ドラゴンのいる話し合い
表にでないはずの黒歴史設定
Q 才華の「ガオン!」って擬音が聞こえそうな魔法の名前は?
休憩などもいれて1時間後、旅館の一室に関係者一同が集合する。
ランタースさんの隣に、青い髪で2メートル近くの大男がこちらを睨んでいる。バストンの人間姿か。この状況のなにが気に入らないのかはわからないが、出された飲み物の氷をがりがり食べながら、悪態をついている。
「さて皆さま、そろったことで始めたいと思いますが、何分このような状況が初めてなので、実際まずはどこから話せばよいかのう。」
支配人のじいさんが話し合いを始めてくれるが、まあ、そうなるよな。すると、ランタースさんが静かに立ち上がり、じいさんのほうを向く。
「兄貴・・・」
「まずは、温泉を私物化していたことを謝罪させてもらいます。そのお詫びにできることはなんでもするつもりです。」
ランタースさんは丁寧に頭を下げた。
「頭を上げてくだされ。魔女の被害故と聞いておりますので。」
「そうだぜ、兄貴。頭を下げる必要なんて、いってええ。」
丁寧に応対するじいさん。それに対して、声を荒げるバストン。そのバストンの頭にランタースさんの拳骨が落ちる。
「バストン、お前の話を鵜呑みにした俺もうかつだったが、温泉を独占することで多くの人々に迷惑をかけたんだぞ。それで殺されることなく生きているだけでも幸運だと思え。」
「でも、兄貴」
「まあ、落ち着きなよ、お二方。話が進まないよ。これでも食べながらのんびりいこうよ。あ、このパイおいしい。ほらほら、2人も食べなよ。じいちゃん、これおいしいねえ。」
温泉饅頭ならぬ温泉パイを口に挟んだ才華。この表情は本当にうまそうにしている。支配人のじいさんはにこやかにしながらペコリとお辞儀する。うん。確かにおいしい。
「ふう。すまない。」
ランタースさんがふうっと息を吐いた後、椅子に座る。そして才華に言われたとおりランタースさんとバストンは温泉パイを口にくわえる。ランタースさんの表情は変わらないが、バストンのほうは目が感動でおおきく開いていた。
「そもそも、なんでこの温泉に来たんです?あ、本当においしいねえ。」
愛音も温泉パイをほおばりながら、バストンのほうを見る。ランタースさんに肘うちされたため、食べるのをやめ、不満そうな顔でバストンが口を開く。この様子からバストンがこの温泉へ来ることを選んだのか。
「ここの温泉が火傷に効くって聞いたからだ。」
「聞いたって魔物から?確かに肌の潤い以外に火傷に推奨って書いてあったけど。ああ。たのしみねえ、ザアイ。」
心が温泉にいきそうだけど、まだ早いよ、マアカ。気持ちはわかるけど。あと脱衣場や受付の案内にも火傷に効くってのは書いてあった。
「違う!他の街で聞いたんだ!」
「それって、その街にドラゴンの姿で火を噴きながら脅して聞いたってこと?うわっ、ひくわあ。」
・・・・・才華はバストンをいじりだした。シリアスだった戦闘の反動?才華の言葉で街中で暴れるバストンの姿が脳内に浮かぶ。
「なんでそうなるんだ。この姿になってだよ。」
「その姿で小さい女の子を脅しったおどしったてこと?うわあ、ほんとひくわあ。ねえ、愛音、マアカ。」
顔がマジでひいてる才華。小さい女の子はどこから出てきのか知らんが、まあやりそうなキャラには見える。
「ひどいわねえ。」
「さいてー」
同意を求める才華にパイを銜えながら愛音、マアカは小さく首を縦にふる。まあ、冷やかしなんだろうけど。
「どこから、ガキが出てくるんだ!」
「いや、その見た目と性格から、よくあるパターンだろ。」
「パターンってなんだあ。」
「あ、知らない?じゃあ、この話はなかったことで、ごめんね。てへ。」
才華のてへぺろ。あらら、かわいいこって。ただそれがバストンに通じるのか?
「なんだ、その顔、謝るつもりないだろ、この魔女!お前は黙ってろ!」
案の定通じなかった。
「ひっどーい。とまあ、こんなかっるい感じでバストンをからかいながら話を進めようってこと。OK?ランタースさんに、じいちゃん。」
ヘラっとしている才華。2人は返事に困っている。
「で、バストン君が温泉の情報を集めたってことは、そのときにはもう魔女に襲われて、ランタースさんは負傷していたってことでいいのかしら?」
愛音の君づけにピクっとバストンは反応したが、ランタースさんの肘うちで不満をこらえる。君づけですか。
「そもそも、あの魔女にはどういった経緯で襲われたの?それにランタースさんが一方的にやられるのもなんか腑に落ちないけど。」
確かにマアカの言うとおりかも。バストンとランタースさんの相手にしたローネは全く無傷でいれるものか?
「この火傷のほとんどは別のものによる炎だ。」
バストンさんは痕の残った頬を触る。
愛音の治療で深刻な状況はもうないそうだが、まだまだ火傷跡は痛々しく残っている。魔法ならその跡をなくせるものだと思ったが、負傷した状態が長いと跡は残るという。体があるものだと認識するらしい。
それだとシクにも負傷の跡が残るのではと思ったが、シクの場合は打撲だったこと、種族的に治癒力が高いこと。それと若さ故、のこらず済んでいる。だそうだ。
「今から50日程前になるが、俺とバストンが空を飛んでいると、地上より速くて強大かつ高密度に圧縮された火球がバストンに向かって飛んできた。ブレスが間に合わないから俺が体当たりでバストンを吹き飛ばして、火球に燃やされた。」
50日ほど前ってなると、俺達が蜘蛛女と戦った時期か。そして、ランタースさんは見た目や雰囲気だけでなく、行動も兄貴だ。
「俺が火球に早く気付いていれば兄貴が怪我をすることがなかった。くそっ。」
悔やみきれない顔をするバストン。
「そのことは気にするな。気絶した俺をお前が運んでくれたおかげで、今まで生きている。」
「俺は兄貴を抱えて人のよらなそうな山頂へ移動。魔法の追撃はなかったから逃げれたけど、魔法を撃ってきた犯人もわからずじまい。」
追撃はない?これまた不思議で。ドラゴン2頭を狙ったわけではないのか?
「俺は山頂で40日ほど動けずにいた。俺もバストンも治療の魔法が使えないからな。」
じゃあ、自然治癒しか頼りになるものがないのか。40日ほどの自然治癒で動けるようになるのはドラゴンだからなのか?
「その間に俺は付近の村や町でここの話を聞いた。それで、兄貴がなんとか動けるようなった段階でここへ向かって移動を始めた。」
「で5日前。移動中に空からあの魔女の炎が俺達を襲ってきた。」
「おいしそうっていうなり襲ってきやがって。ふざけた奴だった。」
怒りまで思い出してきたバストン。才華をじっと睨む。
「・・・・・・脱線させるけど、私を見るなり吠えたのは私と魔女を間違えたから?それとも魔女って理由だけで?赤い髪だったから?顔似てた?」
あの魔女と間違えたから吠えたのか。それとも魔女だから吠えたのか。どっちなんだ?
「赤い髪だからあの魔女だと思った。顔はよく見てない。」
顔が似ていると答えていたら、才華は沸騰していただろう。
「うーん。ああ、話を戻して」
才華は複雑そうにしている。赤い髪だけでそう思われるのは心外らしい。一目で他とは区別つく見た目だと思っているのだろ。
「その場はブレスで吹き飛ばしたけど、そこで俺の体は限界。」
吹き飛ばした。・・・・・あの竜巻は防ぐか避けるしかない。・・・・・防壁でダメージは防いだけど、押し飛ばされたってことかな?
「ギリギリの力で人型になってもらった兄貴を背負って俺は温泉にきて、兄貴を温泉に入れて、俺は兄貴を休めるように人を追い払っていた。」
「・・・なんで追い払うだけなの?」
「理由は、俺が人と共存していたる国の出身だから。バストンには俺に付いてくる以上、人を無意味に傷つけることは許さないと厳命している。まあ、自己防衛はするが。」
なーる。人といるのが普通だから、追い払うだけだったのか。そして、火の粉を払う行為の結果がローネの至った結果。
「兄貴にそう言われていたから、追い払うだけにしていた。」
腕を組んでふんぞりがえるバストン。
「威張るな!迷惑もかけるなとも言っただろうが。」
拳骨が頭上に落ち、後ろへ倒れこむバストン。ランタースさんの意図はバストンには正確には伝わっていないようだ。というよりは、ランラースさんの話からして、こういう考えを今まで持っていなかたから、まだ理解しきれていないのかな。
「ま、魔女以外に重傷者や死者がいないだけ、よかったよ。万が一出てたら、討伐メインになってかもしれないし、この話し合いはもっともっと真面目で重いものになってたんだから。」
才華は軽く言うが、実際はそんな軽く言えるものではない。こういう話し合いにもっていくことすら、できない可能性もあっただろう。
「とにかく、このバカは俺のために今回の騒動を起こしてしまったんだ。本当に申し訳ない。」
テーブルにバストンの頭を押し付けて、頭を下げるランタースさん。
「お話をもどしましょうか。おじいさん。旅館としてはどうしてほしいんです?」
「こちらは・・・・・・。」
バストンが悪意だけでこのような騒動を起こしたわけではないと分かった。だがそれと旅館に対する賠償は別。
「寛大な処分に感謝します。」
「こちらこそ、よろしくお願いしますじゃ。」
支配人とランタースさんたちの話し合いは無事終了した。内容としては、ランタースさんとバストンはこの旅館で住み込みで働くこととなった。主な内容は旅館のボディガード兼客の移動手段。ランタースさんは治療の一環として、ヒト型での温泉を入る許可も得ている。
「お嬢さん方、本当に助かりましたぞ。今夜はお礼として、最高位のもてなしと温泉はお嬢さんの貸し切りにしておきますので。」
支配人のじいさんはこちらに頭を下げる。すでに一番良い部屋を案内されている状況でこのお礼。頑張ったかいがあったというものだ。
「私たちは有り難いですけど、営業再開はいいんですか?」
「今日は再開に向けて準備。明日から本格的に再開するので大丈夫、大丈夫。」
「それでは、お言葉に甘えさせてもらいます。」
愛音が丁寧に頭をさげた。
「いえいえ。それとランタース殿とバストン殿も今日は休んでくだされ。」
「いや、そういうわけには。っつーーー。」
立ち上がったランタースさんは一瞬悶絶した。まあ、深刻な部分の治療はしたが、まだまだ、完治には時間がかかる。
「魔女の襲われたんじゃろ。今日は体力の回復に努めなされ。」
「っつ。すまない。」
申し訳なさそうにするランタースさん。
「本当は安静にしてたほうがいいんだけどね。」
愛音がそっと耳打ちしてくれた。・・・・あの怪我、俺なら動けないんだろうな。
「これで話し合いは終了ですかな?」
「あ。じいちゃん。温泉との件は別で、ランタースさん達に聞きたいことがある。」
「そうね。確認しといたほうがいいわね。」
「だね。」
少し考える様子を見せる才華。真顔になってうなずく愛音。同じくウンウンうなずくマアカ。
「それはなんなの?」
俺は首をかしげる。
「ザアイは気にならない?ランタースさんたちがローネの前に火球に襲われたこと。攻撃は火球が1撃のみ。追撃することもない。ドラゴンに戦いを挑む力をもった謎の存在。」
「そういわれると。うーん。ローネってわけじゃあないの?」
「ローネが最初に襲ってきたときの口ぶりからして、それはないな。」
俺の考えにランタースさんは首を横にふる。ふうん、ですか。
「火球を撃ってきた人の姿は見てないんですか?」
「俺達はそのとき、雲よりもっと高いところを飛んでいたんだ。撃った奴の姿は見ていない。逆に向こうからも普通なら見えないはずだ。」
愛音の質問にバストンは鼻息を荒くして答えた。単純な視力ではないなにかで2人を発見したってことか。才華たちの感知範囲に雲の上はあるのだろうか?その答えは才華が首を横にふることから不可なのだろう。
「ちなみに場所や時間帯は?」
「時間は昼を過ぎてから、場所はえーっと。そうだ。ミタキの街の東側!次の日に上空から見たんだが、東側の森に木や地面が溶けた跡があった。」
「ん?」
「でも2つあったんだよな。」
腕を組んで考えるバストン。
「あのーもう1つ確認したいんだけど、火球ってどれくらいの大きさなんで?」
「俺達2人を余裕で飲み込むほどでかい。上空から見ても森の跡がわかるからなあ。」
昼すぎ。ミタキの街。東の森に溶解した2つの跡。およそ50日前。速くて強大かつ高密度に圧縮された火球。
これらの言葉から連想されるイメージ。俺の目線は自然とそっちへ
当の本人は目を丸くして硬直している。これは本人も自覚しているな。
「ランタースさん。バストン。」
「ん?なんだ、改まって?」
「その火球を撃ったの私だわ。」
才華は再度てへぺろ。ドラゴンを襲撃した火球を放った犯人は才華。犯人才華説は当たっていたことになる。
A
才華 「攻撃動作は第4部、攻撃内容は第3部。成長性Aのその魔法の名は『空間削除』と書いて『ヴァニジムラ』と読む。」
在人「言いにくっ!」