さようなら、と言えなかった朝をもう繰り返さない
最終エピソード掲載日:2026/03/14
将軍の妻は、三十三回目の見送りの朝に笑顔を作れなくなった。
夫の荷物の中に副官の手紙を見つけたから、ではない。
口角を上げようとした自分に気づいてしまったからだ。
一度見えたものは、もう見えなかったことにはできない。
離縁届を携えて訪れた法務官の書房で、不器用な男と出会う。
書類の最後の一行にだけ、法の言葉ではない文を書く男。
彼が嘘の下手な人間だということだけが、ここ数ヶ月の唯一の収穫だった。
将軍邸は妻が去った翌日から静かに崩れ始める。
帳簿も社交も商人の信頼も、すべてはたった一人の女が回していた。
けれど彼女は振り返らない。
笑顔という蓋を外した胸の中は、空だった。
空なら、これから自分で選んだもので満たせばいい。
「さようなら」の反対語を、彼女はまだ知らない。
夫の荷物の中に副官の手紙を見つけたから、ではない。
口角を上げようとした自分に気づいてしまったからだ。
一度見えたものは、もう見えなかったことにはできない。
離縁届を携えて訪れた法務官の書房で、不器用な男と出会う。
書類の最後の一行にだけ、法の言葉ではない文を書く男。
彼が嘘の下手な人間だということだけが、ここ数ヶ月の唯一の収穫だった。
将軍邸は妻が去った翌日から静かに崩れ始める。
帳簿も社交も商人の信頼も、すべてはたった一人の女が回していた。
けれど彼女は振り返らない。
笑顔という蓋を外した胸の中は、空だった。
空なら、これから自分で選んだもので満たせばいい。
「さようなら」の反対語を、彼女はまだ知らない。
第1話 三十三回目の朝
2026/03/14 12:10
第2話 法務官は嘘が下手だ
2026/03/14 12:10
第3話 笑顔は、もう返品します
2026/03/14 12:10
第4話 逆方向に歩き出した私へ
2026/03/14 12:10
第5話 家法という名の鎖
2026/03/14 12:10
第6話 戻りません
2026/03/14 12:10
第7話 枯れた花瓶
2026/03/14 12:10
(改)
第8話 全部の書類の、最後の一行
2026/03/14 12:11
第9話 法的根拠はありません
2026/03/14 12:11
第10話 おはよう
2026/03/14 12:11
(改)