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第二章 一~五

第二章


 眠りにつく前に林太郎が訪れ、扉越しに指定された時刻は卯三ツ。

 現在の六時三十分。

 日和が目覚めたのは丁度六時三十分。それから着替えをしてばたばたと昨日同じく指定された庭へと向かう。遅れたのは十五分かそこらなのに、林太郎は汗を拭うと日和を睨んだ。

「す、すみません、えっと、疲れていて……」

「そうか」

林太郎はしかし、それだけを言うと木刀を日和に突き出した。

「お前、剣術の経験は」

日和は木刀を受け取りながら林太郎を見た。ないとは言いづらいが、嘘だとばれたらその時もっと怖い眼に合う気がする。日和は木刀を受け取りながら、「ない、です」とだけ言った。

「そうか」

林太郎はまた頷いた。昨日は、昼間会ったときは混乱していたし、夜は暗がりの中でよく見えなかったが、改めて見ると、まだ少年である。年は日和とそんなに変わらないか、少し上かもしれない。

 黒髪は今の日和と同じくらいだが、硬そうな髪は少しはねている。日和をまっすぐに見つめる瞳は揺らがない。やや吊り眼のためか少し厳しそうな印象を受ける。

 昨日は学ランのようなものに肩掛けのようなものを纏っていて、学生帽を被っていが、今日は胴着のようなものを着ている。

 日和がじっと見ていると林太郎は首をかしげた。

「刀を持ったこともない――だろうな」

林太郎は片目を顰めるような表情をした。そして、ふむ、と一人頷くと日和に木刀を押し付け自分はその横に立ち木刀を構えて見せた。

「こうだ」

といわれても、日和には初めてのことなので慌てて林太郎を真似ようとするが、当たり前のようにうまくいかない。

 右手を柄の前方に、左手を後方に。かろうじてそれだけまねるが、林太郎は格好がついているのに自分のはどことなく格好がつかない。

「ふん」

頷くと、林太郎は日和の背中をたたいた。

「まずは背筋だな」

「うぇ!」

急にたたかれて変な声を出した日和に驚いて林太郎は手を慌てて引っ込めた。

「な、なんだ! 俺が何かしたか」

「あ、違います、すみません……」

「しっかりしてくれ。俺も男のつもりでやっているのだから」

改めて林太郎を見ると心なしか顔が赤い。今までのぶっきらぼうな態度は意識しないようにしていた為だろうか――日和はそう考えて、林太郎とは逆に何故か急に林太郎が男性で自分は女性ということを意識してしまった。

 日和は言われたとおり背筋を伸ばす。咳払いをして、林太郎はそれを見ると頷いた。

「じゃあ次は上段に構えて――」

林太郎が構えて、日和はそれを真似る。

「振り下ろす」

空気が唸る。日和が振り下ろしたものはうまく音が鳴らずへなへなとした線を描いた。

「これを百回」

「百回!?」

驚く日和に林太郎は淡々と答える。

「ああ。剣を持ったことがないんだろう? まずは素振りからだ。

型はすべての基本になる。型を崩すな、まずは形を完成させることだけ考えろ」

形を完成。

「お前は”刀を使う”わけではない。”その真似をするだけ”だ。わかるな」

頷いてみせる。確かに、林太郎の域まで到達させる必要はない。あくまで、”戦闘で刀を使うこと”が重要なのであって、それ以外はない、らしい。ならば、この素振りだけを行い、とにかく型を完成させ、あくまでも刀を使って戦っているように見せれば――戦うことはまだ怖いが、それでも、どうにかなるような気がしてきていた。とにかく、最初の一体には勝てたわけだし……。

日和が納得したことを察したのか、林太郎はそれだけ言うと自分の練習であろうか矢張り素振りを始めた。

 日和はそれをぼんやりと眺めると、とりあえず木刀を振り下ろす。木刀は重く、一回振り下ろしただけで腕がだるくなってしまった。日和はこれを百回もできるとはとても思えなかったのである。困り果てて林太郎を見ると相変わらず素振りをしている。

「ふぅ」

とりあえず、溜息をついて素振りを始めた。

 三十回を数えたところで、それでもどうしても腕が上がらなくなってきて、日和はへろへろとへたり込んだ。型を崩さず。型を崩さず。言い聞かせながら神経を使ってやっているためか余計疲れる。

 変わらず竹刀を振り続ける林太郎を見る。

 林太郎の太刀筋は素人目の日和から見ても真っ直ぐで綺麗だった。

ぼんやりと眺めていると「千」と呟いて林太郎は首に掛けていたタオルで顔の汗を拭った。そこで日和の視線に気づき、日和を見る。

「……なんだ」

日和はぼんやりと(千!?)とか考えていたので、いきなり林太郎に話しかけられたことに吃驚して変な声を出してしまった。林太郎はまた不審そうな目で日和を見ている。

「何かしたか」

再度問われて、日和は首を振った。

「えっと、ちょっと、もう無理です」

とりあえず自分の状態を素直に告白すると、林太郎は呆れたような顔で、それでも日和に近づいた。と、林太郎が突然眉を顰めた。

「?」

日和が顔で問うと、林太郎は何か考えるように眼をそらして――そして、「なんでもない」とだけ言った。

日和はそんな林太郎の態度を疑問に思ったが、何も聞かなかった。

――林太郎はとりあえず、腕を暖めることとと、朝の稽古は終わりということを告げた。

「型を崩すな。素振りも無理にしなくていい。――ただ、忘れるな。姿勢を保つ事をな。それだけ肝に銘じておけ。そうすればなんとかなる」

林太郎はそう、雑に日和に”指導”すると、自分の稽古に戻る。日和はとりあえず、ご飯を食べるために館に戻ることにした。


――なんだったんだろ、あれ。

朝食を摂りに食堂へ向かう廊下で日和は考える。

 林太郎は確かに、日和に近づこうとしたとき、日和の何かに、いや、もしかしたら日和の関係のないものであったかもしれないが、そういうものに気がついて足を止めたのだ。

 明らかに不自然だった。林太郎は何に気がついたのだろうか。

 でも、林太郎に秘密は、今のところは、ない。だから、林太郎がそんな表情をする必要はないのだけど――

 考え、歩いていると突然目の前を男性の笑顔が塞いだ。

「!!!!」

ざざっと後ずさりをする、と男性もにこにこと笑ったまま日和が後ずさったのと同じだけ距離をつめてくる。

 その男性を避けようとしても前をふさがれる。見詰め合うことしばし。

「……何か」

最初に口を開いたのは日和だった。

「いや! なんでもない! しかし今日も愛いのう!」

日和は唖然とした。なんだこの、今にも「天晴れ!」と言い出しそうな人間は。大正時代にもこういう言葉はあったっけ――日和は真剣に考える。答えが出なくて、諦める。

「天晴れ!」

(あ、本当に言った。……違う。そうじゃない)

「何か、用ですか」

声を男性のものに近づけなければならないため、なるべく低く、ぼろがでないようにすると自然と言葉数が少なくなる。そんな日和に男性は笑みを崩さない。にこにこと満足そうに日和を上から下から、と忙しく眺めた。日和よりも五つは上だろうか。切りそろっていない髪、眼帯、着崩した水色の派手な柄の着流し、面長の顔はにこにこと笑っている

――笑ってはいるがどこからどうみても怪しい。

「土岐宗ッ! 抜け駆けはいかんといっただろう!!」

と、廊下の奥から朗々と叫ぶ声が聞こえてきた。と、同時に何かが猛烈な勢いでこちらへ来る――来る!

 足音は日和たちのいる場所近くでなくなり、代わりに土岐宗に何かが勢いよくあたったような音がした。

「――ッ!! 梅丸!!」

しかし、それでも土岐宗は倒れずかろうじて堪えるとぶつかってきた対象であろう、自分の後ろを思い切り振り向く。その瞬間に土岐宗越しにその仁王立ちしている”もの”が見えた。

「えっと……」

 まず眼を引くのは黄色いチェックのハンチング帽である。同じ柄の黄色いチェックのコートを羽織っている。年は日和よりも少し上だろうか。

ズボンは膝丈、白いソックスに、革靴――なぜかシャーロック・ホームズを思い出す――。

 大きくふんぞり返ったまま、シャーロック・ホームズはにやりと不敵に笑い、土岐宗と呼ばれた青年をびしりと指差した。

「お怪我はありませんかお嬢さん! いや、麗しき人!」

日和はその口上を聞いてやっと思い出した。

 昨日、日和の入隊でもっとも騒いでいた二人だ。昨日はとにかく暗かったため、明るい日の下で見たら一瞬で解からなかったのだ。土岐宗と呼ばれた男はもともと垂れているだろう眼を更に垂らして恨みがましく梅丸と呼ばれた少年を見た。

「梅丸! いってーじゃねぇか!」

「朝から抜け駆けするからこうなるッ!」

昨日と同じようにぎゃあぎゃあと騒ぎ始めた二人に日和は思わずまた後ずさった。

――関わりたくない。

今なら二人は口げんかに夢中でお互いのことしか見えてない、逃げるなら今か。日和は少しずつ後ずさるが、それを目ざとく見つけたのは土岐宗と呼ばれた青年だった。

「見ろ! お前がくだらないことで止めるから彼の小町が逃げてしまうではないか!」

「馬鹿を言うなっ! 麗しき人はお前を見て逃げているのだっ!」

どちらも、とはいえずに日和はただ首を振った。

「あ……」

何もいえない日和を見て、梅丸の方がははぁん、と唸って顎に手を当て、頷いた。

「君は僕達がなぜここにいるのかと思っている! そうだろう!」

日和は思わずぶんぶんと頷く。

「愚問だな」

土岐宗の方が右手で自分の右肩を叩きながらにやりと笑った。

「日和――と言ったか。親交を深めるは隊の掟!」

「日和! 僕は朝一に会うなら可愛いものがいい!!」

(支離滅裂じゃないですか……)

日和はくらくらする頭を抱えて誰か助けてくれる人はいないかと辺りを見回した。

そこに、丁度いいところに顔を洗ってきたらしい林太郎が顔の汗を拭いながら通った。

 林太郎は二人の姿を認め、びくりと肩を揺らした。

(やっぱり……)

何故か心の中でそう呟く。そして、日和は林太郎に助けてほしいとテレパシーを送った。林太郎は数秒悩み――結局日和がぼろを出すことを恐れたのだろう、面倒そうに日和のもとへやってきた。

「お前ら」

「ぎゃん!」

「きゃっ!」

伊達男とシャーロック・ホームズはそれぞれ変な悲鳴を上げた。

「何してる?」

「り、林太郎こそ何してるんだ?」

二人は恐るべき身のこなしでいつの間にか日和の後ろに隠れている。

「ここは俺の住居でもあるんだが。言ったことはなかったか?」

林太郎は皮肉を言っているつもりはなくただ事実を述べているだけなのかもしれないが――しかしにこりとも笑わないため、ただひたすら怖い。

 日和はまったく関係ないのに(むしろ庇って貰っているのに)何故か背筋が寒くなった。

「し、知ってるさ! 知っているとも!」

「そうだ! だが今日はお前に用はない!」

果敢に声を上げる探偵、同調する侍。しかしそれも学生の睨みで一瞬にして黙ってしまう。

「えっと、用を思い出した」

「奇遇だ! 俺もだ、花園!」

「したらば、お嬢さん、いえ、麗しき人。今日のところはこのあたりで!」

「お名残惜しいですが、さよならです!」

というと二人は踵を返して脱兎の如く、我先にと駆けて行ってしまった。後に残ったのは林太郎と日和だけ――林太郎は二人の後姿を呆れた表情で眺め、日和は困ったようにそれらを見比べた。二人の後姿が完全に見えなくなると林太郎は大きく溜息をついた。

「気をつけてくれ、あの二人には。」

「……みたいですね」

さすがに日和も、あの二人の騒ぎを見ていれば”警戒すべき味方”である事はわかる。林太郎は普段と変わらず背筋を伸ばし立ち去ろうとする。日和は思わずその背中を呼び止めた。

「林太郎さん!」

林太郎が振り返る。日和は躊躇うが、とりあえず言葉にする。

「あ、ありがとうございました」

助けられたことに礼を述べ、頭を下げると、林太郎は、癖なのだろうか、また目を

顰めるような、眩しそうなあの目線を日和に寄越した。


 食堂に着くと、大きな、真っ白なテーブルクロスの掛けられた長方形のテーブルが眼に入った。その奥のワゴンに確かに食事が用意されている。昨日の天睛の話から日和は勝手にバイキングのようなものを想像していたのだが、ワゴンに載せられているのはプレートの上に一人分の食事が置かれているものだった。

(そうだよね、バイキングなんて毎朝作ってたら不経済だよね……)

それでもちょっと失望した日和は、手前のプレートを取って適当に席に着いて、初めての朝食を食べるのであった。


午前はどうしようか。とにかく、型を覚え、剣を振るえないと話にならない。食事中、天睛がやってきて手短に言った。

 林太郎はまだ技術的に他人のフォローをできるほどではなく、日和は仕事上は林太郎以外と組まされるらしい。

 その時、もし剣を振るわずにうつしものを倒している姿を目撃されたとしたら――別に日和は構わないのだが、天睛の方は構うらしい。

(ただし、一昨日うつしものが出た以上、しばらく現れないでしょうね、か)

 それだけが唯一の救いだ。

 性別のことといい、剣のことといい、何かとしがらみが多い。

しがらみを作っているのは天睛なのだろうが、しかしそれはルールなのだろう。ここでのルール。それには従わなければならない。

(うまくやっていけるかなぁ)

溜息を吐くと、最後の一口を口に運ぶ。と、そこに物音がして日和は振り返った。

「……」

そこには恐ろしいほど見目の麗しい少年が呆然とたっていた。

「あ……」

日和は驚きのあまり口を開けて固まってしまう(さぞかし間抜けな顔であっただろうと思う)と、その異常な雰囲気に日和は気づいた。怖くなるほど整った美貌を持つ少年は日和を睨んでいる――いや、敵意というよりもむしろ、理解できないものを見るような目で見ている。

「あ、あの、すみません」

思わず謝り席を立った。お皿がゆれて不愉快な音をたてる。

「今食べ終わりましたから!」

説明のように言うと慌ててお皿を下げる。少年はその間何も言わずに日和を気味悪そうに眺めているばかりだ。日和はばたばたと後片付けをして、そしてドアのところで、一瞬躊躇う。そこにはまだ少年がいた。通れない。

「あ、あの……」

声をかけると彼はす、と無言で道を開けた。

「……ありがとう、ございます」

礼を言って横を抜けるとき、ふと少年の顔を見上げた。少年はまだ不可解なものをみるめで日和を追っていて、そのガラス玉のような目は日和にとってひどく、印象的だった。

 日和は再度、頭を下げて横をすり抜けようとする……その時。

「おおい! 影鴇ではないか!!」

その時、ひどく大きな声が廊下に響いた。

「!?」

隣の少年――影鴇も息を呑む。

「おお? 隣にいるのは、新入りか!?」

ズンズンと、廊下を大股でこちらに向かってくる。対峙した体は熊のように大きく、古い傷のある顔は一見怖そうなのににこにこと人懐こい笑みを浮かべていたため、そこまで怖い印象はない。

「昨日は挨拶もせずすまんかったな」

豪快に笑い、男は手を差し出した。大きい。日和の父よりも何倍も大きく、そして無骨な手が日和に差し出されている。おそるおそるその手を取ると恐ろしいまでの力で握り返された。

「――!」

顔を顰める日和にはお構いなしに笑みを絶やさぬ男……。男はもう一度笑うと、口を開いた。

「俺は無亮。宜しくな、新入り!」

近くで喋られると風圧で吹き飛ばされそうだ。怖そうだ……怖そうだけど、優しそうでもある。日和はここに来て始めて心を許せそうな相手にめぐり合い、内心ではほっとしていた。

「よ、宜しくお願いします……」

日和もなんとか笑みを作り、そう告げる。手を握り返すと無亮は笑ったまま力強く頷いた。そして、日和の手を益々強く掴む。

「!?」

驚き無亮を見上げると、無亮の口元は笑っているが、目元は一切笑っていない。

「随分細い腕じゃのう。この手で剣を握るか」

「――!」

ばれている? と無意識に思う。横の影鴇を見ると自分の腕を自分で掴み何かに

耐えていた。目線は日和を捉えておらず、とはいえ無亮を見てもいず、ただただ何かに耐えているようにあらぬ方向を向いていた。

「あ、あの……」

日和が何も答えられずにいると、無亮はまたにいっと、笑った。

「おお、悪かったな。まあ、とにかくお前さんには期待してるってことだ。次の出撃を楽しみにしとるよ」

無亮の笑顔に日和も、もう一度愛想笑いを浮かべる。もう、気の許せる相手だとは思えなかった。

「無亮」

その時、影鴇のものではない、凛とした声が日和の耳に届いた。声の主を探すと、体躯の大きな無亮に隠れるように林太郎が――いた。

「何をしている?」

林太郎の言葉に慌てて無亮は手を離す。

「いや? 何も。ただ、新入りに挨拶しておっただけじゃよ」

「……」

林太郎が日和を伺う。日和は曖昧に頷いてみせる。影鴇を一瞬見て、そして日和をもう一度みた。

「そうか」

「林太郎はどうした」

無亮が尋ねると林太郎は大儀そうに言った。

「朝飯だ。……今日はごたごたしていてまだ食っていない」

「ほう、そうか。奇遇だな、俺もだ」

「日和」

無亮の言葉は無視して林太郎は日和に向き直った。

「時間はあるか」

日和は神妙に頷いた。


 天睛に日和の件を相談すると、天睛は少し悩む素振りを見せてから、「君が共に行動してあげなさい」と告げた。これ以上自分の稽古の時間が削られるのはごめんだ、そう言っても天睛は取り合わず、”これも仕事のうちです”と全く聞く耳を持たなかった。

 天睛の部屋を辞して廊下に出ると、俯いていた日和が顔を上げる。

「……天睛さん、何ですって?」

捨てられた子犬のような目。溜息をつき、言う。

「――とりあえず、俺の目の届く範囲にいろ」

日和はぱっと顔を輝かせる。――厄介だ。しかし、しょうがない。仕事といわれればやらなければいけない。

「ただし、お前が慣れるまでだ。あと、俺の邪魔はするな」

冷たく告げると今度は日和は落ち込んだ顔を見せる。

――面倒だ、意味がわからない。

林太郎は扱いかねて、舌打ちをすると意味もなく天井を見上げる。豪奢な模様は天睛の先祖の趣味だろう。”ゆうとぴあ”にいるとか言われる鳥のような羽を生やした”メリケンの天女”が優雅に微笑んでいる。メリケンの天女は空を飛ぶとかいう話だが、林太郎には信じられない。空を飛ぶというのは自由なのだろうか? 何の悩みもなく、あのように優雅な笑みを絶やすことはないのだろうか?

「……大丈夫だ、アイツらも興味津々なのは最初だけだろう」

「……はい。ご迷惑を、おかけ、します」

日和が頭を下げる。天女は相変わらず微笑んでいる。


 とりあえず朝飯を食べてから、稽古に戻った。日和は近くの茂みに腰を下ろして

ぼんやりと空を眺めている。そうしているなら稽古をしたらどうか、と思ったがこれ以上自分の稽古の時間を取られるのが嫌で、黙っていた。

 それにしても、たいした貧乏クジをひいたものだ。

 チラリと日和を見る。昼飯に座した以外はじっと俯いて地面を眺めている。

 林太郎は大きく溜息を吐くと、屋敷へと戻っていった。

「ど、どうしたんですか?」

日和が慌てて後を追ってくる。

「……竹刀を置いてくる。そう辛気臭い顔で横にいられても仕方ないからな」

「す、すみません……」

益々落ち込んでしまう日和に林太郎は大きく息を吐いた。

「外に行くぞ」

「え?」

「ここでこうしてても仕方ないだろう」

日和がようやく、微笑んだ。


 門扉を潜ると、相変わらずの光景が広がっていた。

 横の日和を見ると、期待半分・不安半分の表情で目を輝かせている。

「外に出るのは初めてだったな」

「はい!」

わくわくと辺りを見回す日和。

 ふと、気になってたずねてみる。

「お前がいた時代とやらとは、かなり違うのか」

「……」

そう尋ねると、日和は落ち込んだように顔を俯かせた。

「そうですね……だいぶ、違いますよ?」

――相変わらず、扱いがよくわからない。

こうなると、花園の手でも借りたくなるものだが、それをするわけにはいかない。

――せめてもう少し、花園の話を聞いておくべきだったか。

 それにしても、と林太郎は思う。

 ”元の時代、自分の家”とは、そんなに恋しいものだろうか。確かに、正体不明の男たちのいる屋敷で寝起きするようになって不安になるのは間違いないだろうし、その気持ちは林太郎にも分かる。

 しかし、家を恋う気持ちはわからなかった。

 むしろ、家が嫌で嫌で仕方なかったのだから。

「えっと、どこに行くんですか?」

そんなことを考えていると、日和が自分を見上げていた。

「あぁ、考えてなかったな……おい、お前どこか行きたいところ……」

その時だった。

 林太郎は違和感を感じて顔をあげた。

 笑顔で行きかう市井の人間。格好はさまざまではあるものの、それはいつものように楽しそうに幸せそうに歩いている。

 その中に、その違和感はあった。

 軍人である。

 相手は帝国軍人のようであった。やけに凛々しい眉毛と、丸い眼が印象的だった。

――どこかで、見たことがある。

 林太郎がその相手を思い出す前に、向こうが林太郎に気付いたのだろう、帽子のひさしを引き下げると、林太郎に背を向けて行ってしまった。

――軍人が、何のようだ?

「何かありましたか?」

日和の能天気な声が聞こえる。林太郎の見ている方向を懸命に見ようと背伸びをしている。

「いや、別に。見知った顔のような気がしたが気のせいだった」

日和は本当にわからない、というように首を傾げている。


「それで、どこに行くかだが」

こうして門扉にいるのは得策ではない。また土岐宗や花園に見つかったらうるさいだろう。とはいえ、林太郎が時間をつぶすためのいい場所を知っているわけもない。


 結局、辺りをぐるりと回り、戻ってきた。

 戻るころには夕闇が迫っていた。


 また夜が来る。


 影鴇に呼ばれたのは、夜の七時を回ってからだった。

(この時代の人は夜が早いんだ……)

そう、のんびりした気持ちで外の灯りが消え始める窓の外を眺めているときだった。

「”うつしもの”です!」

ドアをノックすることもなくあけられ、それだけ告げられた。

「――広間に来てください」

影鴇は忍者のような真っ黒い装束を着ている。

 この間よりももっともっとピリピリとした雰囲気で抗うことはできそうになかった。

 日和は一つ頷くと、影鴇の後を追った。


 広間にはもうほとんど揃っているように見えた。

「まさか、こんなに早く来るなんて……」

ふと横を見上げると、顔を青くした天睛がいた。

「大丈夫ですか?」

小声で小さく聞かれる。

 その気配におされて、頷く。

 林太郎は何も言わずにじっと日和を見ていた。

「それでは、出撃してください。土岐宗――日和と組んでくれますか」

”土岐宗”。

 その名前に不安を感じて、顔を上げると、昼間のへらへらした顔とはうってかわって、射るような目つきの土岐宗がいた。

「あぁ、ちゃんとお守りしますよ、姫さん」

日和が眉をしかめてみせると、土岐宗は”冗談冗談”と笑った。

「では、急いでください。――影鴇、うつしものの少ない場所は?」

「弐地点です」

「……土岐宗、弐地点に向かってください」

「了ー解」

それからもう天睛は日和を見ることもなく、他の人たちに指示を出し始めた。

「ほら、行くぜ」

刀の柄で頭を小突かれ、そちらを見るとそこには土岐宗がいた。

 日和は頷くと、土岐宗に続いて夜の街に向かった――


「弐地点ってのは、桜田門の方向だ、わかるな?」

「さくらだもん……」

日和は頭の中で反芻する。遠くはないが、決して近くもない場所だ。

「わかってるのか?」

土岐宗がぐるりを振り向いた。

「はっ、はい! 大丈夫です!」

「ちなみに、帝都内、どこであれうつしものが出れば俺達はどこへでもホイホイ行くことになる」

「え、で、でももしも遠い方向で現れたら?」

「そんときは、……ここだけの話な、政府が車を出してくれる」

「く、車!?」

日和は頭の中でタクシーを思い浮かべる。

「あぁ、まぁ俺達は帝都にとっても、期待のかかる組ってワケだ」

「は、はぁ……」


 そんなことを喋りながら十分ほども歩いただろうか。

 霧が濃くなってきて、初夏だというのになぜか寒気がした。

(どこかでこんなふうになったことがあるような気がするんだけど……)

「止まれ」

そんなことを考えていると、土岐宗に止められる。

 土岐宗は昼間の雰囲気とは打って変わって、厳しい表情をしていた。それなのに目だけは爛々と光っている。

(……)

日和は少し恐怖を感じて、天睛から与えられていた刀を抱えて震えた。

「お前、随分細っこい腕だけど大丈夫なんだろうな?」

土岐宗が声をおさえ、囁く様に尋ねてきた。

「は、はい。大丈夫、だと思います」

「ふん、この時期に急に見つかった期待のホープ、しかも美人ときた」

最後にふざけていうと、土岐宗は日和を振り返った。

「お前は右だ。俺は左。やばいと思ったらすぐに呼べ。わかったな?」

「は、はい!」

「じゃあ、――行くぞ!」

土岐宗の掛け声に促されるように、日和は夜の街に向かって駆け出した――!


 真っ暗な路地は明かりすら届かない。

 確かに、この時代の明かりはランプでしかないため、このような路地裏まで明かりが届くわけもないのだが。

 時折強い風が吹き渡り、日和は身をすくませた。

 あの日と同じように、うっそうと茂った木々が日和をあざわらうかのように葉を揺らしている。

(……!)

木が再度大きく揺れて、日和は身をすくませた。

(土岐宗さんについてきてもらったほうが良かったかも……)

それでも、日和の理性がそれを許さなかった。

 どうやら天睛たちは、日和が刀を使わずにうつしものを倒すことを不思議に思っている。きっと、林太郎たちは”刀と能力を使ってうつしものを倒している”ようだ。

 だから、日和が刀を使わずにうつしものを倒したことにあんなに驚いていたに違いない。

 だけど、自分にどうしてそんな力が宿っているのか、それはわからない。

 日和はそんな事を考えながら一歩一歩確かめるように進む。

 風が一層大きく木を揺らし――

 その時だった。

 向かう路地の先に、月の光に照らされててらてらと身を光らせたうつしもののがいた。

「――!」

 ドクン、と心臓が高鳴る。落ち着きを取り戻すために深呼吸を繰り返す。

(大丈夫、この間みたいにやればいいんだ……それに、)

日和はぐっと唇をかんだ。

(ここで倒せないと、あの館を追い出されてしまう――)

今日一日、林太郎について町を回ったが、そこは到底日和には理解できそうもない場所だった。

 そこは、日和が暮らしていたような安全で綺麗な場所とは到底思えなかった。

 刀を携えた人相の悪い男、それに連れられていく小さな子ども。その悲しそうな瞳。

 もちろん、よさそうなことだってたくさんあった。しかし、日和には到底なじめそうもない雰囲気をかもし出していた。

 町は日和に言っていた。「余所者」、と。

 そこは日和が馴染むことを拒んでいるようだった。

――ドクン、ドクン。

 日和はゆっくりとうつしものに近づいた。

「……アー?」

赤子のような声をあげ、振り向いたうつしものに手をかざしてみせる。

 すると――

「アアアア!」

泣き声のようなものを上げてうつしものは消えて――いや、溶けていった。

(あ……できた、かも……)

あっけない勝利にしばし呆然と消えていくうつしものを眺めた。


 その後の掃討も、特別大変なことではなかった。

 ただ、うつしものに気付かれないようにこっそりと後ろから近づけばよかったのだから。


「おーい、新入り!」


 土岐宗の声が遠くから聞こえてきたのは、三体目を倒して大きく息をついたときだった。

「と、土岐宗さん!」

「大丈夫だったか?」

土岐宗は息を弾ませながら日和に近づく。そして、何かに気付いたように辺りを見回した。

「――何体倒した?」

「えっ、あ、あのたぶん、三体くらい」

「……」

土岐宗は眉を怪訝そうに顰めると、辺りを見回した。

「悪ィ、こっちがあたりだったか――お前、怪我はないか?」

「は、はい! ないです!」

まじまじと体を見てくる土岐宗。その視線から逃れるように身を翻すと、土岐宗は感心したように何度も頷いた。

「へぇ、細っこい腕だから心配してきてみりゃあ、お前、結構出来るクチか?」

そして土岐宗はにやりと口端をあげた。

「息も弾んでないみたいだし」

「……!」

日和は思わず息を呑んだが、暗さのためか土岐宗は何事もなかったように辺りを見回した。

「ま、これで全部倒したはずだから。とりあえず、館に戻るぞ」

「は、はい!」

前を歩き出した土岐宗に慌てて付き従う。

(なんだか随分あっけなかったけれど……こんなものなのかな?)

土岐宗の背に隠れて安堵の溜息をつく。

 その時だった。

「――?」

前を歩く土岐宗が立ち止まる。

「ど、どうしました? 土岐宗さん……」

まさか、自分の溜息が聞こえてしまったのではないかと緊張する日和を全く意に介せず、土岐宗は路地の一点をじっと見つめていた。

(?)

その先に何があるのか、日和が慌てて目線を追うと、その先にあったのは単なる路地だった。

「――なんでもねぇ、ただの猫だったみたいだ」

「猫、ですか」

そう答えると、日和は思わず息を吐いた。

(今日はもう……部屋に帰りたい……)

緊張し通しの一日だった。

 早く部屋に帰って、ベッドにもぐりこみたい。今朝方まではあそこも全く知らない場所ではあったものの、住めば都というのはこのことなのか、早くもあの場所が恋しくてたまらなかった。

 だけど、その考えを打ち払うように土岐宗が声を上げた。

「――よく考えりゃあ、俺達が帰ったところで他はまだまだかかるだろうから――どうだ、姫。あそこに寄ってくってぇのは?」

土岐宗が指したのは赤提灯のかかった屋台だった。

「……あ、え、遠慮しま、す」

そう言って辞そうとした日和だったが、土岐宗はそんな日和を逃がさないように首根っこを掴むと、赤提灯の店へ向かっていった。


 翌日朝。

 結局昨日は土岐宗につれられて、赤提灯の店で酒をすすめられた。

 

「――なんだ、呑まねぇのか」

(そりゃそうですよ……未成年なんだから……)

しかし、土岐宗にそんなことを告げても理解してくれなさそうな気がして、日和よりは黙って、チビチビと目の前の茶の入った湯飲みを傾けた。

「……」

「……何ですか?」

湯飲みを傾けていると、目の前で土岐宗はニヤニヤと日和の顔を覗き込んでいるのに気付いた。

「いや、やっぱりどう見ても男には見えない、って思ってな」

「……そうですか」

あまり言われると、何かボロを出しかねない。日和は土岐宗から顔を背ける。

「――!」

 しかし、耳元を擽られて日和は高い声が出るのを堪えなくてはならなかった。

「な、な、何をするんですか!」

「おぉ、すまんすまん。塵がついてたもので」

「……!」

日和は過剰反応した自分が恥ずかしくて、思わず浮かしかけていた腰を収めると、再度チビリチビリと湯飲みを傾けた。

「それにしても、本当に女みたいな反応するんだなぁ。これまでどうやって過ごしてきたんだ? お前さんくらい可愛い顔してるならそこらのお大臣様が放っておかないと思うんだけどなぁ」

「そ、それは……」

「いや、言いたくないっていうなら言わなくてもかまわねぇ。ただ、俺はお前さんに興味があるってぇだけの話だから――」

(……)

そう言うと、土岐宗はくいっと杯を傾けた。

「――こんな変な時期に入ってきた新入りについて、な」

「――!」

日和を見つめる土岐宗の目は鋭い――

「――そ、」

ガタ! と椅子が鳴る。日和は思わず立ち上がっていた。日和は土岐宗の視線に恐怖を感じていた。

 全てを見透かしてしまいそうな視線。

 店の視線が日和に集中する。談笑していた人々が、日和にじっと視線を注いだ。土岐宗は、面白そうに日和を見ている。

「そろそろ、行きませんか……皆心配していると思うので……」

日和が慌ててそう言い繕うと、土岐宗は口端をにっとあげた。

「あぁ、別にいいぜ」


(――まずいよ、やっぱり土岐宗さん、疑ってる……)

日和は起き上がって、ぼんやりと考える。

 正直な話、日和に誤魔化し続けられるだけの度胸があるとは思えなかった。

 うつしものは確かに恐ろしいが、それよりも今の日和にとっては土岐宗こそが恐ろしかった。

(はぁ、一緒に出撃する人変えてもらえないかな……)

林太郎が一緒にいてくれるなら、これよりも心強いものはないと思うのだが、どうやら林太郎はまだ一緒に出るほど大人ではない、と天睛が主張しているため、彼に日和との出撃を頼むことは無理そうだ。

 とはいえ、影鴇は日和に不審を持っていそうだし、無亮もなんとなく信用できない。

(よく考えたら、結構八方塞がりなんだなぁ……)

思いながら窓の外を見る。

 今日も憎いくらい、晴れ渡っている。

(というか、本当なら私がこんなに悩む必要ないんじゃ……)

そう思わなくもないが、そこが日和の真面目さだった。

 寝巻きに使っている着物を脱いだときだった。

「おい、お前今日――」

ガチャッという音がして、部屋のドアが開けられた。

 林太郎がいた。

「……あ、お、お……!」

着替えの最中だから、日和はもちろん上は下着だけで――

「ちょっ……林太郎さん!?」

慌てて隠すけれど、林太郎は日和よりも更に慌てているようだった。

「わ、悪い! そんなつもりじゃ……」

「そ、それはいいから閉めて! 閉めてください!」

「そ、そうだったな! すまない!」

――ようやくドアが閉められた。


 日和の部屋の扉を閉めた林太郎は、心臓が今まで体験したことがないほど脈打っていた。

――お、俺は何を……!

頭から追い払おうとしても、日和の白い肌が頭から離れない。

――違う、あいつが無防備に着替えているからいけないんだ――!

日和のせいにしてみても、頭からその映像が離れるわけもない。

 深呼吸を何度も繰り返す。それでも、中々頭は記憶の再生をやめてくれなかった。

――それにしても白かった……

なぜ、自分の肌の色とこうも違うのか……

 そこまで考えて林太郎は自分の頭を、ひとつ、叩いた。

――やめろ、俺の頭!

 頭を振り、気分を変えようと窓の外を見た――

 その時だった。

「あれは……?」

見知った人影が、門から館を覗いているように見えた。

 遠くてはっきりとはわからないものの、帝国軍人の服装をした、尺の高い男性。


「……林太郎さん?」


その時、背後の扉が開けられた。

「お、おおおお、お前か!」

「……」

余りに意識しすぎて言葉が可笑しい。

 そんな林太郎を見て、日和は頬を染めると、目を逸らした。

「着替えたんで、もう大丈夫ですけど……その……」

ごにょごにょと言葉をにごらせる。

「出来れば、これからドアを開けるときに声をかけてもらえると、その――」

「あ、ああ! そうだな、そうさせてもらう!」

今までは男性しかいなかったのだから、そんな面倒なことをする者はいなかった。しかし今は……

 そこまで考えて林太郎はハタと思い当たった。

「他の輩に開けられた時はどうする」

「……わた、僕もそれを考えていました……」

「成る程……」

林太郎は思わず腕を組む。

 矢張り、女子を男子と偽って生活させるのは何かと障害が多い。

(天睛に報告したほうが……?)

「林太郎さん」

「む?」

考え込んでいると、日和が困ったように声をかけてきた。

「とりあえず、入り口から見える位置で着替えないようにしてみます」

「あ、あ、ああ、そうだな。そうだ。そうしてくれ。それがいい」

壊れたカラクリのように頷く林太郎に、日和は益々困ったような目を向けるだけだった。

「それで……林太郎さん、用事って何だったんですか?」

じっと見てくる日和。

 しかし、それよりも前に林太郎には確認しなくてはならないことがあった。

「その前に――」

「はい」

「責任を取って嫁に取ったほうがいいか?」


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