第二話 本音
「来い」
「殺してやる」
悠然と構えるイドラ それに対し桔梗(?)はおぼつかない足取りだ
闇剣に炎を纏った武器を手に持ちゆっくりと ゆっくりと近付いてくる
「右鋼剣・左鉤爪」
右手は鋼の剣に 左手を鋭利な鉤爪に構える
一瞬の静寂 を切り裂くように先手は桔梗 先程とは打って変わって迅速に距離を詰める
攻撃は大雑把だが生まれる隙を補助するように背中から生えた黒い針の触手が攻撃を繰り出す
激しい攻防の中 振り下ろされる一撃がイドラを捉える
その剣を左鉤爪で挟み込むように止める 弾き返し右鋼剣で反撃を試みるが躱されてしまう
「触れたな 闇の炎に」
距離を取るイドラ 闇の炎に触れた左鉤爪は燃えている
「持続的に燃え続ける炎か…厄介だ」
「対処法はあるんだろ?」
イドラは右腕の剣を高く掲げる
「?」
困惑する桔梗を他所に左手に向かって振り下ろす 当然 鉤爪になった左手は地面に落ちる
「俺の能力は"武器人間"闘気を使って身体を武器に造る能力」
「武器を造る それは再生の役割も持つ訳か」
「触れるのはダメだな 左茨鞭」
左腕が伸縮自在な茨の鞭に切り替わる
「茨の鞭か…面白い!」
前に踏み出す桔梗 しかし視界がグラつく しなった鞭が右頬を撃ち抜いた
「っっっ!痛ってぇえだろうが!」
「躾だ 喚くな」
「チッ...」
あからさまにイラついた顔だ 冷静ではない 行動は安直になり真っ直ぐ突撃してくる
今度は足を狙う 軌道を変え確実に痛みを蓄積する
「痛い!またやりやがったな!」
(口調が少し戻った?)
腹部 顔 太腿 数箇所を攻撃する 痛みを与えるにつれて桔梗の口調と顔付きが変わる
「痛い!何するんだよ!!」
(チッ…)
痛い その言葉は鞭の速度を僅かに弱めた その一瞬を闇は逃さない
「油断したな ばぁか」
「!」
仰け反るイドラ 懐に潜り込まれ腹部に大きな傷を負う そして炎が追撃を続ける
苦悶の表情の中 まずは腹部の再生を図る為に傷を負った箇所を鋼に作り替えパーツを切離し再度構築する
能力をフル稼働し傷を癒す為の時間稼ぎとして身体を鋼の剣で覆う
「てめぇはカメレオンか!?さっさと…」
既に間合い 振り下ろされる剣がイドラの眼前に迫る中
「死ね!!!」
「やめて!桔梗!」
ヴィタが割って止めに入る 生えた蝙蝠の翼 右手の鋼で闇剣を受け止め左手が桔梗の顔面で開く
「なっ…」
左手の中から見えたのは光 それは蛍海の発光
命の危機に瀕した時 蓄えたエネルギーを使って発光する性質
目眩しを受けた桔梗をイドラはすかさず鞭で縛り上げる 念には念を
右腕も鞭に変形させ念入りに縛り上げる 地面に倒れ込む桔梗 だが暴走は止まらない
「離せ離せ離せぇ!!」
「こいつ また様子がおかしい ヴィタ気を付けろ!」
しかしヴィタは藻掻く桔梗の側に歩み寄り覆い被さる(四つん這いのように)
「おいヴィタ!離れろ!」
「辛かったよね」
「ガァァァア!!」
「私 桔梗の話を聞いて元気付けようと思ったの でもごめんなさい…」
「おいヴィタ!」
「私が貴方の傷を抉ったんだよね」
能力の無い人間は報われない 能力のある人間も無い人間も口を揃えて言う
そして能力の無い人間は"ただ普通に生きる"課程でどれ程の痛みを味わうだろうか それは計り知れない
辛い記憶は一つのキーワードや会話の憶測 etc 思い出した時にそれらは少なからず負の感情になる
「でも 桔梗は人に八つ当たりする人じゃない!悪いのはこの闇なんでしょ!?」
桔梗の性格では溜め込むタイプだ それが今回溢れ出した 闇と同調して
「桔梗を返せ!桔梗!戻って!!」
嫉妬とか恨みとか 些細な出来事でさえ起こる負の感情の昂り それが闇の動力源
暗闇に埋もれた世界に必死の問い掛けが聴こえる 虚ろな意識の中 見えた先には
必死に問い掛けるヴィタ 一粒の涙が頬を伝う
「桔梗は!私の友達なんだ!!!」
その言葉を聞いた刹那 闇は桔梗の体に戻る
静寂の中 最初に言葉を発したのは意識が戻った私
「ヴィタ ありがとう」
「桔梗!良かったぁーーー!!」
大粒の涙を流しながら抱き着いてくる この子には本当に敵わない 全てにおいて
燃え続けていたヴィタの右手は私の意識が戻ると同時に深い焼け跡を残して消えた
縛っていた鞭が緩む すぐにヴィタはイドラに駆け寄る
「ヴィタ…助かった…」
「全く…家族は兄しかいなんだからね…」
「あぁ…そうだな」
こうして一件落着 とはいかなかった
この僅かな時間で話す事は積もる程ある だが猶予は与えられない
「どうもどうもこんばんは〜 いや 今はお昼だからこんにちは〜」
間延びした口調で近付いてくる 見るからに胡散臭そうな男だ 左肩が包帯で巻かれている 怪我を負っているようだ
「誰だお前」
「僕の名前はフルファイル 賭け事が大好きな男 以後よろしく」
「それ以上近付くな 撃つぞ」
男の動きがピタッと止まる 少し考えた後 男は一歩を踏み出す
一発の弾が男の頬を掠める
「ふふ 君は僕を殺さない 最初はね」
「何?」
「賭けは僕の勝ちだって話」
また一歩 また一歩 距離を詰めてくる 標準を頭に合わせるイドラ
撃つ瞬間 "重力" が私達を襲った
重い 体がとてつもなく重い これは この力は重力だ 空間を重力が支配している
「兄…桔梗…動け…ない…」
私は喋る気力も無い 為す術無く重力に囚われる中 新たな声が聞こえる
「重力からは逃れられない」
第一印象はお姉さん だった 高身長の美女 スタイルはボンキュッボンの赤髪 しかし
「なんだこいつら 既に弱ってる雑魚じゃねぇか」
口は悪かった 刺激的なタイプだ
「ねぇそこの女の子 闘気が全く無い」
フルファイル そう名乗った男は指を私の方に指してきた 闘気?何の話だ
「不思議な子だ 闘気も無いのにさっきの禍々しい力 まさか…」
苦しい重力空間の中 私は聞いた
「何を知ってるの?」
「さぁね」
知りたい 僅かな情報でもいい この闇の事も 両親の過去も
「そうだ 僕達はステラ王国から追われててね 王は殺せなかった 早く逃げなきゃ」
王は 殺せなかった?こいつは何を言ってるんだ
「村の兵士がステラに向かって行った お前達か…騒ぎを起こした張本人は」
「正解 そこの彼女に少し興味があって立ち寄っただけ 邪魔して悪かった 行こう那由多」
「とんだ道草だ 後で殴るからなお前」
「え〜許してよ〜後でご飯奢るから」
「殴るぞ!」
そんな会話をしながら走って去っていった
消えた重力 もう限界だ 意識が戻ってからクタクタだ 全員起き上がれない
「疲れた…もう…動けない」
「ごめん 私のせいで」
「チッ...またなにか来るぞ」
「「え〜〜〜!」」
大量の足音 ステラ王国の兵士だ
なけなしの気力を振り出して泣き暴れるヴィタ
疲れて微動だにしないイドラ
もう勘弁してくれ 心の中からそう願った
「君達 ここら辺で男女二人を見なかったか」
奥に進んだ そう答えた しかしそれだけで済むわけがなく…
目撃者として署まで同行願います みたいな感じで遂にステラ王国の中心部
王国の守備部隊 "パレード"の本拠地に連れてこられた 当然質問攻めにあう
「おいっ!もう答えただろ 早くここから出せ!」
痺れを切らしたイドラがキレる しかしその行動が余計に相手に不信感を与えた
「はっきりと言えよ 俺達が王の暗殺に携わってるって言いたいんだろ」
そしたら相手はぶつくさゴニョニョもちょもちょ
「クソッ…」
隣の部屋ではヴィタ また隣の部屋では私が 疲れ果てた先に尋問の嵐
二時間が経過した頃━━━━━━━━━━━
正直半分閉じた目で適当に答えた おや?廊下がなんだか騒がしい
乱暴に扉が開く
「おい お前達!早くその方達を解放せんかぁ!」
「王!意識がお戻りに!」
沢山の護衛に囲まれながら王と呼ばれる男が必死な剣幕で現れた
「早く解放せんかぁ!!」
トントンで尋問から即解放 そのまま王室まで案内された
「本当にすまない どうかここは私の顔を立ててほしい」
深々と王は頭を下げた 周りに護衛はいない
「シーケンス王 会えて光栄だ」
「君は確か 長の…」
「その前に 休息が欲しい」
イドラの横にはほぼ寝ているヴィタと私
「あぁ...すまん 話は明日にしよう そちらの部屋を自由に使ってくれ」
あんま記憶は無い ふかふかのベットに誘われ泥のように眠ったから
起きたのは昼過ぎ 早寝早起き朝ごはんはしてたから久しぶりだ
「おはよ 桔梗ー」
「おはようヴィタ」
ボサボサの髪 猫のように伸びをして起き上がるヴィタが隣に居た
「とりあえずお風呂ー!」
「先に入っていいよ 待ってる」
「え?一緒に入ろうよ」
「え…」
さすが王室の浴室 広いし綺麗だし 一般人じゃ手の付けられないようなバス用品の数々
金のライオンの銅像 口からお湯が流れ出ている とにかく圧巻の一言
「桔梗!背中洗ったげる!」
「ヘヘへ アリガトウ」
「どうしたの?まだ眠いの?」
「へへへ チガウヨ ダイジョウブダヨ」
なんでロボットの様な話し方だって?背中にふと当たったそれの感触が理性を攫ったから
湯船に浸かり大きく息を吐く これ程体に染み渡るとは思わなかった
水に浸かった2つの山を見つめていると
「王のお風呂場って凄いね〜 私ん家は風呂釜だよ まぁ あれはあれでいいんだけどね」
「今度そっちにも入ってみたいな」
「いいね〜 今度一緒に〜 入ろぉ〜〜」
少しづつ沈んでいくヴィタ まるでスライムのようだ
他愛無い話を交わした そして話題は昨日の話へ
「にしても昨日は散々だった〜 一日しか経ってないのが嘘みたい」
「確かに」
「ごめんね桔梗 兄が色々と…」
申し訳なさそうにしている けど私は怒りとか別にそれっぽっちも無かった
「気にしてない むしろ感謝してる 救われたのは私だ」
「優しいね〜 根に持ってるなら代わりに私が殴ってあげたのに」
仮にそうしても拳骨は間違いなくヴィタの頭を穿つだろうな
「謝るのは私の方だよ あの時…」
「お腹減った!のぼせちゃう!上がる!」
「早すぎだろ!」
「私はあついのは嫌いなの!王室のお風呂に興味があっただけ」
一瞬で出ていった 本当にお転婆だな
「私も上がろう」
王の側近が用意した服を纏い部屋を出る そこには王の姿とイドラの姿が居た
「起きたか客人 よく眠れたかね?」
「あぁ はい どうもありがとうございます」
「腹をすかしておろう まずは食事を…」
私は王の言葉を最後まで聞く事なく匂いの方へ直進した
「元気な女の子だ 2人とも」
「悪いな シーケンス王」
「気にするな 私達の仲だ」
匂いの先には豪華な食事が並んでいた ビュッフェ形式だ しかし無礼は許されない ここは王城なのだから
当然 大きなトレーの上に大量に盛って先客 ヴィタの隣に座った
「ふぃふぉう!ここおこはん おいひいよ!」
(訳 桔梗!ここのご飯 美味しいよ!)
「本当!私も早速 いただきまーす!」
豪勢な食事にありついた 舌が幸せだ 涙が零れ落ちる程美味い
昨日使い切ったエネルギーを補給する 腹が脹れるまで二人で頬張った
「戻ってきたか 気分はどうだ 馬鹿と阿呆」
「おはよ〜兄〜 美味しかった」
「おはようイドラ 私今幸せだよ」
「ハッハッハ!満足して貰えて何より」
馬鹿と阿呆に反応なんて微塵たりともしない それだけ食事に満足だった
食後のプリンを頬張りながら話を聞く
「ねぇ ヴィタ」
「ん?」
「ヴィタの能力 どんな能力なの?まるでコピーしてるような…」
「正解!やるね〜 私の能力は簡潔に言うと3つコピー出来るの」
「へぇー!そりゃ便利だね〜」
「でしょ〜えっへん まぁ色々不便な所もあるけどね☆」
こいつ可愛いなホンマに
「待て そもそもお前はその時の記憶があるのか?」
「いやそれが朧気っていうか…少し覚えている 私の知らない記憶も見たし」
「その件も踏まえまずは情報の整理だ」
するとヴィタが急に立ち上がった
「なら 兄が桔梗をイジメたこと 謝って」
「ヴィタ 私本当に気にしてないよ 寧ろ救われたんだって」
ヴィタはそれでもイドラを睨んでいる 彼女は私の過去の境遇を思って言ってくれている
でもそれはイドラも同じだ 知ってるからこそ私に現実から逃げるな と教えてくれた
「本人がそう言ってる 話はその後だ」
「ガルルルル…」
「ヴィタ ありがとう それと本当にごめんね 右腕…」
「いいよ私の事は!これっぽっちも気にしてないもん むしろかっこよくなったんじゃない?」
「うん…凄く…かっこいいよ」
言葉が上手く出てこなかった 彼女の気丈に振る舞うその姿が 余計に私の心を抉った
右手から肩付近にまで残った焼け跡 その美貌を傷付けた 本当に申し訳ない気持ちだ
「あの黒く禍々しいものは何だ」
「あれは闇 意識を失ってた時に過去の記憶が流れて来た」
「えぇ!本当に闇だったんだ!おどろきー」
「過去の記憶?」
暴走して闇が私の意識を呑み込んでいた時 小さな声が朧気に聞こえた
(気を……て!闇……呑ま…!…!早く闇…げて!!)
(…!俺の手を…)
二人の若い男女 解像度の悪い夢みたいだ 必死に闇から逃げている
「その他には何か見たの?」
「特に…その後に意識を取り戻した」
「闇…変わった力だ 能力では無いのは確かだが一つ不思議な点がある」
「何?」
「闘気が溢れていた」
「闘気…フルファイルもそう言ってた それは何なの?」
「闘気の話は後だ 次に昨日のシーケンス王暗殺未遂に関してだ」
城外では市民が心配の声を上げている 今はその鎮圧に兵が出向いている
既に国中では指名手配として二人の男女が張り出された
フルファイル・リオセス(24)
栞 那由多(18)
王暗殺未遂事件の首謀者 その全容をこれからシーケンス王が語る
ヴィタ
主能力 三種自在の神器
見たものの能力や特質 性質などを能力としてコピーする能力 最大で3つコピー可能 コピーする能力を変更する場合大幅な闘気を使用する しかしコピーした能力を使用する際の闘気の消費は能力により左右されない
「私を暗殺する為に彼らは奇襲を掛けてきた」
「奇襲…城の中に居たんじゃないのか?」
「フルファイルの能力により私は城外に強制的に引き摺り出された」
「どうやって?警備も厳重だったんでしょ?」
「昨日の朝の事だ━━━━━━━━━━━━」
一人の女が暴れている 今朝通報があった
現場に辿り着いた兵士達は驚いた そこだけくり抜いたように地面に穴が空いている
それも幾つもある そして穴の数だけ人がめり込んでいる 何かに潰されたみたいに
「早急に近辺の市民の避難 及び主犯格を探し出せ!」
「「はっ!!!」」
大量の兵士と王国の守備隊 パレードが探し回っている
「君はもう少し理性を保つ努力をしないと」
「黙れ あいつらがずっとダル絡みするからだ お灸を据えてやったのさ」
「はぁ…」
人気の無い路地裏に彼等はいた
ナンパ目的で彼女にダル絡みをした男達を片っ端から重力で押し潰したのだ
当然好戦的に そして先に手を出したのは栞 那由多から
「目的忘れてないよね 那由多」
「分かってる 王の暗殺だろ」
二ヶ月の滞在期間により王城の兵士の数 配置 内部の設計など熟知していた
最も兵の少ない城の裏 二人はそこで計画を進めていた
昼前 兵士が入れ替わりにより手薄になるその時間 王が自室に戻り昼食を摂る時間を狙って動いた
「始めるよ」
「あぁ」
「賭け事」
フルファイルを中心に広がるカジノ空間 その範囲は緻密な計算により 王のいる部屋まで届いていた
「なんだこれは!?」
広がるカジノの空間 その異質な光景を目の当たりにした一人の兵士が警報を鳴らす
「何事だ!」
警報が鳴り響く しかしシーケンス王は外に見えるカジノ空間を見つめる事しか出来なかった
それがフルファイルの能力 賭け事 範囲内にいる対象と賭け事を行う能力 第三者は行動が制限される
(何だこの空間は…体が動かん…)
そして対象を一人選択し強制的に中心に転送し賭け事の勝負に持ち込む
つまりフルファイルのいる場所で賭け事が行われる
「王!外に謎の空間が……王?」
部屋はもぬけの殻 それもそのはず フルファイルの能力により転送されたのだから
「貴様!何者だ!ここは城の外か!?」
「お初にお目にかかり光栄です シーケンス王 私はフルファイル そして急ではありますが…死んでください」
上空に大きなボードが現れる パラパラとパネルが周り止まる 表示された文字は"ババ抜き"
「ババ…抜き?」
「ご存知でしょう?これが私の能力 さぁ王 賭け事の始まりです あぁ ちなみに賭け事に応じない場合 賭けは貴方の負けになりますのでご了承下さい」
お互いの間に仕切りがある 着飾ったステージに大量の装飾 煌びやかな空間
その中で行われる異質な 初歩的な賭け事
お互いスペードの1のカード それに加え王の手札にはババが一枚
「スペードの1を引いたら賭けは私の勝ちだ」
ゆっくりと伸びる手 顔色や仕草を伺ってくる そして王の手札から一枚カードを取る
取ったカード それはスペードの1
「私の勝ちだ」
直後 真上に逆さになった巨大なルーレットが玉を転がし回り始める
楽しそうに見上げるフルファイル 王は驚愕の表情をしている 未知の能力に
(これが…新世代…)
やがてルーレットは止まりフルファイルの能力が発動する
"SPEED HALVED"(スピード半減)
そしてカジノ空間は消える と同時に王は走り出した 王の能力"加速"により速さが増していく しかし…
「え!?速っ!能力は聞いていたがここまでとは…」
シーケンス王は違和感を覚える
(何だ!?遅い…普段ならもっと速く…この男の能力か!)
「逃げられるな 那由多!」
「いちいちうるせぇ!」
加速しきる前に重力に捉えられる
「グハァッ……ぬぅ…これは"重力"!!」
「正解だおっさん 」
口調の強い女 敬称もクソもない 名前は栞 那由多
「あんたを殺せば私達はフィクサーの一員になれる」
「フィクサー…あんな物に…」
あんな物 その言葉に苛立ちを見せる
「黙れ ボンボンには分からねぇ」
両拳を掲げる 重力を纏い王目掛けて振り下ろす
しかし間一髪 王が囚われた重力から一瞬にして消える
地面が砕け深い穴が出来るほどの威力
「あ!?どこ行きやがった!」
睨むように探す 少し離れた位置に王ともう一人の男が
「大丈夫か シーケンス王」
「すまん…助かった ホロウ」
その男の名はホロウ 王直属の護衛を努めるベテラン 能力者 交世代の一人 能力"ポイント"
2つのワープポイントを使用しワープからワープに移動する能力
「過去の異物が…新世代の能力に抗えると思っているのか?」
「そんな事はどうでもいい 王さえ守ればな」
「護衛が来るまでに殺さなきゃ 那由多 全力で行くよ」
「あぁ」
王は立ち上がり常に腰に纏っていた剣を抜く
「やれるか シーケンス王」
「援護を頼む ホロウ」
とここで…
「ちょっと待てーい!」
お馴染み ヴィタ
「ヴィタ…黙れ」
「いや疑問は解決しないとムズムズする!交世代とか新世代とか…意味わかんない!」
「私は知ってるよ 説明しようか?」
「ガーン!桔梗が知ってて私達が知らないなんて 世も末かも…」
「引き籠りだったとは言え低く見られすぎて割とショックなんだけど…」
「私達?勝手に俺も含むな」
「じゃあ兄は知ってんの?」
「…」
「やーい嘘つき〜 ウィ〜」
「ゴホン!私が説明しよう」
王の咳払いと共に話題は戻る
「まず我々の世代は旧世代 そして先程出てきたワープの能力を持つクロウ あの世代が交世代になる」
「へぇ〜 じゃあ私達は新世代?」
「その通りだ そしてそう呼ぶ理由もある 世代を経る事に複雑化する能力 これが世代間を隔てる理由だ」
「えっと…つまり?」
「私の能力は加速 ただ走り続ければ加速する能力だ 至って簡単だろう?」
「確かに…」
「それに比べ君達は複雑な能力だ 扱いは至難の業だがかなり強力だ それが君達新世代なのだよ」
「つまりシーケンス王は序盤 護衛のホロウは中盤 そして私達が終盤みたいな感じか!」
「まぁそんな所だと思ってよい」
「私もひとつ疑問 フィクサーって何?」
「知らないの?なら私が教えたげる!」
「世代間の呼び名も知らなかったヴィタに教えられるなんて…世も末…」
「うわ!ショック!やり返された!」
シーケンス王は少し呆れた顔をしている イドラは深い溜息をついた これ以上の余興は辞めておいた方が身のためだろう
「それで?フィクサーって?」
「存在しない国家みたいなものかな」
「存在しない国家…」
「全国に薄く広く蔓延している組織 裏社会を牛耳っている奴ら それがフィクサー」
キツネの鳴き声ドームみたいだな いやそんな単純な話じゃないのは分かるけども
「中でもそれぞれの国に一人存在しているボスはめちゃくちゃ強いんだよ〜」
「そんなに公な存在なのに捕まらないんだね」
「大体捕まるのは下っ端ばかりだ 恐らくシーケンス王暗殺未遂の二人は暗殺に成功すればフィクサーの幹部にでもなってたのかもな」
「ふーん まぁ危ないヤツって事は分かった シーケンス王 話の続きを」
話は戻って昨日…
シーケンス王&ホロウvs栞那由多&フルファイル・リオセスの戦いは苛烈を極めていた
優勢なのはステラ王国チーム
「クソうぜぇ!ちょこまかちょこまかと!!」
「落ち着け那由多!僕の技が回復するまで待つんだ!」
「黙れ!纏めて…潰れろ!!」
広範囲の重力は辺りを飲み込みあらゆるものが下に沈んでいく
「はぁ…はぁ…どうだ!」
しかしホロウの能力により二人は重力の範囲外に逃れている
「クソが!」
「那由多 落ち着け」
「蝿が鬱陶しいんだよ!」
冷静ではない那由多にいつもより低い声でフルファイルが宥める
「那由多 落ち着くんだ」
その声に応えるように落ち着きを取り戻す
「悪いフルファイル もう大丈夫だ」
「うん 気を取り直して行こう」
シーケンス王とホロウは数多の経験と連携により新世代に抗っていた
「王とは名ばかりではない 返り討ちにしてやる」
「合わせるぞ シーケンス王」
大きく息を吸って吐く那由多 フルファイルが試合の再開を始める狼煙を上げる
「賭け事」
選ばれたのはホロウ 上空のパネルが止まる 映された文字は"コイントス"
ホロウの右手にいつの間にかコインが握られている
「さぁ コインを投げて掴むだけだ」
「これが新世代の…やるしかないか」
言われるがままコインを投げて掴む 表か裏か フルファイルはいつになく真面目な顔だ
「表」
即答 ホロウは右手の掌を開く 表には光 裏には闇 見えた文字は光 賭けはフルファイルの勝ち
ルーレットは止まり能力が発動する
"DEFENSE HALVED"(防御半減)
カジノ空間が消えると同時に那由多が動く 重力がホロウを襲う が あくまで狙うのは
「私か!」
シーケンス王目掛け二人が襲い掛かる 二つのワープポイントがそれぞれシーケンス王と那由多の足元に
位置が入れ替わる それを理解していたシーケンス王はフルファイルに剣を振り下ろす
しかし那由多もまた 自身が入れ替わる前に重力を残す それに囚われるシーケンス王はその場に手を付いてしまう
「死んで下さい 王!」
闘気を纏った蹴りが頭部目掛け放たれる
当たる寸前にホロウが両手を動かす ワープポイントがシーケンス王を移動させ近くにあった木を出口にフルファイルに斬りかかる
「なっ…!」
「フルファイル!!」
右肩を剣が貫く フルファイルは苦悶の表情 だが左手で剣を 右手で王を掴み離さない
「ぬぅ…離せぇ!」
「やれ 那由多!」
シーケンス王の懐に潜り込み重力を纏った拳を振るう そうはさせまいとワープポイントが再びシーケンス王の足元に
遠くの場所にワープをするが
「賭け事!!」
対象を選択する 当然選ばれたのはシーケンス王 先程と同位置に転送される
「やられたのぉ」
賭け事 "ロシアンルーレット" 一丁の拳銃 フルファイルが手に取る 頭に当て躊躇無く引き金を引く 弾は入っていない
左肩を抑えながら気の毒と言わんばかりの口調で話す
「あくまで賭け 負けたとしても拳銃で死にはしません ですが…」
「…」
拳銃をシーケンス王に渡し視線をやや下に向ける そこには鋭い目つきをしたまま止まっている那由多
フルファイルの能力により第三者は動きが制限される 能力終了後に重力を纏った拳がシーケンス王を襲う
「お気持ちお察しします 王 目の前に死が迫る感覚はいかがでしょう?」
「私がそんな事で怖気付くとでも?」
そう言いながら王は拳銃を手に取り頭に撃ち込む 弾は不発
「私は一国の王 これは試練だ 乗り越えて見せよう 貴様らの思い通りにはさせん!」
「その覚悟 しかと承りました」
王から受け取った拳銃を頭に打ち込む 銃声が鳴り響く フルファイルは面食らった顔をしている
(賭けに負けた…?嫌な流れだ)
そして能力は解除される 那由多が叫び動き出す
「死ねぇぇぇええ!!!」
その間に割って入ったのはホロウ
「ホロウ!?」
「王…お逃げ…下さい!」
ワープポイントで大量の木々を間に配置し衝撃を和らげる そして闘気を腹部付近に集中させ肉壁を行う が
ホロウは"DEFENSE HALVED"(防御半減)状態にある 重力を纏った拳は脆い鎧を意図も容易く破壊した
「ホロウ!!」
木々をなぎ倒し遠くに吹き飛ばされるホロウ やがて城壁にぶつかる音が聞こえた
王はその間を無駄にする事なく加速し城壁に真っ直ぐ向かっていた
だが "SPEED HALVED"(スピード半減)状態ではあるが既にギア4 そしてホロウの覚悟と王のプライドが引くことを許さなかった
「あいつ戻ってくるぞ!フルファイル!技を使ってあいつの加速をリセットしろ!」
「言われなくても…賭け事!」
だが不発 王は技を発動する際の闘気の波を読み取り即座に範囲外に回避 技の再発動に時間を要する
「外した…」
「速度半減してるんだよな!?速すぎんだろ!」
森を全速力で駆け巡る その速度は人の常識を遥かに凌駕している
やがて能力が完成する ステラ王国 国王 シーケンス・バーンズ その真価が今
「新世代の若造共 無事で済むと思うな」
瞬く間にフルファイルと那由多の傷が増えていく ギア5 もはや王は止められない
「耄碌したジジイが!その座から消してやるよ!」
「何とかして賭け事を当てなくては」
辛うじて目では追うことが出来る だが反応が追いつかない
「深く襲って来ない理由は僕の能力を恐れているから だけど…」
増える出血と傷跡 判断は一瞬でなければならない
「那由多 次外したら逃げるぞ」
「あ!?フィクサーは…」
「諦める 命には変えられない」
「チッ…なら次決めればいいんだな」
「何か方法があるのかい?」
「複雑だがリズムは掴んだ 私に合わせろ フルファイル 合図は私が重力を出した時だ」
「君に賭ける」
最大出力の重力 ゆっくりと広げるイメージ 重力の波は感知させない やるなら一気にだ
「今だ!」
「賭け事!」
重力が辺りを一瞬で覆う だが 捕まえたのは ホロウ
「なんで君が!?」
「この国の王を 目に焼き付けろ逆賊共 俺の負けだ!ゲームを終了させろ!」
賭け事に応じない場合 強制的に負けになる
ホロウは考える時間を与えない為に わざと 賭け事を強制終了させる
直接 "SPEED HALVED"(スピード半減)の文字がパネルに映し出される だがそれは最早意味を持たない
後方にワープポイントで転送された王が既に傍に迫っているから
「逃げるぞ フルファイル!」
「逃がすわけないだろう」
「クソッ!」
王の猛攻が始まる寸前 フードを被った何者かがこう告げる
「助けてあげましょうかぁ?」
まるで嘲笑うかのように 語尾を上げている
「君は確か…」
「君達は合格だぁ」
「それって…」
「まずはYESかNoか」
「YESだ」
そのフードを被った男は大きく手を広げる
「ようこそ!夢の世界へ〜!」
王は突如として異空間に飛ばされる それは形容しがたい世界
灰白で空間が少し歪んでいる景色 色とりどりの綿が浮かび地面は液体が無いのに波紋が波打っている
「なんだこの世界は…」
またしても王を襲う異質な空間 だが一向に攻撃は来ない とりあえず走り続ける
「!?」
王は混乱した なぜなら瞬き一つ その瞬間に上空に隕石が迫っていたから
「一体何が!?」
「ふふふ 夢は曖昧 少し覚えてて朧気」
「貴様は誰だ!」
隕石の上にその男はいた
「それな内緒だぁ〜 悪いけどあの二人を失う訳にはいかない フィクサーに欠員が出たからねー」
隕石は衝突し大爆発を起こす そしてその破片が全て大小様々な笑う玉になりスーパーボールのように跳ねる
「常に人員不足なんだよ〜 アハハハ!」
余裕の表情 甲高い笑い声 大きな隙 念の為にスーパーボールを躱し斬りつける
が 真っ二つになったフードの男は霧のように消えていく
「少し時間を稼がせて貰いますよ〜」
消える霧が嘲笑ようにそう残す 新世代の実力は未だ不明 だが
「私はこの国の王 シーケンス・バーンズ 受けて立とう 新世代」
今すぐに倒れてしまいたい だが 王という肩書きが地に手をつく事を許さない
長い一日の終着点はもう目の前
ホトユリ・ヴィタ(16)
好きな物 美味いもの
嫌いな物 渋いもの
特技 西瓜を秒でたべれる




