小さい人々
トトは、エノコログサを籠一つ分摘み終えると、娘のミミを呼んだ。
「バッタはどれくらい取れたんだい?」
「じゅうも取れたよ」
「ふたつは逃がしなさい」
「なんで?」
「今日食べる分だけあれば良いんだよ。ふたつは明日の分さ」
家に戻り、家族総出でエノコログサの種をむしる。粉を挽いてパンを焼くためだ。すぐに粉は挽けない。数日乾燥させ、毛を除き平たい石で擦りながら粉を得る。今日の収穫は未来の為だ。
「トト、今年は粒が大きいわね」
「そうだね。来年は小さいかもしれない。別の場所も探しておこう」
「お父さん、なんで? 来年もきっと大きいよ」
「そうだね。でも、良い時には悪い時の事を考えないといけないよ」
「ふうん」
※
夕日が沈む。
トトと、その妻のララ、娘のミミの3人で夕日に頭を下げる。今日の平和に感謝するのだ。
夕飯はエノコログサ粉のパン。バッタのソテー。
「ララ、豆乳酒は?」
「ごめんなさい。もう無いの。次のは1ヶ月したら飲めるわ」
「そうか。良いんだ。次が、楽しみだな」
「明日は?」
「丘に登ってみるよ」
※
朝日が昇る。
また、3人で頭を下げる。
今日は、鶏が卵を産んでいた。
トトはロバにミミを乗せて、丘に昇る。
丘の上で、ミミに良い野草の生えている場所や薬草の場所、大きい野生動物のいる場所を指し示す。
「お父さん。あれは?」
ミミが遠くに煙が上がる場所を示した。
「海の村だよ。いつかお前は、あそこに嫁ぐんだ」
「嫌だよ。お父さんとお母さんとずっと一緒にいたいよ」
「そうだね。もう少し大人になったらわかるよ」
夕日が傾きかけている。パンが焼ける臭いがする。
ララが遠くから、こちらに手を振っている。
トトは、ロバにミミを乗せて丘をゆっくりと降りていった。




