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戯曲『百合の花を』

ヤマなし、オチなし、意味なし。戯曲っぽいのを書こうとしてこうなった。不条理っぽい話です。

 どこかの学園にありそうな机が置かれている。その上に、百合の花が入った花瓶が置かれている。その席にいた人が死んでしまったみたいだ。机と花瓶をスポットライトが照らしている。

 女1と女2が現れる。机を挟み込むように立ち、花瓶を見つめる。彼女達にスポットライトが当たる。

 女1が、ゴミを見るような目で言う。


【女1】「彼女、死んだって?」


 女2は、机の上の百合の花を優しく撫でながら、僅かな沈黙の後にボソボソと答える。


【女2】「遠い、遠いところに行ってしまったの」


 女1は、女2を鼻で笑うような仕草をする。


【女1】「遠いところ、ねぇ。……それって、あの世? それとも、地獄?」

【女2】「天国」

【女1】「天国? けっ、笑わせないでよね。彼女が天国なんかに行けるわけないじゃない。あんな欠陥的人間が――」


 女2が激昂する。


【女2】「黙って!」


 女1は、へらへらと軽薄な笑みを浮かべている。


【女1】「黙らない」

【女2】「このレイシスト!」

【女1】「人を平等に落とし込もうとする、あんたと彼女の方がレイシストのような気がするんだけどね」

【女2】「黙ってって言ってるでしょぉ! 顔面ミンチにするよ!」

【女1】「そうなったら、元より良い風に整形するよ!」

【女2】「だからっ……!」


 女2は、何かを言おうとして口を噤む。息苦しそうな顔をする。これ以上、どんな事を言えば良いのか何もわからなくなったからだ。それに、女3に、これ以上、自分の言葉を捧げる意味はない。

 女1の口元が、ぐにゃりと歪む。


【女1】「あんたの知ってる彼女。あたしの知ってる彼女。どうやら、違うみたいね。でないと、こんな相互不理解なんて起きないもの。いいわ、教えてあげる。彼女はね、おかしいのよ。同じ性別の女に欲情するのよ。男に興奮できない可哀想な人なのよ!」

【女2】「違う! 彼女はそんな……」

【女1】「あんたは、彼女に犯されたじゃないの! ゴミみたいに! 使い捨ての奴隷みたいに! 嫌だ嫌だって反抗しながらも、犯され続けて! なんで、彼女を庇えるの!? あんなの死んで当然だってのに!」

【女2】「私は確かに彼女に犯された。でも、それが何だって言うの? それに、彼女を庇うのは私の意思――」

【女1】「そうだ! きっとそうだ! あんたも、彼女も病気になってしまったんだ! ストックホルム症候群で、頭の中シャカシャカとシェイクされたんだ! そうに違いないんだ! それが本当の事なんだ!」

【女2】「ストックホルム症候群って、多分、そんなのじゃない!」

【女1】「知らんね! でも、それっぽい言葉だろうが!」

【女2】「無知!」

【女1】「あたしが無知なら、こうしても責めないで!」


 女1が、百合の花を掴んで引き裂く。ぐしゃぐしゃと花が潰れる。


【女1】「彼女は死んだ! 死んだんだ! ざまあみろ!」


 女1は、叫ぶだけ叫ぶと、花を地面に叩きつける。

 スポットライトが消える。女二人は撤収。花瓶も撤収。代わりに、写真入れが置かれる。

 女3がやってきて、潰れて叩きつけられた百合の花を手に取る。無表情で。

 女3にスポットライトが当たる。


【女3】「ねぇ、百合の花言葉って知ってる?」


 潰れてしまった花を、『あなたたち』の方に掲げる。


【女3】「純潔と、無垢と。……でも、わたしは」


 女3の顔が、悲しげに歪む。

 そして、その手に握られていた花を、もう一度握りつぶした。

 写真入れが、パタリと倒れた。



 ――幕。

生前の彼女は、どういう気持ちで二人に干渉していたのでしょうか。

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