断じて盗み聞きではありません
ダーシーはその日、騎士科にいる婚約者に差し入れに来ていた。
「コニー、休憩か?」
「ああ。そろそろダーシーが来るしな」
鍛錬場の近くで聞こえてきた声は、コニー・アンドレー、自分の婚約者のものだった。ちょうどいい時間のようだと笑みを浮かべたとき。
「お前の婚約者ってさ、ちょっと重くねえ?」
決して盗み聞きするつもりはなかったことだけは、言っておきたい。ただ、自分の話題だったから、つい立ち止まってしまったことと、その場から動けなかっただけなのだ。内容が内容だったし。
え? 重いって、まさか…。
「重いって何が? まさか体重? 失礼にもほどがあるぞ」
「ちっげぇよ! 大体、お前の婚約者、細身じゃねえか!」
あ、よかった。太ってるとかそういう話じゃなかった。ほっと胸を撫で下ろす。
「そう、僕のダーシーはスタイル抜群……まさか、邪な目で見てんじゃ、」
「違うっての! 睨むな! こえええよ!!」
「んじゃ何?」
「いや、毎日差し入れ来てんじゃん?」
「ああ。それが?」
「しかも作ったのは料理人じゃなくて、手作りだって?」
「だから何?」
何だろう? 手作りが悪いのかな?
料理人に教わって作ってるし、味見もしてるし、コニーは美味しいって言ってくれてるけど、何か問題なのかな?
物陰でダーシーは首を傾げる。
「昼も一緒だよな? 朝も帰りも」
「別に婚約者なら普通だろ」
「休日も会ってるって」
「普通だろ」
「鍛錬以外は婚約者と一緒ってことだよな? 身の回りのそれもプレゼントつってたよな?」
「だからそれが何だっての」
「いやだから、重くねえ?」
「…ああ、そういう意味」
え、どういう意味???
「普通だろ」
「普通じゃねえよ! お前、婚約者できてから付き合い悪くなったって言われてるの知ってんだろ?!」
「婚約者と一緒にいて何が悪いんだよ」
「限度!!!!!」
「いいだろ、まだ手を繋ぐくらいしかしてないし」
「それは節度!!」
「あーはいはい。つまり淋しいから、たまには俺たちにも構えって話ね」
「ちっげええええええ!!!!!」
コニー、付き合い悪いとか言われてるの? 私のせいで友人たちに悪く言われてるの…?
自分のせいで大好きなコニーがと思うと、ぐるぐると眩暈がしそうになる。
「別に、ちゃんと予定組めば、僕だって付き合うことに否やはない。お前ら、いつも急に言ってくるだろ?」
「それで毎度埋まってるってどういうことだよ?!」
「優先順位は、ダーシーの方が上に決まってるだろ」
きっぱり言い切ったコニーの言葉に、もしかしたら無理してるんじゃと思ったダーシーの視界がクリアになった。
「……ちょっと確認していいか?」
「どうぞ?」
「お前、無理して婚約者に合わせてるわけじゃないの?」
「なんでそう思った?」
「そりゃ空いた時間、ずっと一緒にいたらさぁ…」
「僕が一緒にいたいからいるだけだけど?」
ダーシーは僕のために、一生懸命料理を覚えて作ってきてくれてる。
いつも自分に何かできないかって努力してる。
リスみたいな小動物じみた所作も、笑ったところも、可愛くて仕方ないよ。
両親が決めた婚約者だけど、そんな彼女が僕は大好きだし、一緒にいたいと思ってる。
大体、まだ成人してないから手を繋ぐくらいしかできないけど、本当は抱き締めたいし、それ以上も…。
その辺りで静かにダーシーは来た道を戻った。
顔が熱い。
きっと真っ赤になってるだろう。
自分が思っているより、婚約者に想われていると知り、顔が緩むのを必死に堪えて。
落ち着いた後に、改めて鍛錬場に向かった。
「今日は何だか、いつもより機嫌がいいね? いいことでもあった?」
「何でもないの」
うふふ、と笑うダーシーに疑問符を浮かべるコニーだった。
了
真面目に不具合が多くて(#^ω^)(#^ω^)(#^ω^)
投稿すらできないんですが(#^ω^)(#^ω^)(#^ω^)




