雨降りの日
表に出ないはずの黒歴史設定
Q オーク歌劇団の公演していたタイトルは?
カンアの湖の温泉旅行から帰宅して10日後。いつも通りのクエストをこなす日常を送り、今日はシクたちの訓練日。
照れているシク 「今日も」
元気いっぱいなルンカ 「1日」
少し照れ気味のライジー 「がんばる」
淡々としているサウラ 「ぞい」
円陣を組んで、聞いたことのある有名セリフを言った4人。そのポーズも再現している。
「「「可愛い~」」」
仕込んだ犯人たちはその姿にメロメロという言葉がぴったりな状態。3人ともスマホで写真とっている。かわいいっちゃあかわいいが、朝からなにをさせているんだか。
こんなスタートだったが、早々に雨が降ってきたため、自宅内に移動したところである。
「愛音、ポーズ。刺激的なヤツで」
「こんな感じ?」
愛音が右足を掲げてYよりもIに近い形でバランスをとっている。確かに刺激的。服装といい、腰回りといい。ただ、そういうふうに捉えて見ているのは俺だけだろ。ええい、なんだその目は。俺を見るなクロスティ。
「うわあ」
「にゃあ」
「すっごーい。」
「おお」
シクたちは口をあけて感動している。体の柔らかさに感動した純粋な瞳をしている。外はあいにくの雨だが、まぶしい。この純粋さが眩しい。純粋な4人の周りに純粋な悪の3人。それを見ている不純な俺。
「ここまでできるようになれ、とは言わないけど、適度な柔軟性は必要。怪我の予防にもなるし、私たちのように綺麗な体つきになる。」
才華は両手をあげてスタイルをアピール。それを見てルンカがピンと手を挙げる。
「はい!サイカねーちゃん。どれくらいできればいいんですか?」
「うーん。いい質問だねえ、ルンカ。まあまずはここからだねえ。」
才華は座位前屈の姿勢をとる。ちゃんとつま先に手が届いている。
「シクたちもここは目指そうか。」
マアカは開脚前屈。ちゃんと胸がつぶれるまで体は前に倒れている。俺の視線はマアカのつぶれた個所へ。これはシクたちもだ。
「頑張ります。」
「うん!」
「はい!
「おー!」
4人は早速前屈から始める。
「ゆっくり息を吐いて、反動つけない体を前に。無理はしないでね。はい、始め。」
シク、ルンカはつま先には届いている。ライジーは足首にもう少しってところだ。サウラは脚に顔をつけているので十分柔らかい。
この後、動的スチレッチ、体幹トレーニング等も行う。
一通りの訓練を終え、4人はお風呂で汗を流しにいった。キャッキャッした声が聞こえる。そして、先生3人も一緒に入るのはいつものことだが、今日は違う。今3人は今日行ったストレッチ内容の書かれたメモを凝視している。
「シクは肩回り。ルンカは背筋。ライジーは体の固さ。サウラは体幹。だね。」
「そうね、才華。じゃあっと、・・・・・・・こんな感じね。それじゃあ、私はシクの分。才華はルンカ。愛音はライジー、サウラの分をお願い」
マアカが本日行ったトレーニングメモから数個に線を引いてシクたちの名を書いていく。
「OK」
「ええ。」
3人が素早い手つきで、トレーニングのイラストを描いていく。3人の先生はシク達用の個別トレーニングメニューを作成しているのだ。イラストに注意書きを入れ、なおかつ可愛くしている。
「できたっと。それじゃあ、私たちもお風呂にいきますか。おッ風呂ー。」
午前中だけとはいえ、みっちりやっている。3人もしっかり汗で濡れているのだ。・・・・俺を見るなクロスティ。仕方ないだろ、この健康的なアレは。
「ザアイも入る?温泉のときみたいに。」
「・・・・・入るなら3人だけのとき。俺は昼食の準備しているよ。」
口を尖らすマアカ。最初から俺の答えも見える結果もわかってるだろ。3人と入るのは抵抗が減ったが、シクたちと入るつもりは全くない。入ったところで、変態扱いされて終わりだ。
「・・・・は!7人分の残り湯が狙いか!このヘンタイめ。」
にやつきならが俺を指さす才華。
「俺をどうしても変態扱いしたいのか、才華。」
「今更隠さなくてもいいじゃない。そんな在人を私が受け止めてあげる。さあ。おいで。」
今度は両手を広げる。
「さあ、おいで。じゃなくて、早く風呂いけ。しっし。」
「おうおう。てれちゃって。男らしく突っ込めよ。」
呆れる表情となる。
「愛音、マアカ連行してくれ。」
「才華、アウト!」
「それじゃあ、準備お願いね。」
「まだだ。うおおおおお」
マアカが手を引っ張り、愛音が背を押し才華が連れられて行く。数分後、今度はシクの叫びが聞こえたがスルー。・・・助けにいけない。
昼食後、まだ外は雨がふっていたので、室内で各々過ごしている。才華は
「ちょっと思いついたことをまとめてくる。」
と伊達メガネをつけて自室にひきこもった。なにを思いついたんだか。装置のことか、魔法のことか、同人誌のことか。はてはて。
シクとライジーはマアカから絵の描き方を教わっている。ライジーは先ほどのメニュー表の絵を見て感激していたからなあ。
ルンカは絵本を読んでおり、愛音もその隣で静かにこの世界の本を読んでいた。サウラはクロスティに抱き着いて寝ている。
俺はソファに座り、持ってきた漫画を読む。昼食後のせいか眠気が襲うので、読むというより眺めている感じだが。
「在人にいちゃんはなに見てるの~?」
俺の隣にチョコンとルンカが座って、漫画に興味津々。
「んー。超スパルタと死闘で男を磨く塾の本」
『魁!!男塾』って言っても通じない。うーん、内容をルンカは受けつけるか?
「塾・・・魔法塾みたいの?」
身近な塾はそうなるよな。ないと思うけど、スパルタで連想しているわけではないよな。
「んー。まーそうなるかな。めちゃくちゃきつい内容だけど。」
俺の膝に座り込んで、ルンカはパラパラとページを進める。おいおい。
「おっちゃん、自分の体ごと相手にナイフを刺してる。うわああ。なんで?なんで?」
「実力差がある相手になにがなんでも勝つため。」
「にゃああ。すっごーい。」
俺がこれを読んでいるのもこのシーンを見るため。3人の足元にも及ばず、できることもほとんどない俺。それでも一緒にクエストをこなす以上、なにかしなければならない。かといってそう簡単に実力が上がるわけではない。自分の成長性のなさも理解している。
なので、ルンカのいうおっちゃんの、捨て身の狂気を学ぶというか、意識しておくようにしている。盾になるそれぐらいしか俺にはできない。いざとなったら捨て身でなにかできるようにしたい。
・・・・できるかなあ。いやいやするんだ。
「ルンカー、いいところに座っているねえ。」
「にゃ、才華ねーちゃん。うにゃ。」
ソファの後ろから現れた才華がルンカの顎に手を添えた。
「私にも座らせろー。こちょこちょ。」
そのまま顎をなでだした。才華よ、ルンカが猫人だからかい。
「うひゃあ。あはは。」
「逃がすかあ。まてえ。」
ドンドン力が抜けて足元に滑り落ちてくルンカ。それを追って俺の肩におぶさってくる才華。おいおい。ルンカを追いかけ俺の目の前を才華の胸、へそと通っていく。この明るさは部屋に籠った反動か?
「きゃあああ。助けてえ。」
足元から立ち上がり、笑いながらシクたちのほうへルンカは走っていった。
「はい。そこまで。もう蟲にしか見えんぞ。」
俺の足元まで移動してきた才華の右足をつかんで引き留める。
「それは私の行動全てが蠱惑的ということかなあ?」
俺の膝に座る才華。そのまま俺の首に手を回してきた。『蟲』の字であることによく気付いたな。
「はいはい。そうです。そうです。」
「ぬふふ。」
ご満足のようである。
「で、まとまったのかい。」
「もちろん。」
「ちなみに内容は?」
「装置のこと。魔法のこと。あとはサークル『天地越え』の代表作『ハチクロ』こと『ハチミツとクロスボンバー』の第1章マグネットパワー編に続く第2章オプティカルファイバーパワー編の構想、新作『車田飛び下から見るか横から見るか』の構想。」
「ですか。よくまあ、そこまで思いつくことで。」
本当に感心するよ。
「忙しくなるよ~。」
作品を完成させるために帰界することになるのか?あれ夏なら期限やばくないか?などと考えていると
「あらら、見せてくれるじゃないの。」
マアカが右に座って、密着する。
「なら私達はここね。」
左には愛音が密着する。その横にシク。ライジー。
「じゃあ、私ここ。」
サウラがマアカの横に抱き着く。
「私も、私も!とう!」
「今度は私の上か。やるな、ルンカ!」
「ごふ。」
ルンカが才華に飛びつき、その勢いが俺を襲った。俺の嗚咽に女性陣は笑い、クロスティはあきれた目で俺を見ていた。俺はなにもしてないぞ、クロスティ。
のほほんとした1日であった。
A 御婦人スレイヤー
3年ほど前より人気となった泥沼ファンタジー小説作品。