メイドさんから見た、恋の混戦模様。その1
この世界へと召還されてきてから数日経つ。
午前中は葵と一緒に、この世界のことを勉強することになった。
歴史や情勢などを学ぶ必要性を感じたためだ。スタートは一緒だったのに葵との差は直ぐについた。学ぶ意欲が違うから当たり前だけれど。
元々葵は福祉関係の仕事に就きたいと勉強を頑張っていた。
だからか、この国の問題の一つに孤児院の在り方があると聞いてからは葵は一層勉強を頑張り出したのだ。
やはり何らかの理由で子供を捨てる親はこの世界にもいるらしい。
その事実に胸が痛くなるけれど、厄介者扱いされたり虐待されるよりはマシなのかも知れない。
私達は鍵っ子だったけどちゃんと愛してもらっていたから、想像しか出来ないけど。
私はその子達にも家庭の温かみを知れるように、里親制度を充実させたり、保育士制度を作ればいいと思っただけだけど。
葵は適性にあった職業訓練をする事を主張した。名産品を作らせ販売する第三機関が必要だと。
作らせる名産品も何でも良いわけじゃなく、それが生涯の職に就けれるような物をと。
今までは孤児院の出身だと下働きに働きに出るしかない子が大半だったそうだ。
それ以来葵は孤児院の視察と名産品探しで走り回っている。
私はお茶の用意や、子供達へのお菓子作りくらいしか手伝えること出来なかった。
◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆
私が侍女になったのを、葵は未だに良い顔をしていない。
けれど、「葵と一緒に居るために、ここに住ませてもらっている代議名分が必要だから」と無理矢理言い包めている。
私はあまり役にたつことは出来ないけど。何をするでもなく、ただぼうっと部屋にいる事も出来ない。
だから、これくらいはと葵が出かけている時は自分の部屋の掃除を手伝っているんだ。
「そんなことはしなくて良い」とフェルディさん達は言ってくれてるけど、一応侍女の立場なのだから遊んでいるわけにもいかない。
今日はレオニールさんのお仕事のお手伝いとして、雑用を申し出た。
といっても、私じゃお茶の用意くらいしか出来ないんだけれども。
そうそう、葵は今日、アランさんと二人でお出かけ中なのです。といっても目的は視察だけど。
お互いのことが判り合うようにと三人の邪魔をしないことに決めたんだ。
葵には幸せになって欲しいもん。
だけど、アランさんはあいかわらずちょっと意地悪。
最初の出会いからして印象悪かったせいか、地味な女は視界にも入れたくないのか、
葵を迎えに来た今朝だって、葵には笑顔で挨拶したのに私には「ああ」と冷たかったんだよ。
レオニールさんは何時もちゃんと私にも挨拶してくれるのに。
もしかして私が邪魔をすると思っているのかな?
葵のことを見てくれるなら、ちゃんとどっちも応援するのに。
やっぱりアランさんは、私のこと、…嫌い、なんだろうか。ちょっと悲しい、な。
あー駄目だ。暗くなっちゃう。嫌われてるなら歩み寄る努力をすれば良いだけだよね。
葵が選んだ人が義弟になるんだし。
そうそうそうだよ。葵のためだよ。お姉ちゃんは頑張るよ!
うんうんと頷き一人で無理矢理完結する。
無理矢理にでも何らかの理由をつけて、納得したかっただけかもしれない、けれど。
◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆
コンコンとノックをし扉を開ける。
フェルディさんとレオニールさんの執務室はもちろん、お茶入れのために厨房までの道のりは覚えました!
その他の場所へは…まだ行けれない。絶対迷う。…知らないところで迷子にはなりたくない。
「レオニールさ…ま、お茶の用意が出来ました」
いつものようにレオニールさんと呼びかけそうだったけど、敬称を言い直したのは先客が居たから。
レオニールさんと近い方達なら、顔見知りになれたから"さん"付けしてたとしてもあんまりとやかくは言われないんだけど。
私は侍女の格好しているから、人前で気安くなんて出来ないよね。
失礼に当たらないように、ちらりと観察する。
お客様は二人。身分が高い人達なんだろうなと一見できるくらい上質な生地を纏い、オーラをかもし出しいてる、ナイスミドルな二人。
黒髪と金髪の格好良いおじ様だわーーって。あれ?
あまりにもぽかんとした顔をしていたのか、
「ーーああ、父だよ。私とアランのね」
とレオニールさんがくすくすと笑いながら教えてくれた。
やっぱりそうですか! レオニールさん達の未来の姿はこうなるのね。
渋みが増してこれが大人の魅力って感じ。似てる似てると思わずまじまじと見てしまう。
こうしてみるとレオニールさんは言わずなしにも格好良いけど
黙っていればアランさんもやっぱり格好いい、よね。うん。
長くなりそうなのでその1として投稿しますね。