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なんでわかる?

「明後日になったら、私たちは帰るから。」


「あ、はい。・・・・・・・え?」


 才華の言葉にシクは固まる。愛音は気にせずに食事を続け、俺は3人の顔を見回したあと、時間停止中のシクを現実へ引き戻す。


「おーい。シク。おーい。」


「・・・・・・・あ、すいません。・・・・・・お別れですね。」


 シクの両目に涙が浮かんでくるが、泣くまいと我慢している。2人はなにも言わずにその顔を見つめている。なんていえばいいのか悩んでいるのか、誰もが思うだろうが違う。


 シクが俯いたところで、2人の口が妖しく笑っていた。2人はシクのこの姿が見たかったのだ。泣くのを我慢する可愛らしい姿を見たかったのだ。恐ろしい。これはドSの分類でいいんだろうか?


 満足したところで、才華は優しい微笑みを浮かべる。


「ああ。違うよ。違うよ。1週間くらいだから。」


「そうなんですか。」


 顔を上げるシクの顔はほっとしている。


「3人での用事があるから、一旦帰るわけ。だから安心してね。」


 愛音はシクの頭を優しく撫でる。恥ずかしそうにも嬉しそうにも見えるシクの表情。そして、今度は何かに気づく表情へ変わる。


「あの3人でなにをしにいくんですか?」


「ん。在人の両親のお墓参り。あとちょっとした雑用を片付けてくる。」


「え・・・・。」


 才華の言葉にシクは俺のほうを見る。


「ま、そういうこと。だから悪いんだけど、ちょっと戻るから。才華ふうに言うなら帰界する。」


 俺は特に気にしないで話す。親が亡くなって10年は経っているのである意味慣れている。こんなふうに思うのは両親には悪いか?


「私達のいない間なんだけど、食事や洗濯を登録者に依頼してるから、そこは安心してね。」


「朝一にその人が来る手筈になっているから。」


「あ、はい。」


 2人の説明にシクはやや不安そうにして頷く。どんな人物なのか不安なんだろう。才華が依頼した登録者は新人のアマ。家事などはできるのも確認済みで、あの性格なら安心はできる。


「ゴブリンプラスα退治でけっこうお金もあるから、自分で思うまま生活して頂戴。おもいっきり羽目をはずしてもいいよ。」


 殺し屋4人のうちテリカとネクロマンサーは高額手配の殺し屋であった。2人ともアラクネルのときに得たボーナスより高い金額・・・・よく生き残れたな。と今でも思う。


「ルンカちゃんたちやイナルタさんを呼んで、遊んでもいいし、お泊り会でもいいし、外食にでてもいいからね。」


「わかりました。」


 シクは色々考えらを巡らせて明るい表情となる。


 出発日当日。シクとアマは初対面こそ緊張しあっていたが、


「「姉妹みたいだから大丈夫ね」」


 才華と愛音の根拠のない自信と意味不明の発言で顔を見合わし、そこから仲良く笑いあった。2人のいう通り打ち解けあったようだ。


「じゃあ、行ってくるから、アマ。シクのことよろしくね。」


「あ、はい。お気をつけて。」


 頷くアマ。


「クロスティ、エルージュも留守番よろしくね。」


「クーン。」


「クエエエエエ。」


 クロスティの頭撫でる愛音。2匹とも頷いている。


「「じゃあ、いってきまーす。」」


 2人の笑顔にシクも手を振って答える。


「いってらしゃーい。」




 東の森の、三つ目犬や火吹き鳥とすっかり仲良くなっている2人。そのせいか、この世界に当時とは異なり、森からは不気味さを感じない。


 才華がリモコンを操作する。


「これって、こっちでドアを呼んでいるの?」


「いや、合図を送ってるだけ、操作自体は向こうの本体で。」


「それって向こうに操作する人がいなかったら、ドアが来ないってこと?」


「まあ。そうなるね。」


 あっさり認める才華。これってこの森に何時間も待たないといけない場合があるよな。今はともかく来た当初はあぶなかったんじゃねえ?


「なんで、そんなふうにしたわけ。」


「・・・・・・万が一、このリモコンを悪意のある第三者が手に入れた。その者が魔法なりでこの使い方を知った。または適当に操作した結果、このドアを開けた。はい。どうなる。」


「・・・・・巡り巡って良子さんの前に3つの死体。」


 首の切断された俺。全身から血を吹き出している才華。心臓部に穴が空いている愛音。手の血を拭いてる良子さん。ひい。ありえるイメージで怖い。


「でしょ。」


「そうなるわね。」


 俺の意見に愛音も納得した。


「まあ、良子のスマホには連絡行くようになってるから、そこは安心してよ。」


 用意周到なこって。こういうところは素直に尊敬できる。


「さす・・・・・・・・」


「どったの在人。」


「俺の件とかその赤い髪についてどう説明する。」


 神様認定での死亡事実のある俺。2人や魔女のおかげで、無事なんだけど死んではいる。


「男塾の辞書に敗北はないって言うように、私の辞書にあれは死亡とは言わない、重症とは言わない。ゆえに言う必要はない。帰る必要もない。私の件はありのままで。シクのことを言えば納得するよ、良子は。」


 胸を張って答える才華。前半はともかく、後半はそうかな。


「それよりも気になるのは私の件ね。」


「そうだね。」


 愛音と才華がなにかを気にしていた。なんだ?


「なに?なんかあった?」


 俺にはわからない2人だけの共通事項があるみたいだ。愛音はちょっとだけ困った顔をする。言えない、言いずらいのか。


「・・・・・あれ?気付かない?愛音のここのこと。」


 才華が指さす。今は愛音の腕に隠れている大きな山の部分を。言いにくいか。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」


「お、気付いているな。その顔は。」


 はい。才華のいう通りだよ。なんかそんな気もしてました。あの日そう思いました。才華とサイズ差を目と肌で実感しました。


「在人で気づくなら、姉さんズも間違いなく気づくと・・・・・。」


 良子さん、沙緒里さん、千佳さんの3人ならそうか。


「どう説明したらいいか。悩みどころ」


 2人が悩んでいる。


「才華もだったら、異世界豊胸論が成立したのに。」


「そうねえ。」


 愛音も同意してくれた。


 「「ねえ。」」


 2人で目を合わせて頷きあう。はい、蹴とばされました。危なく転移してきたドアに挟まれるところでした。




「お帰りなさいませ。お嬢様。っつ。」


 ドアを開けると良子さんがお嬢様才華にお辞儀。頭を上げてる途中に顔がひきつく。


「たっだいま。」


「戻りました。」


「お疲れ様です。良子さん。」


 才華は元気に手をあげ、俺と愛音は頭を下げる。1か月近く会ってなかったことになるのか、夢にもだけど。そして目にはつくよな。


「えーっと聞きたいことは色々とあるけど、まず今回のご用件は?」


 良子さんは頭が痛そうだ。


「言わなくてもわかってるでしょ。良子なら。」


 才華の言葉に力を抜いた顔となる良子さん。


「異世界で浮かれて、忘れているもんだと。」


 目線は赤い髪。ああ。浮かれたとも思うか。


「浮かれてはいるけど、流石に忘れるわけにはいかないよ。」


「そ。なら安心です。」


「そ。安心せい。」


 主従関係から友人関係になる2人。


「安心させるなら、愛音・・・・どうかした?」


 良子さんに名前を呼ばれた愛音は、寂しそうな顔をする。なんだ?


「あ。いえ。なんでもないです。良子さんを見て戻ってきたって思ったんで。」


「そう。タイミングよく千佳も来てるから、会いにいきましょう。そしてその赤い毛について教えて頂戴。」


「姉さんが?」


「ええ。今年は昨日から1週間が取れたってね。昨日、才馬様ともう行ってるわ。で、3人が忘れてなければ今日には戻ってくるだろうって自宅の方で待ってる。」


 千佳さんもこの装置のことを知っているのか。まあ。才馬さんが把握しているならそうなるか。千佳さんなら私も行くって言いそうだけど。


「おしい。」


 全員が部屋の入口のほうへ振り替える。そこには千佳さんが息子の才継さいつぐ君を抱いて立っていた。


「姉さん。」


「千佳義姉」


「千佳さん。」


「千佳。」


「はい。千佳だよ~。才継です~。」


 才継君の手を振る千佳さん。


「顔合わすのは年末以来かな?3人ともおかわ・・・・・・た?」


 千佳さんは俺達の顔をじーっと見回す。


「こ・・・・これは!沙緒里にも連絡しないと、良子!」


「・・・・・そうね。」


 良子さんも深く頷いている。もう愛音の件に気づいたのか。・・・・・普通は赤い髪からじゃないかな。


「うんうん。私の義弟誕生もカウントダウン入りかな。」


「天城家創設以来の暴れ馬にも・・・・うっ」


 俺をみてニヤニヤする千佳さん。長年の苦労に顔を抑える良子さん。千佳さんが良子さんの肩を寄せる。才華はVサインを出し、愛音は恥ずかしそうに顔に手を当てている。


・・・・・・・・・・・ってこっちのほう?なんでわかった。


「・・・だから。2人の差は広がったのかしら。」


「・・・・・・っつ。そうね。千佳。くく。同じ相手、同じ状況なのに。」


 あ、そっちも気づいてる。笑いを堪えきれない良子さん。差が広がったのは事実故、反論できない才華。まあ日付云々はスルー。


 いやそれよりも、これやばい?俺やばい?それに気づかれるとは思ってなかった。


「あ。あの~。」


「お、私たちの予想の斜め上をいった張本人。私の妹2人との関係に今更、ビビってるのかい?」


 今度は俺のほうに肩を組んできた千佳さん。


「あ、いえ。その」


「で、まずどっちから手を・・・・・」


「えーっと。そのどっちといいますと。」


 言えと。そこまで言えと。


「私で脱して」


 才華が胸を張る。


「私に出した。」


 愛音が手を顔に当ててなにかを思い出している。・・・・・・知佳さんと良子さんが一瞬考える。


「「ほおう。」」


 結論に至った2人の目が怪しく光った。


「まさか斜め上じゃなく、異世界転移というぶっ飛び方とは。これは沙緒里を含めて話し合いが必要ね。良子。」


「そうね。今日の夜は空いてるはずだから、3人で会議ね。」


 2人で真剣に話あっている。楽しそうではある。俺をつまみにしているのか、俺達をつまみにしているのか。


「でた、在人を食い物にする姉さんズ会議。」


 前者かよ。


「このときの良子さんってイキイキしているよね。在人。」


「・・・・・・・俺は貢献していると考えるべきか。それとも踏み台になっているとべきか。」


「「「「後者ね。」」」」


 4人の女性の意見と表情は一致していた。


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・赤髪の件より、一線の件って。


 この後、赤髪の件について説明した結果、2人は納得してくれた。












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