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閑話1

会話のみです。

「ねえ、えみり。ダニエルはどんなこと言われたら喜ぶかな?」


「えー、ダニエルってドMだっけ?この豚野郎とか?」


「そんなの選択肢にないから。真面目に答えてよ」


「人の家まで来て乙女ゲームやってる人に、どうして真面目に答えなくちゃいけないのよ。でも、まさか楓がはまるなんて思わなかったなぁ。そもそも何かに没頭するイメージがまずなかったし」


「そう?楽しいわよ。あっ、当たってた!無視がきいた!なるほど、放置プレイね」


「はあ、全く。なんだっけ?ジョージが女好きで、ダニエルがドMで、アルバートがナルシスト?どれもタイプじゃないわー。いくら恋に恋するお年頃って言ったって、エミリー趣味悪いって。このケントってサブキャラもイケメン枠だし、あの過去はかわいそうだけど、なんかひねくれてるというか幸薄そうっていうか。しかもさ、どのキャラとハッピーエンドになっても、それぞれの偏っていた愛情がもれなくエミリーに注がれるわけでしょ?独占欲強そうだし、絶対ヤンデレエンドじゃん。やだよー」


「あら、同じ名前のヒロインには共感しないのね。じゃあライバルのミシェルのほうは?」


「うん、ミシェルはすごいよね。エミリーが攻略相手を選んだ瞬間、その攻略相手が好む女になるんだもん。見た目はどうみても悪役令嬢ですっていうクールビューティーなのに、尽くし具合が半端ない。いっそ清々しいよね。伯父や従兄をたぶらかしてコネを使いまくるところとか、絶対仕事できるよこの子。取り入り方も使いどころも上手い。なるほどねー」


「うわぁ疲れてるね、えみり。休みの日くらい仕事のこと忘れなって」


「あー思い出した。あのクソ上司め、女性雇用促進とか社長に提言して媚売って、女は茶でも出してればいいなんて古くさい考えなくせに!人の昇進潰しておいて、何が「早くいい相手を見つけないから、今も一人で頑張らないといけないなんて、大変だね」だと?!ああ?!こっちは天涯孤独の身で、彼氏には「仕事と俺とどっちが大切か?」って聞かれて食いぎみで仕事って答えて振られて、守る人も守ってくれる人はいないけどな!だからこそ、仕事にしがみついてるって思われても仕方ないけどな!それでも、お前より成果出してるし!正当に評価されないシステム以外は働き甲斐のある会社だけに、辞めるに辞められないっていう、悪循環な!…ッゲホッゲホッ!」


「はい、紅茶。えみりは本当に頑張ってるよ。高校生のときにご両親と弟が事故で亡くなったときも立派に喪主を務めたし、自分で学費を稼いで首席で大学卒業したし、仕事もしっかりこなして、同期や後輩に慕われてるし」


「…ありがと。ふー、楓が淹れてくれる紅茶って、本当に美味しいわね。昔から変わらない。幼馴染みでずっと一緒にいるけど、何で私が淹れたものより美味しくできるのかしら」


「ふふ、隠し味が決め手よ。落ち着いた?」


「ん。楓はいつも楽しそうね。仕事も恋人とも順調だし、おじさんもおばさんも結婚結婚うるさくないし」


「…そりゃあ私にも、一つや二つ、悩み事くらいあるけど」


「えっ、ごめん、私いつも聞いてもらってばかりだよね。楓の話、いつでも聞くよ!」


「…ありがとう」


「あ、さっき愚痴ったときについ言っちゃったけど、彼氏と別れたから、来週の私の誕生日は仕事帰りに楓の家に行ってもいい?金曜だから泊まらせてよ。久しぶりにおばさんのごはん食べたいし、おじさんにも会いたいし」


「…ええ、もちろん。伝えておくわ…」


「ちょっと、大丈夫?用事でもあった?」


「ううん、毎年えみりの誕生日は予定空けてるもの。えみりって何故か誕生日の前に彼氏と別れてるなって思って」


「確かに…気付きたくなかったわ」


「話でも変えようか。さっきの乙女ゲームの「偏愛の檻」の世界で、えみりがヒロインのエミリーだったら、どんなことする?」


「何それ。あ、でもエミリーって第一王女でゆくゆくは次期女王よね。それなら何でもやりたい放題じゃない!恋愛とかはとりあえずどうでもいいから、子供の頃から勉強しまくって、早く政治に口出ししたいわね。父親が国王でしょ?純粋な振りして痛烈な駄目だしとかしまくりたい。アルバートはともかく、その父親の宰相はやり手っぽいから内密に連絡取り合って、次代に向けて着々と水面下で準備していくのもいいわね。あ、スミス伯爵ともつながっておくのもいいかも。だってさ、スミス伯爵って国や国民が一番って考えじゃない?段々ミシェルの個人的な欲望に従っていく小者に成り下がるけど、ミシェルの回想シーンの台詞に「今の国王陛下の日和見じゃ、今が良くても国の未来が危ういではないか!」なんて言ってるし。だから、ミシェルに毒される前にこっちの味方につけておくの、いい考えじゃない?あら、何だか楽しくなってきた!いいわね、策略と謀略の王女ライフ… 」


「うん、ストップストップ。機嫌が直って良かったわ。ねえ、そろそろ寝ない?12時回ってるし」


「そうね、寝ようか。明日は日曜だし、朝起きたらモーニング食べに近くのカフェに行かない?」


「行く行く!あそこのエッグベネディクト食べてみたかったんだ」


「それじゃあ電気消すわね」


「…ごめんね、えみり」


「ん?何か言った?」


「ううん。じゃあおやすみ」


「おやすみ…?」


◇ ◆ ◇


キキーッ!!ドンッ!!キュルキュルキュル!!ブォンッ!!


「お、おい!ひき逃げだぞ!」


「キャー!子供と女の人が倒れてるわ!!」


「子供は無事だ!泣いているだけで怪我もない。その女の人がかばったんだ!おい、早く救急車…」


「身元がわかるものでも…あ、社員証だ。この近くの会社だな。俺会社の人呼んでくるよ」


「なんて名前だ?社員証もぐしゃぐしゃだな…はる、み…」


「先輩っ!!嘘、でしょ…」


「君、知り合いかい?彼女、ひき逃げにあってね、今救急車と警察を呼んでいるんだが、会社にも知らせたほうがいいだろうと思って…」


「ああ…先輩…今日、誕生日だったのに…どうして、こんなことに…」


「そりゃ気の毒な話だな…」


「すみません、うちの社員が事故にあったと…あ、私は総務の者で…えっ、春山さん?!」


「えみり先輩っ…!」

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