕と手首、最低限の動きだけ動かし、足元の地面をえぐった。すぐさまスカートを右手の剣で切りさき、スカートを襲いかかる凍結に押し付ける。スカートが凍結していく間に、ミティはバック転で氷塊から離れた。両足はまだ凍結しているのに、体操選手と変わらないうごきだった。
「ひひっ。嵌ってるね。」
「そうね。嵌ってるわね。」
2人の言う通りだった。愛音はすでに間合いを詰めていた。
「ま、」
「ま?」
間違いなく「待て」って言おうとしたミティの言葉を遮り、愛音の左手の裏拳が顔に入る。そこから、右足での三日月蹴りがレバーじゃなくて左脇腹に突き刺さる。本当に容赦ねえ。
「く・・・・・・」
一瞬動きが止まるも剣を横にふってきたミティ。身をかがみこんで避けた愛音は今度は肘打ちで追撃。やっぱり左脇腹狙い。
「がっ。この。」
ミティは吐血しながらも歯を食いしばり、スカートを振ろうと左腕を掲げた。
「あ。」
掲げた腕が振り下ろすために止まった瞬間、手首を刀が貫いた。あ。い、愛音は刀で捩ってる。イタイイタイ。
「・・・・・血で錆びらせるのは惜しい代物なのよね。はああ!」
愛音は刀を両手でもちなおし、腕に沿うように刀を降ろしつつ抜いた。
「くうう。そこでそれか。愛音。いいなあ、このハンマーでは言えないよねえ。」
「ちょっと違うけど、だがそれがいい。」
腕を斬る残酷シーンだが別のことに注目する2人。
「アア!ぐぶっ。」
ミティの苦痛と血がこぼれ、左腕を抑えた。苦痛で顔が下を向くのに合わせて愛音の左足でのハイキックが顔面をとらえた。
前のめりになるのを右手の剣で倒れるのはなんとか防いだミティ。そこを愛音はえーっと?
「「フランケンシュタイナー」」
で地面にミティの頭部を叩き付けた。・・・・・・なぜここで?
A 才華 「さあ、このリボン(体にまいてる)をとり、どこかにあるチョコを探したまえ。」
愛音 「お風呂にして、チョコにして、私にするでいいんでしょ?」
マアカ 「今ちょっと手を離せないから、ここ(谷間に目線を向けて)にあるチョコ取って」