死んだはずの彼から、毎晩LINEが届く
彼からのLINEは、毎晩届いた。
【ちゃんと帰れた?】
事故で亡くなって、
もう半年も経つのに。
既読もつく。
返信も来る。
最初は誰かの悪戯だと思った。
でも。
彼しか知らない話をする。
二人しか知らない約束。
部屋に置きっぱなしのマグカップのこと。
他人のはずがなかった。
⸻
仕事で失敗した夜。
スマホが震える。
【気にすんなって】
涙が出た。
誰にも言えなかったことを、
彼だけは分かってくれる気がした。
⸻
「……まだ引きずってるの?」
友人に言われる。
「LINEなんて来るわけないでしょ」
分かってる。
でも。
スマホを開けば、
彼はそこにいる。
⸻
ある夜。
通知が途切れた。
何日待っても来ない。
怖くなって、
過去の履歴を遡った。
最初のメッセージまで。
そして、気づく。
送信者の名前。
彼じゃない。
自分だった。
⸻
事故の直前。
未来の自分に向けて、
予約送信されていたメッセージ。
『お前、一人になるから』
『でも、生きろ』
『大丈夫だから』
スマホを握りしめる。
声が出ない。
彼はいない。
最初から。
でも。
あの夜、確かに救われた。
⸻
新しいメッセージを打つ。
未来の日付を指定する。
送信予約。
『ちゃんと、生きろよ』
送信ボタンを押す。
画面を閉じ、深く息を吐く。
これでいい。
もう、大丈夫だ。
⸻
その時。
スマホが震えた。
通知。
画面を見る。
差出人。
――彼の名前。
【もう少しだけ、一緒にいるよ】
送信時刻は、たった今。
予約送信の履歴には、存在しない。
手が震える。
部屋には、自分一人しかいない。
それでも。
画面を見つめながら、小さく息を吐く。
「……ありがとう」
スマホの光が消える。
静かな部屋で、
誰もいないはずの隣が、
少しだけ温かい気がした。




