徒歩
前回の続きです。
森の奥深くに建つ木造の一軒家、せっせと身支度していた男性ジェフトの元に、朝食を食べ終えて少女ニナと一緒に遊びに行っていた人狼ルフトが顔を出す。
「え?もう協会から召集がかかったんですか?」
「君たちが出かけた直後に伝書鳩がきてね、どうやら占い師が数日前からなにか感じていたらしい。このまま返事を返すより直接言って報告した方が手っ取り早いし挨拶しに行ってみようか。」
「はぁ…。別にそれはいいんですけど…。今からですか?」
「協会まで馬の足でも数日かかるし早い方がいいね、昼ご飯は食べ物が腐ると面倒だしあるもの全部食べちゃおうか。」 「全部ですか!?」 「元々2人分で残り少ないからみんなで食べればそんなに量はないよ。」
ジェフトさんが昼ご飯を作る間、家の近くで遊んでいるニナへの説得を頼まれた。(説得とは…?)と考え、ニナにはこれから何処にいくのかも説明しているとニナの顔色が変わっていき「いやだっ!!」とジェフトさんの元まで届きそうな大きな声で叫んだ。
「しょうがないだろ?色々問題起こしたんだし、」 「ぜったいいやだ!!」
ニナが大きく腕を広げ、空中に円を描く動きをしながら文句を言ってきた。全身を使ってまで嫌な気持ちを表現していることを評価してやりたいが…。
「決定事項なんだ、いくぞ」 「わんわんのいじわる!!」
「オレが決めたことじゃないの!」 「いじわるううう!!」
「意地悪じゃない!!」 「わんわんのばかああああ!!」
「!! 馬鹿っていうなよ!!」 「ばかああああああ!!」
そんな口論をしていると昼ご飯を作り終わったのか、見ていられなくて出てきたのかジェフトさんが出てきて、
「ごめんな、ニナ。これだけは逆らえないんだ。君ならわかるだろう?許してくれ。」
それを聞くとニナは拗ねた顔をし、少し目が潤んでいた。ここまで愚図られると少し罪悪感が生まれるが、ニナは諦めて協会に行くことを許してくれた。
朝食をとった場所と同じ場所で昼ご飯を食べることになった。残念ながらまた明るい雰囲気ではなく、朝のような静けさとは少し違った。音があるとすれば森にいる小動物たちの声や音と、食器がこすれる音ぐらい、ニナの方からは食べ物を食べるときに発する音とは別に、食器で遊んでいるような音が聞こえてくる。
「…ニナ、食器…?で遊ぶなよ、傷がつくからさ…?」
所々に疑問符がついてしまうのは、これが食器というものだとさっき知り得た情報で、自分もうまく扱えてないためどうしても自信が持てない。
「…わんわんもおとすごいじゃん…。」
一番突かれたくないところを突かれてしまった。声のトーンや行動から「まだ行きたくない」を全身を使って表現していることを察した。
「そんなに行きたくないのか…」 「後で君もわかることになるだろうけど色々事情があってねぇ…。ボクが出来ることは謝ることぐらいかな…。」
昼飯を取り終えて身支度を開始した。と言っても自分が用意できるものはなくジェフトさんを待つことになった。
「ニナ、街にでるから支度して、」「…ん。」
不機嫌なニナが答えジェフトさんの元へと元気なく歩いていく。はて?何かあるのか?、と少し記憶をさかのぼらせてみる。
確か協会からの命令で街に出るときは何らかの処置が必要とか言っていたか?
服装を着替え終わったジェフトさんを先頭に家から出てきた。衣服はしっかりとしていて学者と言う雰囲気を出させている。そしてニナの姿をみて協会に行くの嫌がる理由がわかった。
頭がすっぽりと被さるように目立つ赤色の頭巾、髪は外に出さず衣服の中に隠されて、口元を見せぬように巻かれた布、布の下には呼吸が苦しくなるような鉄の網上のマスクがされていた。
「…本来は手を縛るように言われているけど、ニナの負担を減らすってことでボクの手を握って移動をするようにしてる。」
「この重装備は異常では!?」
「う~ん…、前にも話したけどこれでもニナの処遇についてだいぶ軽減してもらったほうなんだよ。」
「この一式装備しないで街に出た事がバレたら協会側から処分されちゃうし…。」
ニナは黙り込んでジェフトさんの手を握ていた。その手は少し震えていて、今まで見てきた自由気ままな彼女とは打って変わりおとなしかった。
「…協会に文句いいたくなりました。」 「文句言ってここまでにしてもらったよ。」
家から街までは徒歩で数分の距離だった。街は活気に満ち人が大勢いた。人の背格好をみるに自分は結構背丈がある方だと確認できた。街についてすぐに協会がある都市まで行く馬車を探す。ニナは街に着いてからはだんまりで下を向きながら、ジェフトさんの歩幅に合わせようと頑張って急ぎ足で歩いていた。
数日の宿代や食事代の事を考え、都市行の商人の荷台にのっけて貰うのが一番だったが、何故かどこも煙たげにあしらわれてしまった。街の人たちの視線が痛い、それもそのはずで目立つ格好をしたニナと一緒だからか。でもそれだけでこんなに見られるだろうか?避けるように人波が分かれ、道を歩きやすいと言えばいいが…。
「…ニナが召集された時暴走したって言っただろう?、幸いな事に問題を起こしたのは街ではないが、ここから近い街でね、その噂が流れているんだよ…。」
ジェフトさんが耳打ちで話しかけてくれた。なるほど、いつ問題が起こるかわからない人物を大事な商品と一緒に運びたくない訳か。それでもこちらも急いでいかねばならないので依頼を頼むしかない。
「都市に行きたい? 代金さえ払ってくれれば構わないよ。」
そう答えてくれたのは馬車の主人だった。数人が乗れる馬車にすでに乗っていた客たち数名が主人がそう言っているのを聞いていたのかせっせと降りて行った。
「代金はいらん! さっさと出ていけ!!」と威勢のいい言葉で見届けていた。
「お客さん運がいいな、どうやら貸し切りのようだ。」
「でもなぁ、お客さん。乗車賃がないと乗せられないよ。」 「え?」
「足らんよ、お嬢ちゃんに旦那はいいがそこの青年の分、彼も連れなんだろう?」
「足らないんですか!?」 「まけてくれないかな…?」
「ん~、こっちも商売だしな、これ以上は無理だな。」
「どうするんですか!?」
その一部始終をみていたニナがギリギリ聞こえる程の小さい声で
「…わんわんが、はしればいい。」
「え!?」 「…そうしてもらうしかないかな…。」 「何か売るとか!!」
「しばらくオレの飯抜きでいいから!!」 「君一人のご飯代では足りないんだよ…。」
「ここから都市までは3日、3つの街にかけて移動する、馬の体力考えて夜までには次の街についておきたい。この街から次の街まではそう遠くないから今日中に着くだろうな。馬の脚では。」
「え!?」
「盗賊とかの問題は一応国道だから多くないはずだ。道は分かれているところがあるが基本一本道だ。とりあえず街を目指して走ってこい。」
「え?なんかないの??」
「ルフト君頑張ってくれ、君ならついてこれる。」
畜生が!!
→最初に
読んいただきありがとうございました。
続きの話は前回のような連続の投稿ではなく、2週間後の予定です。
(Windows10の魔の手がかからない内に書き上げたい。)
→色々
コメントやブックマークの登録ありがとうございます。話の構成など、文章の問題など色々ありますが、徐々に直しご期待に沿って行きたいです。
また何かありましたらコメントなどで教えて頂ければ幸いです。
(コメントの返信速度を上げていきたい。)