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前夜

 闇だ。

 闇の中、白いベッドに身を横たえた中年の男性がいる。

 それを心配そうに覗きこむ。

 そうしてから女は溜息を吐き、着物の襟を引き上げた。

「都子様」

ふと、掛けられた声に振り返ると、そこにはガッチリとした体躯に濃緑の軍服を身に着けた、角張った顔の男性が直立している。

 都子と呼ばれた女は大儀そうに振り返った。

「大成かい」

大成と呼ばれた男は敬礼をし、そして朗々とした声を上げた。

「はっ! 本日の”ばあす”もうまく行きました!」

「馬鹿、ここは病室だよ!」

意気揚々と、大きな声で報告する大成に都子と呼ばれた妖艶な女性は怒鳴り付ける。それから、肌蹴た着物の襟を引き上げる。――これは既に都子の癖のようなものだった。都子は、態と着崩しているのだ。白い肌が艶かしく光るが、大成の目には脅えのようなものしか浮かばない。大成は身をすくませた。

――たく、こいつは、男気があるんだが、少々馬鹿でいけない。

 都子が舌打ちをすると、白いベッドに横たわっていた老人が薄目を開けた。

「……大成か」

都子が顔を覗くと老人は微かに笑んで見せた。身を起こすと、都子がすぐに手を背中に差し入れ、老人の手助けをする。

「よい……よいことだ、都子。私は、今は何よりも”バース”の成功が嬉しいのだ」

大成はそれを聞いて嬉しそうに再度敬礼をした。

 都子はもう一度舌打ちをしたい気持ちで老人の顔をさらに覗き込んだ。

――大成が益々付け上がる。

 大成はそんな都子の考えなど気づきもしないように

 嬉しそうに男の名を呼んだ。

「幻冬様!」

喜びとともに呼ばれた声に幻冬は瞳を閉じた。




 闇だ。

 どこまでも、続く闇。

 闇は、まるで人の心を映しているようだ、この東亰の闇を――。

 林太郎は刀についた血を落とした。

 ”うつしもの”が現れ始めたのはいつだったか。

 そして、うつしものが現れたのと、同じくして目覚めた自分の力――

 林太郎は刀を鞘に納めた。

 外套が風に翻る。


――うつしものが現れたため、明治の初めに発布されたという廃刀令は事実上破棄された。より正確に記すのなら破棄されたというより、新しい条例が発布された。

『夜間ニ限リ、帯刀ヲ許可ス。』

 夜間商売を行う者たちの運動により発布された特別帯刀許可条例である。うつしもののような怪物が跋扈する闇の中を丸腰で歩きたがる人間は酔狂者を除いて中々居らず、困ったのは夜の商売を糧とするものたちで、昼日中に営業してみるも客は入らず、中には無許可で帯刀する者まで出る始末。よって、運動が効を奏したというよりもなし崩し的に発布された条例である。

 刀をいまだ持っていた人間は少なかったが、とはいえ銃を持っている人間はもっと少なく、しかもうつしものには刀で抵抗することができる、と市中では噂されていた。……他に有効な手段も見当たらなかったため、奇しくも明治、大正を経て政府が行ってきた近代化とは逆行する形となってしまったが、この条例は渋る政府を押し込むようになし崩し的に発布されたのである。


――大正、か。

 林太郎は目を細める。

 この国民は元号が変わりさえすれば、何もかもがうまくいくと思っていたに違いない。江戸の闇を捨て、西洋化できる、列強諸国に名を連ねる大国を目指す権利を与えられるのだ、と。

 しかしそんなものは幻想でしかなく、事実今でも闇は人々をこんなにも支配している。

 長屋の並ぶ暗い町並みは、今はしんと静まり返っている。

――何も変わらない。

林太郎から見れば、今もこの町は江戸から続く闇に支配されている。だからこそ、人々は脅え、このような条例を発布したんだろう。

 しかしそれは、林太郎”たち”にとって願ってもない条例だった。もはや刀を帯刀し夜闇をうろつく”彼ら”を誰も咎めはしない。彼らのように夜闇をうろつくものは皆帯刀している。前時代の武器――”刀”を。

 そして、”彼ら”人間に目を向けることなく自身は急ぎ足で彼らとは逆方向へ向かっていく。明るい世界へと。人の世界へと。

 林太郎は小さく息を吐き、増援でも来たときのために、”うつしもの”の絶えた先の闇へと目をこらした。――と、その時。

「そっちは!?」

旧家が立ち並ぶ住宅街、その塀の間に張り巡らされた、目鼻の先すらわからないほどの暗い路地。その向こうから足音高く駆けてきたのは林太郎より一回りも二回りも大きい、熊のような男だった。仲間。そして人間。林太郎が問題ない、と短く答えると男は大げさに肩を竦めてみせた。

「なんだ、てっきり苦戦してると思って助けに来てやったのに。損したぜ」

――俺が”退治”をしている中で苦戦をしたことはないというのに、この男はいつだってこのように余計な心配をする。

 無亮。林太郎の仲間、である。まるで熊のような大男で、三十は過ぎているように見える。まだ若く体も出来ていない林太郎からしたら何かと目に余る存在。性格は豪放磊落で何故か破戒僧のような格好をしている。この格好であれば、「何かと都合がいい」らしい。

 とにかく、林太郎は舌打ちをしたい気持ちを堪えて、そんな些細な問題よりも今日の一番の心配ごとを口にした。何故か胸がつかえるようで、中々口に出来なかったのだ。林太郎は小さく深呼吸すると、今日何度も心で誰かに問いかけた質問を口にした。

「それより、”日和”は?」

うまく言えたらしい、無亮は何の疑問も持たなかったようで、少し考えた後、口を開いた。

「日和は今日は土岐宗と組んでるはずだが」

――あいつか……

林太郎は、調子よくへらへらと笑ってばかりいる優男の顔を思い出して、今度こそ舌打ちをした。

「なんだ? 新人のことが心配か、林太郎」

「そんなわけがない」

一転、からかうような口調になった無亮に辟易しながらも言葉を返す。

 心配していないといえば嘘になる。しかし、素直に認めるのは林太郎のプライドが許さなかった。

「俺が指南したんだ。足手まといになるなら俺の責だ。だからであって、それ以上でもそれ以下でもない」

思いついて付け加えると、何故か無亮は闇に向かって破顔した。林太郎はあえてそれを無視する。

「大丈夫だ、ああ見えて土岐宗はすごいぞ」

思考を停止される。

「わかっている」

土岐宗に関して心配なのは剣の腕ではなくて、その性癖なのだが。

――いや、それこそ俺が心配するものでもないか。

 そこまで思うと、林太郎は無亮を振り返った。

「行くぞ」

「つれねぇなぁ」

肩をすくめた無亮を置いて、林太郎は歩き出す。

 天睛の館――林太郎たちの司令塔のいる館へと。


 館に戻ると、公彦が出迎えた。

「ああ、お帰りなさい」

その丸眼鏡を掛けた青白い面、卑屈に曲げられた体躯を見ると、林太郎はいつも背筋を伸ばせ、と言いたくなる。書生のようなくたびれた着物と袴を着込んだ19歳くらいの青年である。

「おう、戻ったぞ!」

無亮は誰にでも愛想がいい。林太郎にはその無亮の気持ちがよくわからない。

「今日は出なかったのか」

「ええ、今日は数も少なかったし……余り体調も良くないので」

林太郎は会話を始めた二人を無視して内部へ向かう。公彦は体が弱く、”能力”はあるものの中々”出撃”することができない。こうして天睛の館でみなの帰りを待つことがほとんどである。

 部屋の奥へと向かう林太郎を、あわてて会話を切り上げたらしい無亮が追いかけてきた。

「おい、おい。あいつも俺たちの仲間なんだから仲良くやれって」

「関係ない」

ぴしゃりと告げると無亮は口をつぐんだ。

 無亮は事あるごとに仲間だ、と言うが、林太郎はそのような馴れ合いは必要ないと思っている。

 ただ、偶然力があって、偶然寄り集まった人間たち。

――ここに集うのはそういう人間だ。

無亮は何かを言いたそうに口を開いたがそれより先に広間に到着する。

 広間には――以前は要人の会合やパーティに使われていたのだろう、二階部分まで吹き抜けのある広い空間だが、いまや大量の機器と、そして”仕事”を終えたらしい人間が屯しているばかりだ。

 一番に目に付いたのは、無亮よりももう一回りほど大きい、傷だらけの男――無亮はそれでもまだ人好きらしく、見るものを脅えさせることはないが、この男は人を寄せ付けない。名を、元兼と言う。

 元兼は広間に入ってきた二人を見て、閉じていた細い目を開くと、一つ、頷いた。まるで威嚇された気がして林太郎は身をすくませる。

「戻ったか」

元兼は一人で戦う。それは彼が人と組む仕事を好まないこと、そして、それを遂行するだけの能力があるということだ。

「おう」

 無亮が親しげに声をかける。まったく、元兼にすら親しげにするのはこの館であっても無亮くらいのものだ。

 林太郎は元兼が羨ましい。そして、それと同時に元兼に近づきがたいものを感じている。この館にいるものはきっとほとんどがそうであるはずだ。林太郎はそれが悔しくもある。もう少し力があれば一人で戦うこともできるのだ。無亮のような”保護者役”をつけられなくても……

 何故か天睛はうつしものの撃退へは二人一組で向かわせる。

 それは任務を確実に成功させるためであり、ここに集まった……力芽生えたものたちを無事に帰すためであると説明されるものの、やはりそれでも林太郎には納得がいかない。広間まで着くと、外套の紐を緩めた、そして自分の着衣を眺める。

 天睛が用意した師範学校の制服。金ボタンがキラリと、”電気”を浴びて光る。その不自然な眩しさに林太郎は眉をしかめた。”電気”の光は苦手だ。なじまない。その電気に照らされても、尚暗い闇色の服。”制服”。天睛の館に来るまではこんな服を着るなんて想像もつかなかった。林太郎は金ボタンを意味もなくいじくった。

 元兼は林太郎よりもボタンや装飾の多い服装を着ている。”軍服”と呼ばれるものだ。何から何まで、林太郎の上を行くかに思われ、林太郎にとっては元兼の服装も、自分の服装も好きにはなれなかった。

「みなさん、お疲れ様です」

 その時、”機械”をいじっていた青年が顔をあげた。

 暗がりの中ですら尚光を放つかと思われる美青年、影鴇は機械に向かって難しそうな顔をしていたはずなのだが、皆に話しかけるときは柔和な笑顔になる。本人曰く、”癖”らしいのだが、彼の任務の性質上あながちそれも冗談ではないと思われた。

 影鴇はいつものような忍装束ではなく、普段のズボンにシャツ、それにサスペンダーという、まるで英国の少年のような格好だ。

「いやぁ、本当にお疲れ様だね! 諸君!」

 そう声だけで皆を迎えたのは”探偵”花園梅丸。

 あまりに不遜な態度ではあるが、全員がすでにそれに慣れている。花園に対して怒る、などと無駄な労力を使うものはいない。

 花園は影鴇の横で興味深そうにそれを見守っていた。明るい茶色の癖毛が「ふーむ、なるほど!」「ほら、光っているよ!」などと独り言を呟くたびにフワフワと揺れる。猫のようにくりっとした目はいつも見開かれ、ランランと光っている。鼻梁も通り、喋らなければ中々の好青年であるはずなのだが、喋った瞬間に女性は彼の元を去る。そして極めつけはその格好である。英国の派手な外套、そして”ハンチング”と呼ばれるらしい帽子を目深に被っている。

 花園は、言動・服装ともにかなりの変わり者であるのだが、その出自すらも一風変わっていて、帝国大学をでた後探偵になると言って家から飛び出し、放浪していたところを拾われたらしい。

 帝国大学を出た、といえば秀才であり家が裕福だろうと思うのだが、なぜ放浪するようなことになったのか林太郎には理解できない。

 ……帝国大学出ちえば出世コースであり、官僚だろうと何だろうと自由になれるはずだが……。

 花園は普段の言動も理解できるようなものではなく、馬鹿みたいに陽気で、喧しい。周りと距離を置く林太郎に気負わず話しかけるのは無亮と花園くらいだ。とはいえ、花園とは違い、無亮の生い立ちなどは林太郎は知らない。花園くらいが、自分の出生を誰彼かまわず話すため、皆、花園の出自は心得ている。

 しかし、誰がどんな生き方をしてきたかすべて熟知している人間はいないと林太郎は考える。それは単純に興味がないこともそうであるが、知っても意味が、ないことだから。ただ、戦うために集められた集団。

 その思想がどこを向いていようと、目的が何であろうと、それは些事だ。

「……ところで、何を見ている」

普段なら気にも留めない事であるが、今日は”日和”が出陣している。

 もしやこの二人が集まって計器を眺めているのはそれに関することではないか、と思ったのだ。

「ああ、林太郎さん。いやね、それが……指定された零地点の掃討はすんでいるのに、まだ土岐宗さんが戻らないんです」

……やっぱり、予想は的中した。

「新しい”敵”が出たわけではなく?」

一応聞いてみるが、影鴇は真面目な顔で首を振り、つるりとした探索機の表面を撫でた。

「それならこの探索機が反応するはずです」

……探索機は、この集団の司令塔である夏野天睛が作ったものらしい。どのようにできているかは知らないけど、何かと重宝する。天睛が常々自分で言うように、確かに天才なのだろう、と林太郎は評価している。

「新しい反応はないんだ」

花園が自分の手柄のように言う。それを無視し、探索機を覗き込む。手を開いた程度の大きさの硝子のようなものがはめこまれている、その下には見慣れた東亰の地図がある。――このように、地図として示されると不思議な心地がする。自分のいる場所がとてもちっぽけなものに思えて、何か嫌な気持ちがする。

 変なめまいがしたため、林太郎は地図から目を離した。そして、”電球”に注目する。

 あらかじめ割り振られている地域の中に敵が現れると、その地域の豆電球が点灯する。

 ……なにやら、「気」だの、「エレキテル」を利用しているようだが、林太郎は何度聞いても理解できない。二人が向かったのは零地点。その周囲も、この館周りも点灯はない。いや、東亰すべてが今夜はとりあえず、もう平和なようだ。

「どうしたのだろうなぁ」

無亮が地図を覗き込んだので林太郎は離れた。元兼は考え考え言葉を発する。

「土岐宗がいるから、大丈夫だとは思う。敵も殲滅されていることだし――しかし、あの新入りの生っちょろい腕では――」

新入り――”日和”。

 ある日、天睛が連れてきた少年。

 ”力”はあるが、記憶をなくしている。(それによって探索に引っかからなかったのでは? と天睛が言っていた)

 ……ということになっている。

 しかし、その実――

「いやぁ、待たせちゃったみたいだね」

林太郎がそこまで考えたところで突然、へらへらと土岐宗が入ってきた。時代錯誤の着流しのような格好で、顔は薄ら笑いを浮かべている。土岐宗は周りの人間から一目置かれているが、林太郎にはその理由がどうしてもわからない。正直、林太郎自身は自分のほうが強いとすら思う。その後ろから顔を覗かせたのは日和だ。

「ごめんなさい。皆さん、そろっていたんですね」

「悪いね。ちょっと、甘味どころに寄ってたんだ」

「僕は止めたのですが……」

日和は、女のような顔を項垂れさせた。黒い髪が電気に透け、あわく茶色く流れた。薄い色の袴に目立った傷がないことを確認して、ようやく林太郎は息を吐く。なるほど、日和がよかったのか、土岐宗の支持が上手かったのか、日和には目立った外相はなかった。

――ち、違うぞ、これは単に俺の教え方が正しかったのかどうか確認しただけであって……

 林太郎は頭を振り、その考えを押し出した。そしてこれ以上余計なことを考えないように考えをめぐらせる。

 ”彼”は、土岐宗のお気に入りになっている。それは、”彼”があまりに女人らしい顔立ちをしているから――しかし、それにしてもこの時間の甘味どころ。――全うな所ではないと思うのだが。

 何故かもやもやと晴れない心を林太郎は押し込んだ。それ以上考えるのは今はまだそこまで手が回らない。

「揃ったかい?」

全員が無事帰ってくると現れるのが天睛で、この館の主人で、この集団の司令塔である。天睛が現れることに意味は特にない。ただ、全員の無事を全員で確認して解散するというだけだ。

「今日もご苦労様。――それじゃ、お休み」

今日もその通り、すぐに解散となった。


 夏野天睛はもともと、爵位をもつ家柄の人間なのだが、天睛の父の死後、館を継いで遺産で好きなように趣味の発明をしていたそうである。その当主に周りの親戚筋はいい顔をしなかったようだが、本人はそんなことどこ吹く風であったそうだ。

 しかし、その親戚筋も”うつしもの”の登場により、天睛の評価は変化させる。その時逃げ惑うしかなかった人々とは真逆で、彼は闇に立ち向かっていった。

 その時発明してた物を使い、”うつしもの”の現れる場所を適宜予言した。

 その正確さに一時は天睛の仕業ではないかと疑われたこともあったようだが、天睛は気にせず、泰然とうつしものに対抗していた。

 そして、”うつしもの”の出現と時を同じくして、対抗する力――うつしものを滅することができる力を持つものが現れた。

 その出現をも当て、着々と対抗できる人物を増やし統率し始めた天睛を悪く言うものは、表にはいなくなり、町の人間も天睛を頼り始めた……


 林太郎は部屋へ戻る道すがら、そんなことをつらつらと考える。

 それにしても、”うつしもの”は、何だろう。倒しても倒しても出てくる上に神出鬼没な存在。不可解だが、人に害をなす存在……

――…まぁ、そんなこと気にしても仕方ない。俺は、切るだけだ。

 腰の刀、”煌光丸”を見る。

 この刀が今、東亰を、そこにすむ人々を救っているとは皮肉なものだ。


「あ! 林太郎サン!」

宛がわれている一室まで来ると、日和が後ろから慌しく駆けてきた。

「ああ」

応えると、日和は笑った。

 よく笑うやつだと、林太郎は思う。

「お前、今日、大丈夫だったのか」

「え?」

日和は首をかしげた。

「だから。土岐宗」

それですべて察したらしく、ああ、と困ったように日和は笑った。

「平気です」

土岐宗は、日和が現れた瞬間から、「ここにもついに花が」などと大騒ぎだ。

 もともと女好きらしく(元兼はいつも眉を潜めている)、”まるで女のような”日和をやけに気に入っているのだ。

 日和は確かに、周りの能力者よりも体が小さく、華奢だ。

 それには理由があるのだが――

「ちっとも疑っていませんよ、土岐宗さん」

それより、明日の朝稽古つけてください! と笑う日和は泣いてばかりいた時とはまったく違う。

 もともと前向きな性格なのだろうか。

 それにしても、馴染みすぎではないのか。

「では、お休みなさい!」

にこ、と笑った日和は踵を返し、日和に宛がわれた部屋に向かう。

 その小さい後姿を眺めていると、不意に日和に出会った日のことを思い出した。


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