友情編 壱
僕は久々にこの町を訪れた。
「いやー、やっぱ何時みても咲の家は広いなー」
僕は十三年ぶりに自分が生まれた町に帰ってきた。
僕の名前は大樹と書いてたいきと読む普通な名前の男の子だ。
早速呼び鈴を鳴らしてみた。
『ピンポーン』
大きな音が外まで聞こえてくると咲のお母さんが出てきた。
「いらっしゃい、大樹君」
扉をあけて僕を迎えに来てくれた。
「あれ、咲は?」
「いえ、会ってませんけど」
「すれ違ったのかしら、さっき迎えに行かせたんですけど」
と咲のお母さんはちょっと困った顔をしていた。
「いいわ電話するから入ってて頂戴」
と言われて僕は素直に入った。
玄関には豪華な玄関マットが敷いてあり隣のスリッパ立てからスリッパを一つ拝借して僕は家の中へと入っていった。
「おじゃましまーす」
と言い僕は廊下に足を踏み入れる前に解放してあった扉を閉めた。
その家は昔僕が遊びに通っていた家で勝手知ったる家だった。
咲のお母さんもそんな僕を息子の様に接してくれた。
そして、それは日常の始まりを告げるものだった。
リビングはずっと前に来た時とまったくもって変わっていなかった。
思わず懐かしさを感じるあまりほんと変わってないのだろう。
「本当にリビングは何時見ても綺麗ですね」
「何よ、リビングだけなの」
そこには、咲がいた。
「あら、咲帰ってきたの」
「うん、こいつったら待ち合わせの場所に来なかったのよ」
「え、待合い場所って駅だろ」
「は、何言ってんのよ。メール送って公園にしよって書いたじゃん」
「嘘だろ」
僕は後ろポッケに入ってた携帯を抜き出して確認した。
「げ、マジだ。すまねぇ」
「もう、いいわよ。そんな事はさておきお帰り」
「あぁ、ただいま」
「そうね、今日は大樹くんがいるし夕食は豪華にしましょう」
と言って咲のお母さんは台所へ行った。
「咲、二階で大樹君と待ってて」
「えぇ、大樹と一緒なんて嫌よ」
咲は相変わらず人の事を何だと思ってやがんだコラ。
「私、お母さん手伝うよ」
「何、言ってんのよ。久々に大樹君が家に遊びに来たのよ。仲良くやりなさい」
「お母さんがそう言うなら、仕方ないわね。大樹、上の私の部屋に来て」
「おう」
そう言って廊下で咲と咲のお母さんの話を聞いていたので階段から二階へと上っていった。
二階の渡り廊下の階段よりの左側の一番部屋がトイレで
右に曲がってすぐの部屋だった。
昔と変わらず、扉に画鋲を刺した上にプレートの紐をかけ、プレートにはローマ字でSAKIとコルクがついている木のプレートだった。
ガチャ
扉は押し扉でドアノブを捻って押した先にある咲の部屋は暗くて良く見えなかったが綺麗に見えた。
「ちゃんと、掃除してんのな」
階段を上っている途中の咲に話しかける。
「何、勝手に開けてんのよ」
咲が階段を駆け上がって、扉を閉める。
「危ねー」
実際危なかった。手が部屋の電気を付けようと入っていた時に駆け上がってきたから手を抜いた物の後数秒そのままだったら手が挟まれていた所だったろう。
「勝手に女子の部屋覗くな」
「何言ってんだよ。お前が部屋に来いって言ったじゃねぇか」
「それはそれ、これはこれ」
「何だよ、それは」
「うっさいわねー、とりあえずここで待ってて」
廊下に僕を置きっぱにして自分は部屋に入ってごそごそしていた。
扉越しに何か声が聞こえた気がした。
「何か言ったか」
「ううん、何も言ってな・・・キャー」
「どうした」
バサッバサッ
僕は焦ってドアノブを回し中を見た。
「見るなと言ったでしょ」
「えっと、あっとすまなかった」
中では下着の整理をしてた時に違う引き出しが上から落ちて咲が上から服を被ってた。
「早く閉めてよ。恥ずかしいじゃない」
バタン
扉を閉じる。中から『最低』という、声が聞こえる。
何分か待ってると中から『もう、いいわよ』と言う声が聞こえた。
なので、扉を押し開けると本当にスッキリと片付けられていた。
「部屋、本当に綺麗に整理してんだな」
「もう、いいわよ。どうせ心の中で笑ってるんだから」
「いや、そんな事無いよ。だってこんな短時間では僕の部屋はこうも片付かないよ」
「ありがと。ほめ言葉として受け取るわ」
「そういや、この家来るの何年ぶり?」
「さぁ、分からないわ。でも、大樹がいなくなってから十三年たってるわ」
「そうか、十三年か僕はまだ小学生にもなってなかったもんな」
「そうね、幼稚園の頃はよく遊んだわね」
「そうだな、その時より咲は成長したもんな」
「大樹だって」
「さっき、咲を見た時本当に咲かとびっくりした位だ」
「何言ってんのよ。写メ送ってたじゃん」
「それは、そうだけど」
僕はゴロンと大の字に寝た。
昔はこの部屋を羨ましく見てたよ。
「大樹はよく大の字で寝てたね」
「おうよ。咲の部屋でこれをやるのが日常だったしね」
「明日から、同じ大学の大学生だね」
「そうだな。もっと早くこっちに来てくれば良かった」
「そういえば、課題やった?」
「おう、もう終わったよ」
「え、本当分かんなかった所あるから教えてくんない」
「あぁ、いいよ。飯食った後な」
僕と咲は色々話をした。
下らない事ばかりかも知れないがそれだけでとても有意義な時間を作っていた様に思う。
「晩ご飯できたわよ。降りてらっしゃい」
と咲のお母さんが咲の部屋へと入ってきた。
慌てて座り直したが、別に怒られはしなかった。
いつも、そうしていた事を知っていただろうし。
幼稚園の時から良く通っていた頃を知っているし、僕は幼稚園の頃からそうしてたしね。
あぁ、なんておっさん臭いんだろう。
僕と咲は、咲のお母さんと共に階段を降りて席に付くとテーブルの上には豪華な料理があった。
「お母さん、これ一人で作ったの?」
咲がこれほどビックリしているのだから、多分いつもより凄いのは確実であろう。
「おいしそうですね」
「ええ、腕によりをかけたわ」
咲のお母さんは自慢したげにしていた。僕は待ちきれず席に座り
「いただきます」
と言って箸をとりバクバク食べた。
「あっ、ずるい私も」
と言って咲も席につき箸を取ってご飯を食べた。
食事は何なく終わった。
そして、僕は今日からこの家にお世話になるのだ。
ご飯を食べ終えて、咲の宿題を見る事になった。
僕は昔この町に住んでいた。
だが親の関係でこの町を離れていたが、僕は帰って来た。