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その変わった2人は終末に近づく世界で何をする?  作者: 沼主
その小さな傷は少しずつ広がりやがて
3/5

列車にて

そこまで遠くないから最寄り駅まで歩いた。

雨でぬれた石畳はきれいに光っていた。

固い道に跡ができるのではないのかと思うほど地面に踏み込んだ。


「どこ行くんだ?」


「人の多いところ!」


「おー面白そうじゃないか。行こう!」


しばらくしてついたのは少し古くなった最寄り駅についた。

券売機の前に立ち、なけなしのお札を券売機の入札口に入れた。

そしてネール市までのチケットのボタンを押す。

乱雑に1枚のチケットが出てくる。

左は恐る恐る左頬から目を生やす。

左は隣にある豪華な券売機を見る。


「なあ、レインよこのお前が持っているチケットより少し豪勢なチケットは何だい?」


「それは、エルフ、オーガ専用チケットさ」


そういうと豪華な券売機を上のプレートを指をさすと金属のプレートには大きく


エルフ、オーガ専用券売機と書かれていた。


「お前は買えないのか?」


「うん。大丈夫、僕はこのチケットで満足している。」


「ならいいけど」


まだ暗く3月にもなるのに寒い駅のホームに向かう。

ホームの端には小さな売店があった。

新聞やサンドイッチ、果物、タバコなどいろいろなものがあった。

そこの売店で朝飯のサンドイッチとタバコと地図を買おうと歩く。


「サンドイッチとタバコと地図ください。」


「980ルーンです。」


「はい、」


1000ルーンを手渡す。

オーガの店員はこちらを少し見ると硬貨を一つ出してきた。


「10ルーンです。」


「20ルーンですね。」


「ちっ」


そう言うと苦虫を嚙み潰したような顔をして20ルーンを出してきた。


「なんで、あの店員はわざと間違えたのかい?」


「きっと、僕に問題を出したかったのさ」


そう言うと左手は何かを理解し顔の表面に口を出した。

変に口角をあげるてしゃべった。


「じゃあ、「ちっ」じゃなくて「おみごと!」っていうべきだろ?」


店員は声にならない驚きをあらわにした。

レインは笑顔で人差し指を口に当てた。


「しーーーーーーーーーーーーーーー」


店員は息をのみこちらに何とか声をあげた。


「誰なんだよお前」


「さあ、誰だろう?」


そう言うと電車のヒト専用の車両の屋根に飛び乗った。

何とかすいている場所を探して座りサンドイッチの一つを食べた。

しばらく、食べていると左がぼそっと口を開いた。


「しかし寒いな」


「そうか?」


「お前はあいつらがうらやましくないのか?」


そう言いエルフ専用車で個室で優雅に紅茶を飲んでいるエルフの家族を指さした。

その家族は明らかに裕福で服、小物、鞄、どれを比べてもレインでさえ高級とわかるほどに

きらびやかであった。

そして、何かを話しながら楽しそうに景色を見ていた。

車両を見渡すと彼らを見てうらやましそうにしているヒトもちらほらいた。


「うーん、確かに楽しそうだ。でも、こっちのほうが朝日はきれいに見えるしタバコも吸い放題さ。」


「何が言いたい?」


「こっちにはこっちの良さがある。その良さが僕にあっているってだけだよ」


サンドイッチを食べ終わるとヒトを少しのけて買ったばかりの地図を広げた。

風で飛ばないように周りに小物を置く。


「これが、この国の地図。楕円形の島になっていて、西の沿岸部にはこの国最大の工業地帯と港があり、その近くには発展した都市、センターシティがある。内陸部は砂漠になっていてこの国のエネルギーを支えている「ヴァイスロック」がたくさん採れる。北の地域は山岳地帯だ。東は熱帯雨林でまだ開発が進んでいない魔窟と言われていてそこは、魔物や魔植物がたくさん生えていて危険らしい、南はもともときれいな海岸線と森林地帯だったのだがリゾート化や空島(魔空石を埋めて土地を増やす方法)にされてスラムなども多くできてしまった。俺らがいたのは、内陸部だけど砂漠化になっていない温帯に位置する地域だ。」


「ありがとう、なんとなくわかったよ」


左が満足そうに言うとレインは地図をたたみタバコを取り出した。

しかし、タバコは口にくわえたのだがポケットを探そうともライターがなかった。


「あ、ライター忘れた。」


「魔法でつければいいじゃん」


「ここはヒトが多くいるからまずいだろ」


「そうか」


「おっ、ボウズ。タバコの火が欲しいか?やるぞ」


作業着を着た50歳ほどのおじさんがライターを手に持って言った。


「いいんですか!」


「もちろん」


そう言うとライターを投げてくれた。

きれいな放物線を描き見事にレインの手に収まる。

ライターは銀色で真ん中に掘っている目の模様は見ないようにして

カコンときれいな音が鳴る。


「なっ、いいこともあるだろ?」


「そうだな」


そう言った彼は笑っているように見えた。

シュバッと音がしてタバコに引火する。

煙が進行方向と逆向きに勢いよく流れ出す。

つけてライターをまた投げた。


「ありがとーー」


そういうと手を振ってくれた。

つけたタバコはおいしかった。

しばらくすると車両の屋根に雑に取り付けられているスピーカーから車掌の声がした。


「次は、Aネール駅ーー」


ガラガラ声のアナウンスが鳴る。

周囲のヒトビトがやっとかという雰囲気に包まれる。

レインも鼓動が上がる。

こうして自分自身がまた歩き出せることに喜びが起こる。

そう言うと鞄を肩にかけた。

Aネール駅につくとそこは人がごった返していた。

通勤時間と被っているせいかと思いめんどさとしょうがなさが押し寄せる。


「さあ、一日が始まるぞ!」


そう言うと屋根から飛び降りた。駅はガラスに日光がさしていてとてもきれいだがどこかどんよりとした嫌な雰囲気をまとわせていた。

レインは列車の屋根から勢いよく飛び降りた。その嫌な雰囲気はまるで厄災の誕生を祝っているようだった。

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