苦くて暗くてまっすぐな線上に
「本当にこれだけで魔力が増えるのかい?」
駅を出た後レインたちは町中の暗い路地裏で乞食の死体を喰べていた。乞食を一通り食べ終わった後に左に聞いた。
「ああ、増える。なんせ俺は、魔法をつかさどっているものだ。他人の魔力を自分の魔力に変換することなんてなんてことない。」
レインは冷たく少し濡れている地面に座りかばんに入っていたリンゴをかじる。甘さと酸っぱさが口の中で弾ける。
「ゴーストやドラゴンは、わかるさ。でもヒトを喰ったって何にもなんないぜ?」
「いや、それなんだがなヒトは、魔力を持っているんだ。けどな、魔力を出力する機関が全くないんだ。ふつうは、心臓の近くに魔臓器というものがあってそこから体外に出力するんだがヒトはそれがないんだ」
「じゃあ、なんで創造魔法はできるの?」
「創造魔法は、詳しく言うと脳が出力機関となり口から創造魔力という魔力とは別の物を排出して発動させる。本来ある魔法の形とは根本的に違うんだ。」
「なんとなく、神が嫌う理由がわかる気がする。」
「俺も疑問なんだが、なんでエルフやオーガの乞食もいるんだ?」
「どういうこと?」
「だって、社会的地位が高いのに乞食になんでなってしまうのかなって」
「ああ、彼らにはねミチュリーラインというものがあってそのスコアが高ければ裕福な暮らしができるんだけどスコアが低かったらのけ者にされてしまうんだ。その一発勝負でね。」
「なんで、こう人というものは点数をつけなければ死ぬ呪いでもあるのか?」
「さあね、少しでも、誤差でも、何でもいいから他の人よりも優位に立ちたいという気持ちがあるのかね。」
そんな話をしてリンゴを後少しで食べ終わるころになったとき、一人の半人半獣の美人の女性に声をかけられた。
「ねえ、君、孤児?」
そう言われてから約1秒間にいろいろな問題を考慮した結果「うん」という返事が浮かぶ。
「じゃあ、ご飯あげる、泊まる家も!」
そう言い手を引かれ列車を何回か乗り継ぎある田舎の屋敷に招かれた。そこは、人が住むところにしてはとてもきれいで豪勢だった。そしてそこの一室に連れていかれた。
「明日からここが君の部屋だ。」
そう言われふと見ると、なんてことないただの部屋だった。棚と小さすぎず大きすぎないベット、机といすそれに金庫があった。自分にいきなり降りかかった幸運と疑心で心はずっと高ぶっていた。そしてまず先に連れていかれたのはお風呂だった。お姉さんと一緒に入った。少し、否、ものすごい恥ずかしかったがなんとか入りご飯を食べ自室にこもった。
「どうすんだよ、これから」
「ここが何なのか何をするために僕を連れてきたのかわからない。考えるのはそれからだ」
「そうだな」
そう言うと腕を伸ばしたくさんある魔導書の中から移動系の魔術書を持ってきた。
その魔導書は新しくいい匂いがした。
「早く、瞬間移動で行こうぜ?」
「いいか左?瞬間移動は瞬間移動をした場所からかすかに音が鳴るから移動には便利と言えるがステレス性に欠ける。周りがうるさかったり瞬間移動魔法のプロでなければね。だから覚えるべきは・・・・高速移動魔法さ」
そう言い本から高速移動魔法のページを速読しドアを開けて半人半獣の女性の部屋に行った。あいにく誰もともすれ違わずに部屋の前まで行けた。だれか男の人と話していた。
「もう10人だ」
「それが」
「本当に一流の戦士に育てられるのか?」
「もちろん」
「我々人族の命運がかかっているんだぞ?」
「それは私も子供たちも同じよ。大丈夫よ私は優秀だから!」
「頼んだぞ」
そう言い男は少し荒っぽく扉を開け廊下を早足で出ていった。かつかつと足音が廊下から響く。
「どうしたの?レイン。」
振り返るとドアから先生がこちらを覗いていた。顔を知った今ではその顔は少し恐ろしく見えた。
「ああ、明かりのつけ方がわからなくてな。」
「ああ、そうだったの。」
そう言って自分の部屋までついて行ってくれた。そうして指差しと丁寧な説明で教えてくれた。さっき見た怖く無慈悲な顔とは対照的な優しく慈愛に満ちた顔だった。一通りの説明が終わった後にぼそっと一言発した。
「私の部屋の前で何か見た?」
時が止まった感覚に陥るが頭はさえていた。先生を見ると優しい顔をしていたが少しあの時の顔になっていた。
「いや、男が出てきたのを見ただけだが何か話していたのか?」
「いや、気にしなくていい」
そうして、恐怖と慈悲と偽りの教室が始まる。曇った空と少しの寒さが残る部屋はそう告げているようだった。
ここでこの物語の法則を一つ!
この物語で人は生存ルートをたどる!