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事件編~ 遊泳禁止!

「それで実際に人って死んでるの?」

「うん。それは間違いないのよ。珠美はお葬式にも行っている。

なくなったのは井之頭いのがしらりくくん、棚部たなべ悠太ゆうたくん、それから猿渡さわたり圭太けいたくんの3人」

「3人も……、そりゃ怖いな。偶然っていうにはちょっと無理があるね。

死因はなんなの?」

「うーんと、珠美から聞いたところでは、3人とも病気みたいだけど。

はじめは井之頭くんかな。微熱があって、喉が痛いとかいっていたんだけど、急に倒れて意識不明になったって。すぐに緊急搬送されたんだけど、そのままなくなったって話」


 茜と駿が電車に揺られてかれこれ2時間ほど経過していた。目的地は噂の呪いの湖のある駅だった。


「そんなこんなで、棚部くんと猿渡くんも体調を崩して入院したみたい。

頭痛、発熱、後味覚障害なんかもあったとか聞いたわ」

「インフルエンザとかコロナってことはないの? 

味覚異常はコロナの症状だよね。

どっちも呼吸器系の疾患だけど。呼吸器系疾患って重症化するとアッと今に亡くなることがあるから甘く見ていると危険なんだよね」

「うーん、どっちも陰性だったそうよ」

「猿渡くんは、変な音が聞こえるとか、部屋の隅に人が立ってるって騒いだって話も聞くけど」

「幻覚とか、かな……」


 それとも、と言う言葉を駿は飲み込んだ。車内アナウンスが響き渡ったからだ。

 

『……お降りの方はお忘れ物に注意してください』


「着いたみたいだね」


 駿は大きなクーラーボックスを肩にかけ、立ち上がった。


「ねね、そのクーラーボックスの中身ってなんなの?」

「うん、中身? 中身は……ないよ」

「もう! けちんぼ、教えてくれたっていいじゃない」


 まともな答えをもらえなかった茜は唇を尖らせながら出口に向かう駿を追いかけた。



 携帯のマップによると駅から噂の湖まではさらに1時間ほど歩かなければならないようだった。マップを頼りに歩き、村外れのところまでたどり着いた。


「どうもこの道を行くみたいだ」

「ええ? これ道なの?」


 茜は携帯のマップと駿と道を順々に見比べる。駿の示した道というのは本道から急に林に入り込んで降り、その上道と言うにはあまりに頼りない獣道のような物だった。示した当人の駿も半信半疑な顔つきだから茜が異を唱えるのも無理からぬことだった。


「私、駿と遭難なんていやだよ」

「まあ、遭難はしないでしょう。一本道みたいだから間違えたと思ったら引き返せば良いだけだから」

「それ、なんかいかにも遭難フラグに聞こえるんだけど……

あっ! 見て、あっちから人が来るよ!

あの人に聞いてみようよ」


 丁度、いかにも地元の人といういでたちの人が歩てくるところだった。茜は駿が止める間もなくその人ところへ駆け寄ると明るく問いかけた。


「すみません。あの、私たち湖に行きたいんですけどあの小道を行けばいいんでしょうか?」

「なんだあんたら? 

湖……、ああ、ありゃ湖なんて代物じゃあない。ただのため池だ。ため池。

あんなところへ何しに行く気だ?」


 地元の人らしい人は茜と駿を胡散臭そうにねめつける。


「えっと、学校の課題でちょっと調べ物なんです」

「本当か? あんなところなにもないぞ。

まぁ……行きたければ行けばいいが」

「ついでにお聞きしますが、なにか歴史的な伝承とか言い伝えみたいなものありまふか?」

「あの池にか? ……ないな。ただのため池だ」

「そうですか。ありがとうございます」


 駿は話終わらせるとその場を後にしようとした。そのまま、2人が林に入ろうとすると後ろから声が追いかけてきた。


「ああ、待ちなさい。

あの池、水がきれいで泳ぎたくなるかもしれんが泳いじゃだめだぞ。

あそこは遊泳禁止だ」



「結局、あの人なにも教えてくれなかったね」


 獣道を歩く途中で茜がポツリと言った。


「んっ。教えてくれなかったのか、それとも教えることがないのかは分からないけどね」


 駿を歩きながら淡々と答える。林の中で直接陽の光が当たることはなかったがまだ残暑が厳しく、額や首から汗が吹き出てくた。やがて、すっと視界が開け目的の物が姿を現した。

 それは、湖と言うには小さいけれど、ため池と言うには少し大きかった。

 こもっていた熱が一気や冷めるような不思議な感じがした。


「涼しいってか、ちょっと寒いくらい?」

「ふん。水気のあるところは気化熱の関係で気温が下がるよね。打ち水みたいなもんかなぁ」


 駿は周囲を観察しながらゆっくりと池の周りを歩いていたがその内、ふと足を止めた。携帯を取りだした。


「ここだね」

「どれどれ。あっ、そうね。ここだね」


 携帯には3人の男の画像が写し出されていた。それこそ井之頭、棚部、猿渡の3人だった。撮影者は増田飛鳥。珠美から預かってきた。


「背景からこの辺で撮ったんだねぇ」


 と言いながら駿はぐるりと周囲へ目を配る。


「で、なんか感じる?」

「感じるって、だから僕は霊能者じゃないからなにも感じない……まあ、この画像の3人がもうこの世にいないと思うと流石にいい気分はしないね……いい気分はしないけど、この3人きっとこの池で泳いでいるよね」

「えっ、そうなの?」

「だって3人とも上半身裸で、海パン履いてるじゃん」

「でも、ここ遊泳禁止だよ」

「それは、僕らがあの人に言われたから知ってるだけでしょ。立看板もなにもないから、知らなきゃ泳ぎたくならないかい。

事件が起きたのは真夏も真夏、夏真っ盛りだったんだよね」

「そりや、ま、そうなんだろうけどね」

「スティーブン·キングの短編にさ、遊泳禁止の湖に遊びに来た若者がでっかいアメーバみたいな怪物に襲われるってのがあるんだけどね。少なくともここにはそんなのはいなさそうだね」

「当たり前よ。そんなのがいたら大騒ぎになっちゃうじゃん!」

「そりゃそうだ。だけど、もしかしたら小さいのはいるかもしれない」

「?」


 小首を傾げる茜をよそに駿はアイスボックスからペットボトルを取り出すと湖の水を汲み始め。


「ちょっと、何してるの? まさかその水飲む気? キレイで飲めそうだけど危ないよ。お腹壊すよ」

「いや、流石に飲まないって。

さて、目的は済んだから帰ろうか?」

「へ? なんで今来たばっかじゃん。

霊視とかしてないし!」

「いや、だから霊視できないって。ささ、帰ろう」

「ね、せめて写真撮って帰ろうよ。もしかしたなんか写るかもしんないしさぁ、ね、ね?」


 食い下がる茜を相手にせず駿はさっさと元来た道を戻り始めた。

 



 

 


 

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