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のぞき

 クエストを終え、俺は自宅の風呂につかる。


「うーん。」


 風呂の大きさゆえ伸ばせる体は休まるが、脳内では今日のできごとを振り返っている。


 クエストの件。マアカの戦闘能力。マアカとの関係。 


 自然とマアカの活躍が脳内でリピートされる。


 ゴーレムを滅殺するマアカ。ゴーレムを踏み女王の笑みを浮かべるマアカ。落下時の冷静なマアカ。太ももにほおずりを命じるマアカ。俺に持ち運ばれるマアカ。お姫様だっこされるマアカ。泣き顔のマアカ。


 ん?なんか変なところがある気もするが、風呂のせいか考えがまとまらない。


 黒髪幼馴染に赤髪幼馴染。そこに金髪外国人。釣り合わないと思う気持ちはのこるが、3人のいうとおり深く考えない。


 うん。プラス思考。プラス思考。


 胸までのびた金髪ストレート。プルンした唇。勝気な灰眼。大きい山、むちむちした太もも。

 胸までのびた金髪ストレート。プルンした唇。勝気な灰眼。大きい山、むちむちした太もも。

 胸までのびた金髪ストレート。プルンした唇。勝気な灰眼。大きい山、むちむちした太もも。

 胸までのびた金髪ストレート。プルンした唇。勝気な灰眼。大きい山、むちむちした太もも。


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


 ここは風呂場。使うのは俺、才華、愛音、マアカ、シクの5人。使用する際は女性からの順番制で俺は最後。まぁ女4人は一緒に入るときがあるし、それぐらい余裕の広さがある。


 脱衣場に鍵があることから、俺が1人で落ち着ける数少ない場所でもある。


 そう俺1人になれる場所。だから俺は自然と風呂は長めになる、むしろ長めにしたいので順番を最後にしてもらっている。だから、仮に浴槽につかってなくても、誰にも気にされない。見られないから安全。


 ・・・・・・・・・・・・これは・・・・うん。


 行動を決意したところで気付く。気づいてしまった。




 今日、才華と愛音が新しい魔法を使った。

 透視の魔法。透視つまり透けて見える。俺も使えれば・・・不純な考えを持つのはだれでもありえる。

 透視能力。スケベな大人、誰もがあこがれ、使えれば使ってしまうであろう能力。そう覗き。


 使い手は欲には忠実な2人。

 

 シクに会う前、俺が入ろうとすると、才華も千歳も偶然、狙ってとわず「私も入る。」「体洗ってあげる。」などしつこかった。俺は毎日、無視し脱衣場入口の鍵を閉めて1人で入っていた。中に隠れていないか調べもした。

 

 だがシクが来てからはピタッとその行動はやんだ。俺は今までシクがいるからやめたんだろうと思っていた。

 

 また、透視魔法を習得したことの報告がなかったことも不自然だった。才華も愛音も基本的な魔法を覚えたら俺に教える手筈(奥の手や開発中のは別だけど)になっている。クエストの際、俺も知っていたほうがいいだろうと思ったからだ。だから、透視の魔法だけ知らせない理由がない。

 

 そう考えると、風呂上がりの俺が偶然、才華、愛音に会ったとき、顔がやたらニヤついていたことが何回かあった。

 

 物的証拠はないけど、疑念は確信に変わった。


 俺は表情を変えず、浴槽から2階の才華の部屋の方を見つめる。そして俺はいつもどおり、風呂を満喫し脱衣場へ戻っていた。


 才華と愛音、周囲からはぶっ飛んだ行動もするが、基本的には常識的で、利発的な人物と思われている。

 が、俺から見れば、あの2人は欲望に忠実で、欲に従って暴走するときがある。そして、2人が欲まみれに行動した際、いつもの優秀さはなくなりドポンコツとなる。実際、普段の2人に俺は太刀打ちできないが、ポンコツ時の2人は俺に反論すらできないでいることが多々あった。


 才華のことだ、透視の魔法を覚えたことで、俺の入浴中の姿を見ているに決まっている。自分で言って気持ち悪いが。

 俺が知れば家での魔法禁止、脱衣場、浴室に対策道具を用意する。それなら秘密にしとけとガキの発想に至っているはず。今までよく隠していたな。シクがきたタイミングも味方したのか。運Sランクだけはあるか。


 そして、俺の風呂での行為に・・・・羞恥心で言葉が出なくなる。のぞかれたことに怒りも沸いてくる。


 

 俺は脱衣場を出て、まっすぐ才華の部屋へ行く。そして、ドアをノックし、


「才華、ちょっと入っていいかい?」


 いたって平常に聞く。


「ちょっ、ちょっと、待って。今、鍵開けるから。」


 驚きのあった返事だ。俺がまっすぐ来ると思ってもいなかったのだろう。


 ドアが開き、嬉しそうな顔の才華。


「なに。なに。何の用?」


「部屋はいるよ。」


 俺は無視し、部屋へ入る。才華はドアを閉め俺に続く。


「なに、風呂上がりすぐに、夜這いかい。まだシク起きてるよ。早くないかい。私はいいけど。さぁ来い。すぐ来い。貫いてみろ。愛してやるぜ。」


 才華は勝手に興奮してきたみたいだ。だが俺は冷静に質問する。


「よく風呂上りってわかったね。まるで見てたみたいに。」


 興奮から動揺した顔へ変わる才華。


「えーと、ほら。あれだよ、風呂場にいく姿を見たの。あと髪まだ濡れてるよ。」


 動揺はあるが、まぁ筋の通ってはいる回答だ。髪をざっとした乾かしていないからな。


「唐突だけど、なんで透視魔法のこと報告なかったの?魔法覚えたら報告するってなってたよね。」


「えーとね、うん。正直、役に立つ気がしなくて。だから言わなかった。ごめんね。」


 てへぺろで謝る才華。俺の表情は変わらない。


「ふーん。でも今日役立ったよね。まぁそれはいいや。も一つ聞くけど、透視魔法、風呂場、で思いつくことってある?」


「うーんなんだろう、えーと、うーん、わかんないなー。」


 才華、首をかしげながらも、とぼけた表情で答える。


「そうか、俺はのぞきだね。俺も使えなたらなぁと思ってさ。つい風呂入ったとき才華の部屋っていうか、才華のほうずっと見てたんだよね。才華と目があった気もするし。」


「そうなの、だから、目があったんだ。私すごっく興奮してさ、あっ。」


 才華はし、しまったと顔をする。はい、ボロがでました。間髪いれずここに来たから、欲まみれのポンコツモードの影響がまだ残っていた。俺の表情に怒りが出る。


「やっぱり、覗いてたと。俺の醜い体は満喫できたかい。一緒に生活してる人に覗かれているとは思いもしなかったよ。」


「あの、その、えーと、それは、その。今日だけよ、そう、今日は透視魔法で活躍したから、自分へのご褒美よ。」


 目が泳いでる才華、まだ誤魔化そうとしているのあきらかだった。


「俺たち15年以上の付き合いだよ。こういうときの嘘がばれないとでも?」


「いや、それはその。」


「まっ、とりあえず、家の中で魔法は禁止、風呂場、俺の部屋に対策道具を用意するから。」


 俺は才華に釘さす。徹底的に釘さす。


「そ、そんなー。私たちの寝る前の楽しみがー。」


 泣きそうな才華は口を滑らす。私たち。私たちと。


「わ た し た ち ねー。うん。なるほど。」


 才華はさらに顔が崩れる。俺はそれを無視し、隣の部屋、愛音の部屋をにらむ。ドガと落ちる音とともに、「きゃ」と可愛らしい声が聞こえた。愛音も透視魔法使って覗いていた。やっぱりか。俺は愛音の部屋へ移動しノックする。


「ちょっと部屋入っていいかい?」


「うーん。もう眠いから明日にしてもらっていい?」


 いつもなら断らず、すぐドアを開けるくせに、この返事。才華を見捨てて、自分だけ助かろうとしているな。俺は一考し告げる。


「・・・気持ちがおさまらないんだよね。愛音の全てを見たい気持ちが、絡みたい気持ちが。」


「ほんと? 入って、入って。今日はここで、ね?」


 ポンコツモードの愛音はあっさりドアを開ける。俺はドアを掴み、


「嘘だ。それより隠していることあるよね。」


 鬼の形相でにらむ。気圧された愛音はドアから下がったので俺は室内に入る。


「なっなんのこと?かっ顔が怖いよ。在人。それはそれでカッコいいけど。」


 あくまでシラを切る愛音。目が泳いでいる。


「才華にも言ったけど、15年以上の付き合いだから嘘はわかるよ。」


「15年以上かー。長い付き合いよねー。日々在人が好きになるわ。ね。」


 ウィンクで誤魔化しに入る愛音。俺は結論を言い渡す。


「そうかい。で結論は、家で魔法禁止ね。風呂場と俺の部屋には対策道具を用意するから。」


「えー。許してー。夜の楽しみがー。」


 同じように崩れ落ちる愛音。そこへ才華も入ってくる。


「ちょとまってよ。在人、私たちだって人間よ。気分が高まったり、ムラムラするときあるわよ。」


「そうね。目の保養がなくなるのはつらいわ。」


 協力して反論する2人。


「へー。気分が高まったりする気持ちは理解するよ。俺も人間だからね。ただ、自分たちのためなら、同居人にプライバシーは関係ないと。」


 俺は冷ややかに2人を見る。


「あのね。俺は2人のこと好きだから、基本的には味方するよ。だけど、盲目的に信じることもしないし、自分の考えを放棄する気はないよ。間違っていることやおかしいことはちゃんと言うよ。でこの件は反省してろよ。明日、ガンソドでの道具を買ってくるから。」


 2人の顔は絶望していた。知るか。そこへ、シクとマアカが部屋に入ってくる。


「3人ともどうしたんです?2人になにが?」


「どうしたの?ザアイ?珍しく2人に怒ってるの。」


 2人がしゃがみ込み、俺が見下ろしている状況に驚きがあるようだ。まぁ珍しいか。


「覗き犯をこらしめているところ。」


「のぞき?」


「・・・・・・・ああ。そういうこと。へえ。そうなの。」


 俺の回答に、理解が追い付かないシクと理解したマアカ。・・・・・マアカは透視の魔法を使えるのか?


「ちなみに確認するけど、マアカは透視の魔法使える?」


「ううん。まだ。これは決して嘘じゃないわ。ただ、使えたら見たいという気持ちはある。これも嘘じゃない。」


 状況から素直に内面を話すマアカ。2人の表情から真実と判断する。


「さてと。2人は反省してね。」


「ちょっと待ってよー。在人だって、透視できるなら私たちのこの体を見たいと思うだろ。一方的に断罪かよ。ひどいぞ。」


 才華は悪あがきで反論してきた。


「・・・・・そうだね。俺も男だからそういう思いは否定しない。まあ、見たいと思う女性は限られるけど。」


「なら。この件はスパッとわす」


 まだ俺の言葉は終わってないよ。


「でも、理性は正常に働くから実行はしない。あとのぞくくらいなら、正面から触れることのできる距離で見せてもらう。見たいと思う相手は相思相愛だと思っているからね。ふう。」


「あう。」


「はあ。」


「オウ。」


 俺の勢いと思ったままの言葉に顔を赤くする才華、愛音、マアカ。シクは思考停止している。


「マアカ。」


「は、はい。」


 我に返ったマアカ。


「これから2人で出かけ・・・・朝までデートに行こうか。」


「え・・・・・・あ、はい。」


 一瞬俺の言葉を理解できないでいたマアカだが、理解と同時にまた驚いている。シクは思考停止している。


「「私も行く。」」


 デート発言に愛音と才華は、今までの出来事が吹っ飛んだのか、それとも開き直ったのか、顔を上げてきた。その反応に俺はにっこり笑う。シクは思考停止している。マアカは頬を赤らめている。


「俺とマアカの2人でいくから。2人は覗きの件を反省してくれよ。」


「「あ、はい。」」


「シクももう寝なよ。」


「あ、はい。」


 ようやくシクはうなずく。


「シク~。今日はシクが慰めて~。」


 この家の可愛らしさ担当に縋る才華。


「私も~。」


 愛音もだ。


「え、あ、その」


 困ったシクは俺に助けを求める表情を向ける。


「・・・・・・2人は反省してね。俺はそう言った。だから、あやしてもらうのでも、慰めてもらうのも違うからね。シクを困らせるならシクも連れていくよ。」


「「ええ。」」


 追い打ちをかける。


「「シク~。」」


「え。えーと、今日はクロスティと寝るんで無理でしゅ。おやすみなさい」


 シクは逃げ出した。確かに今日はそうするつもりでクロスティを風呂場に連れて行ってたな。


「おやすみ~。じゃあ、私も着替えてくるね。」


 シクを見送ったザアイも自室へ。


「じゃあ、着替えて行きますかー。2人もおやすみ~」


 俺は2人に手を振って部屋を出る。あとは反省するか寝るかしてくれ。




 俺とマアカは夜のミタキの街を歩く。この時間に出歩くのは初めてかも。夜空や行き交う人を見てるうちに少しづつ、冷静になっていく。


「マアカ。まずは謝るよ。」


「なにが?」


「うーん。このデートなんだけどさ。あの2人への罰というか、反省を促すためにすることにした。冷静に考えるとマアカの気持ち全く考えていなかった。すっごく申し訳ない気持ちがある。」


 あのときは静かな怒りで全身がいっぱいだった。


「ふうん。それは酷い。」


「だから、謝る。ごめん。」


 誠心誠意頭を下げる。本当にごめん。


「謝るだけ?」


「発端はあれだけど、ここからは真面目?真剣?にマアカを想ってデートする。1対1を楽しんで喜んで感じてもらう。」


 1対1ってなかなかないよ。


「ふうん。1対1ね。よし許す。私を満足させてね」


 にんまりとするマアカ。許してくれるようだ。


「心の広さに感謝しつつ、努力いたします。ではまず、一杯いきますか。」


「ではエスコートよろしく。」


 腕を組んできたマアカとゆったりターロホさんのお店へ。


 ターロホさんのところでマアカを紹介しつつ、2人でお酒をたしなむ。愛音と才華がいないことをターロホさんに追及されたので、ここまでの経緯は説明した。


「なら、この後はお楽しみなのね。」


 とターロホさんはニヤつくので


「はい。楽しみます。」


と真顔で言い返しておく。俺の周りの年上女性陣はこんな感じばっかだな。それともこれが普通か?


 ターロホさんの店を後にした後、ミタキの夜の歓楽街を歩く。酔った登録者や男女が行きかっている。そして・・・・・・・・。


 翌日、親密になったマアカと帰宅。自宅に帰るとマアカは朝風呂に行き、俺はまず自室へ入る。そこで俺は絶句する。


「っ・・・・・・・・・・・。」


 部屋のベッドで寝てたのは才華と愛音。うーん。服も下着も捨てられている。なにをしていた?反省はしたのか?反省の場所までは指定してないから、突っ込めないけど。とりあえず、起こすか。


「おーい。おきろー。朝だぜ。」


「ううん。うーん。あ、おはよう。」


 まずは愛音が反応する。起きるたのはいいけど起きるな。


「いいよ。そのままで。」


 いつものパターンでシクが通りそうだ。


「ん。才華。朝だよ。」


「んー。うん。はよー。」


 目がとろんとしている才華。


「おはよう。」


 俺のあいさつでだんだんと才華の意識が覚醒していくのがわかる。


「夕べはお楽しみでしたね。」


 にやりと笑みを浮かべる才華。俺の周囲はこれが普通なのか。


「・・・・・・・濃密で楽しかったです。」


 とりあえず言い返しておく。


「ほっほおう。」


「あら、まあ。」


 2人は布団で隠しながら上半身を起こす。


「俺のことより、2人は反省したのかよ。」


「おいおいおいおいおい。その眼は疑っているな。ちゃんと反省して、落ち込んだ。落ち込んだから、在人を全身で、そう全身で感じて気持ちを切り替えていた。」


 才華は布団に顔をこすりつけている。おいおいおいおい。これを見て信じれる人はいるのだろうか。


「反省はその都度するものであって、し続けるものではないでしょ。切り替えは大事よね。前を向くのは大事よね。それに在人は、在人が許すまで反省し続けろって言う、器の小さい男ではないでしょ。」


 満面の笑みを向けてくる愛音。言ってることを否定できないのでなにも言えない。


「はいはい。わかりました。反省も了解。ここにいる理由も了解。」


 愛音のいうとおり切り替えることにした。


「マアカは?」


「お風呂。」


 愛音の質問に答える。


「私も入ろうっと。在人、簡単でいいから朝ごはん用意してもらっていい?」


 愛音は布団をはいで立ち上がったので慌てて反対を向く。


「私も私も。お楽しみの件を聞き込みにいこうっと。」


「最低限下着は着てけよ。シクの教育によくないから。」


「・・・・・・・・・あいよ。」


 俺の真横にきたところで才華は下がっていた。






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