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◆2-7


『ふぁいあーりのめから、はらはらとおちるなみだに、えるはーべんとはけつだんしました。

 おちつかせるようにやさしく、ゆっくりとふぁいあーりにいったのです。


 『だいじょうぶだよ。ぼくがなんとかするから』


 えるはーべんとはひとのからだを、ふぁいあーりからじぶんのうでのなかへといどうさせました。

 そしてじぶんのちからをひとへと、ゆっくりとうつしていったのです。

 そのこうどうにふぁいあーりも、りゅうもせいれいもおどろきました。

 そんなことをすれば、えるはーべんとのいのちのちからがよわまってしまうからです。

 みんなのおどろきをよそにえるはーべんとは、じぶんのちからをひとへとそそぎつづけました。

 いままでおどろいてただみているだけだったふぁいあーりは、はっとわれにかえりました。

 えるはーべんとだけにやらせるわけにはいかないと、そっとひとのからだへふれ、おなじようにじぶんのちからをそそぎはじめました。

 それにはえるはーべんとも、りゅうもせいれいもおどろきました。

 なにせふぁいあーりは、えるはーべんとにくらべるといのちのちからがよわかったからです。


 『ふぁいあーり、だめだよ』


 えるはーべんとがやめるようにいいました。

 しかしふぁいあーりはやめようとはしませんでした。

 それならばと、りゅうとせいれいもひとにちからをそそごうとしました。

 しかしこんどはふぁいあーりにとめられました。


 『あなたたちはだめ。これいじょうだれかがいなくなるなんて、たえられないから』


 そうかなしそうにいって。

 りゅうもせいれいも、ふぁいあーりのかなしむかおをこれいじょうみたくなかったので、しかたなくあきらめました。

 かみさまたちはゆっくりと、ひとのからだのすみずみまでいきわたるようにちからをそそいでいきました。

 りゅうもせいれいも、かたずをのんでみまもっています。

 しばらくして、うごかなくなっていたひとのからだが、ぴくりとうごいたようにかんじました。

 そのことにあとおしされたのか、さらにかみさまたちはひとにちからをそそぎます。

 どれぐらいのじかん、ちからをそそぎつづけたのか。

 あかるかったせかいがくらくなってきたので、そうとうなじかんがたったのはまちがいありませんでした。

 かみさまたちにも、ひろうのかげがみえてきました。

 それでもかみさまたちはあきらめることなく、こんきづよくひとへとちからをそそいだのです。

 そして、まちにまっていたしゅんかんがやってきました。

 かたくとじられていたひとのめがゆっくりとあいたのです。

 とじられていたひとみには、いまはかみさまたちのすがたがうつっています。

 

 『えるはーべんとさま。ふぁいあーりさま。どうして・・・・・・?』


 ひとはいのちをとりもどしました。

 でもそのかおは、こんわくしていました。

 みんなのために、じぶんをけしたのにどうしてとおもったからです。

 そんなひとにえるはーべんとはいいました。


 『きみがいなくなるひつようはないんだ。きみはたしかによわいかもしれない。それでもぼくはきみにいきていてほしい』

 『わたしがあなたをおいつめてしまったのね。ごめんなさい。でも、わたしもえるはーべんととおなじようにあなたにはいきていてほしいの』


 ふぁいあーりのことばにつづくように、りゅうもせいれいもいいました。


 『きみがきえることはない。いきてしあわせをかんじるだけで、それだけでみんながしあわせだから』と。


 そのことばにひとは、なみだをしずかにながしました。

 とめどなくながれつづけるひとのなみだをそっとぬぐい、ふぁいあーりはいいました。


 『あなたにおねがいがあるの。このせかいをもっと、みんながえがおですごせるすてきなせかいにしてほしいの』


 ふぁいあーりのねがいをひとはことわることはありませんでした。

 それどころかよろこんでとさけんでいたのです。

 そのひとのすがたにあんしんしたのか、ふぁいあーりはちいさくほほえむと、めをゆっくりととじていきました。

 そしてそのままうしろへとたおれるすんぜんに、えるはーべんとがだきとめました。


 『ふぁいあーりさま? えるはーべんとさま?』

 『なにもしんぱいすることはないよ。すこしつかれてねむってしまっただけだから。だからすこしのあいだ、ぼくたちのいえにもどるね』


 えるはーべんとのことばにひとはまた、じぶんのせいだとおもいました。


 『ちがうよ、きみのせいじゃない。ぼくたちもたまにはふたりでのんびりしたいからね』


 それでもひとの、じぶんをせめるこころのこえはきえませんでした。

 そんなひとのようすに、えるはーべんとはいたずらをおもいついたようなこどものかおでいいました。


 『きみにはふぁいあーりのおねがいをまもってもらわないといけないんだよ? いつまでもそんなくらいかおしないでいてほしいな。

  それにぼくたちはきみにじぶんをせめてほしくて、よびもどしたわけじゃないんだよ?

  りゅうもせいれいもいったように、きみがしあわせをかんじてくれるだけで、ぼくたちみんなうれしいのだからね。

  そうそう。きみのなかにはぼくとふぁいあーりのちからがながれている。きっとちかいしょうらい、ぼくとふぁいあーりににたこどもができるよ。

  そのこたちのためにも、きみにもいや、きみたちにもまえをむいてがんばってもらいたいね。

  しんぱいしなくても、ふぁいあーりがおきたらすぐにあいにいくから』


 えるはーべんとは、りゅうとせいれいとひとにそうやくそくすると、ふぁいあーりをそっとだきあげました。

 そして、りゅうとせいれいとひとをあんしんさせるようにほほえみました。

 りゅうとせいれいとひとはえがおにこたえることもなく、しんけんなひょうじょうで、えるはーべんととねむっているふぁいあーりをただじっとみてました。

 それはまるで、わすれないようにじしんのなかにきざみこんでいるようにも、なくのをこらえているようにもみえました。


 『それじゃ、げんきでね』


 えるはーべんとが、りゅうとせいれいとひとにわかれのことばをつげました。

 そのことばとどうじに、えるはーべんとのからだからまっしろいひかりがあらわれました。

 とつじょあらわれたひかりはおおきくなって、えるはーべんととふぁいあーりをつつみこみます。

 かみさまたちをつつみこんでいるひかりは、とつじょつよいひかりをはなちました。

 そのひかりはせかいをまっしろにかえるほど、つよいものでした。

 あまりにもつよいひかりだったため、りゅうもせいれいもひともおもわずめをとじてしまいました。

 つよかったひかりも、じかんがたてばじょじょによわまっていきました。

 ひかりがじょじょにきえて、なくなっていくのをかんじるとめをそろそろとあけました。

 そしてあけたさきには、もう、えるはーべんととふぁいあーりのすがたはなかったのです。

 かみさまたちはひかりとともにきえて、いえ、おうちにかえっていったのです。

 のこされたりゅうとせいれいとひとは、しばらくのあいだたたずんでいました。

 そしてだれからともなくいいました。


 『きょうりょくしてせかいをつくろう』


 りゅうとせいれいとひとはちかいました。

 みんながえがおですごせるせかいを。

 ふぁいあーりのねがいをかなえるために。

 えるはーべんととのやくそくをこころまちにして。

 それはいつになるか、わかりません。

 それでもりゅうもせいれいもひともあきらめることも、うたがうこともしませんでした。

 かみさまはうそをいわないからです。


 りゅうもせいれいもひとも、またえるはーべんととふぁいあーりにあえるのをたのしみにまいにちをいっしょうけんめいいきていました。

 ときにはつらいことも、かなしいことも、たくさんありました。

 それでもよわねをはくことはけしてせず、たがいにてをとりあってせかいをつくっていったのです。


 そうしていまのわたしたちのせかい『いりすてぃにあ』がつくられたのです』


 

 パタンと、静かに本が閉じられた。

その音で話が終わった事に気付いた。

思いの他、集中していたらしい。


「気に入らなかった?」


 フェルハントが窺う様に聞いてきた。

珍しい。彼がそんな態度を取るなんて。

常のフェルハントなら『ちょっとフィアナには難しかったかな?』なんて微笑みと共に聞いてくる筈なのに。

一体どうしたんだろうか?

もしかして、聞いていた私の態度が何かまずかったのだろうか?

だったら、この態度も頷ける。

そうと分かれば、フェルハントの誤解を解かなければ。

折角読んでくれたというのに、嫌な思いをさせてしまっては申し訳ない。

私は慌てて言葉を紡ごうとした。

しかし、その前にフェルハントが私の頭を慰めるように撫でてきたので、言葉は音になって外に出る事はなかった。

一体どうしてこの行動?

さっきから予想がつかないフェルハントの行動に、困惑してしまう。


「フィアナには悲しい顔は似合わないよ」


 悲しい? そんな表情をしたつもりも、気持ちもないんだけど・・・・・・。


「このお話は悲しい話じゃないから。だから、ね? 笑ってほしいな。

 僕はフィアナの笑顔が大好きだから」


 フェルハントがそこまで言うのなら、やはりそういう表情を浮かべているのだろう。

でも、本当にそんな気持ちはない。鏡でも見れば納得するけど。


「にいさま。ふぃあなはそんなかなしそうなかおをしているのですか?」


 念の為に尋ねる事にした。

フェルハントはまさかそんな事を言われるとは思わなかったらしく、それまで撫でていた手を止めると僅かに驚いた表情で、私の顔をマジマジと見た。

その驚きように、そこまでの表情なのかと逆に思ってしまった程だ。

まるで凝視するかのような視線に、いや、そんな見られても何も変わりませんけど。なんていう言葉を自身の中で呟きつつ、私もお返しとばかりにフェルハントをじっと見た。

それは、私は私でフェルハントの表情を見逃さないようにする為だ。

じっと見つめ合っていると、フェルハントの方が根負けしたらしい。


「そっか。フィアナは悲しかったわけじゃないんだね。

 どうやら僕の勘違いだったみたい。ごめんね?」


 本当は勘違いじゃないのだろうに、苦笑を浮かべながらフェルハントは私に心配をかけないように自分の間違いだと言った。

そこまで気を遣ってもらわなくても大丈夫なんだけどなぁ。

でもそんな事を言ってしまうと、またフェルハントが気を遣ってしまうだけだと分かっているから何も言わないけど。

本当は笑顔でも浮かべて安心させるべきなのだろう。

でもそれだけではこの雰囲気は払拭されないと思うから。

だから私は視線を本へと移した。


「にいさま。いまのおはなしなのですが、わからないことがあるのでおききしてもいいですか?」


 これ以上その話題に触れる事はせず、ただ話が気になるという素振りを見せた。

とりあえず「うーん」と眉根を寄せて、考えている表情も作っておいた。

実際色々と気になる事はあったので、けして嘘ではない。

行き成りの話題転換だったが思ったほど不自然さはなかったようで、フェルハントは先程までの苦笑を拭い去ると「もちろん」と優しく頷いてくれたのだった。


はてしなく長いものとなってしまいました。すみません。

おはなしのひらがながかなり読みづらいとは思いますが、ご理解いただけますとありがたいです。

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