第一話 僅かな温もり
語り手 宿木 桔梗
━━━━━━━これは つまらない物語━━━━━━
1500××年○月○日
「朝…」
カーテン越しに差し込む日差しを手で遮りながらもう一度眠ろうとした 体は重い
二度寝の構え それを阻止するように 階段を上ってくる足音が聞こえる
「朝だよ〜」
年季の入った扉が古びた音を立ててゆっくり開く
まだ眠気を纏った空気を吹き飛ばすような明るい女性が姿を現す
「きーちゃん朝だよ〜 ほら起きて〜」
「……おはよう來さん」
「おはよう! 朝ごはん食べよっ☆」
私は 宿木 桔梗
私のことを“きーちゃん”と呼び 太陽にも負けないほど明るい笑顔を向けてくる彼女の名前は
鬼灯 來 ――私の母だ
スタイルはとても良い 綺麗な二重で髪は桃色
整った大人の顔立ち 恐らく世間から見た彼女は魅力的な母親だろう
彼女の料理はいつだってとても美味しい
トレイ 歯磨き 朝食を済ませ身支度を整える 何故身支度をしてるかって?それは…
「きーちゃん 今日天気いいからさ お散歩行かない?」
朝の香りに包まれたキッチン
使用した食器を洗っている最中 穏やかな口調で私に聞いてくる
「……うん 行く」
口ではそう答えた が 当の私は正直外に出たくない
私はある出来事をきっかけに外に出るのが怖くなってしまった 所謂引き籠もりだ
そんな引き籠もり根暗姫を彼女は毎日のように 色んな方法で改善しようと試みている
彼女には悪いが正直鬱陶しいと思うこともある
毎度のように誘われる度にブルーな日やそうゆう日は嫌気が差していた
キッパリ断ると気の毒だしそもそも私が強い精神さえ持ち合わせていればここまで苦労もかけなかっただろう
それにこのまま薄暗い世界に居続けるのは上手く言葉に出来ないが…なんと言うか…悪い気がした
ここで一つ余談 この世界では人は皆 生まれながらにして能力を持っている
「固有能力」と呼ばれる主能力 稀に「副能力」も併せ持つ者がいる
そして ある条件を満たした者だけが「覚醒能力」を手にするらしい
覚醒能力を得た者には「世名」が与えられる
少し中二病っぽいが要するに“覚醒者”としての称号のようなものだ(特に意味はないらしい)
とはいえ「世名を持つ者」=「覚醒能力者」――それだけで猛者であることの証明になる
そしてそんな世界で稀に“固有能力を持たない者”が生まれる
それが――私だ
またまたここでひとつ余談
能力を持たずに生まれた者の約四割が自殺する 本当に嫌な話だ
理由は単純 周囲と違う 拒まれ笑われ軽蔑され・・・etc 死にたくなるには十分だ
2つの余談をした所で現実に戻ろう
久しぶりの外出 私の曇った気分とは裏腹に透き通った空だ
家から徒歩5分の所に"結び之公園"がある
毎年季節の移ろいを木々が教えてくれる由緒ある公園
夕方までは子供達が遊びの場として公園の大部分を占める
夜になるとリア充(くたばりやがれ族)がカビの様に増えてくる
その外周をのんびりと散歩中
「いい天気だねぇ〜」
背伸びをした彼女のボインな2つの山が朝日に照らされているのを見て私は今日も無我の境地に入る
なんで無我の境地に入るかって?
別にまな板だからとか羨ましいからとかじゃないよ?断じて…………断じてな???
「あっ……」
視線の先に映ったのは魔法小学校に在籍していた頃に私を虐めてきた三人組
心臓がバクバクと高鳴り過去のトラウマが本能に語り思わず目を伏せる
幸い私は彼女の右側に隠れていたためか――彼らはそのまま通り過ぎていく
ホッと胸を撫で下ろした その時
「ん? おーお前 根暗かぁ!?」
男モブαが振り返る
(ゲッ……なんで気づくんだよ)
続いて女モブβ
「うっわ!根暗じゃ〜ん ひっさしぶり〜!」
「あなた達……誰? 学校はどうしたの?」
実の子が哀れな呼び方だからか
話し方が気に食わなかったのか
両方か 彼女が少しの苛立ちと怒りを混じらせた声で問う
三人目 女モブXが口を開く
「がっこ? サボり〜!てかさぁ とちゅーで辞めた人に言われたくねーし マジウケるんだけど〜w」
その言葉を聞いた時 母の顔つきが変わった
普段温厚な人間を怒らせたら怖い まさに彼女がそれに当てはまる
「あ……あっ……」
私はキョドりながら立ち尽くす
「行くよ」
強く私の手を引きこの場から離れようとする 関わらない方が良いと判断したらしい が…
「おい どこ行くんだよ……っと!」
男が通り過ぎる彼女の肩を思いっきり引き寄せ 私も巻き込まれる形で倒れ込む
「へぇ……お前の親 いい体してんなぁ」
男は彼女の胸元を覗き込み 上着を乱暴に破く
純白の白いブラ 豊満な胸が露わになった
彼女は頭を打ったようだ
打ち所が悪かったのか 意識が朦朧としている
彼女を心配していると下衆の手が視界に映る
両手を広げ胸に目掛け手を伸ばす
この時の顔をよく覚えている 目を細め口角がくっきりと上がった気持ちの悪い顔
「あっ……や やめろ!」
阻止しようとしたが女モブ二人が私を抑え込む
不快な笑い声がよく耳に響いた
「お前らよくやった さて……どんなものか」
男モブの手が彼女の胸に触れようとしたその刹那
私の中で何かがブツンと切れた音がした
過去から今に至るまで 積もり積もった負債が 溢れるように声量に現れた
「やめろっつってんだろッ!!」
ドロリ――と黒い闇が私の体から溢れ出す
周囲は一瞬で闇に包まれた
闇の中から聞こえてきたのは断末魔━━━━━━━━━━━━━━━
無機質な機械音が響く しかしそれは異質な音
【ピピピ…ジジ…ブゥーン…ジジジジジ…】
【File.No.001 宿主の急激な感情の振れ幅を感知 測定開始 】
【file.No.002 対象抹殺 宿主の記憶は断片的に保持】
【file.No.003 複数個体の異常音声反応を観測•保存】
【記録シーケンス : 引き続き稼働】
解像度の悪い悪夢 夢と現実の境にいる感覚の中
一つの声が少しづつその境に割って入る そして意識を戻す
「ん……」
「きーちゃん! 大丈夫!?」
彼女が心配そうにこちらを覗き込んでいた
破れた上着を胸元にかけ隠している
「來さん……あの三人は……?」
「私の能力で帰ってもらったよ」
鬼灯 來 彼女の能力は 導く者
相手に幻覚を見せ 思考や行動を誘導する力
あの三人には何かしらの幻を見せて追い払ったのだろう
「私は……何をしたの?」
叫んだ記憶はある
だがその後の記憶は曖昧だ なぜか気分は清々しく晴れやかだった
徹夜明けにテンションが上がってよく分からない高揚感に包まれるあの感じ
その清々しさに不快感を覚えた
「何もしてないよ」
彼女はいつものように微笑む
でもその笑顔にどこか違和感があった
「帰ろっか」
「うん……」
赤ん坊の私を拾って育ててくれた彼女を疑うなんて気が引けた
だから私は何も言わず 彼女と帰路についた
地面には赤黒い染みが広がり蝿が群がっていた事も知らずに…
この世界には五つの国が存在する
五大国の中心に位置する最大の規模を誇る国 朝も夜も人の気配が止むことのない【アース王国】
北西に位置する音楽都市【ステラ王国】
実力主義の【ライム王国】と かつて統一され古傷を癒すべく造られた南西に位置する新国家【ガーランド王国】
北東に位置する食と農の豊かな【ルナ王国】
そして南東に位置する魅力的な観光地が多く存在する煌びやかな国【ドロシー王国】
私はアース王国の中心地に滞在している
早朝から聞こえる市民たちの声に今日も嫌々起こされる
「ふわぁ〜…朝か…」
目を擦りながらリビングに向かう
途中から香る朝ごはんの匂いが鼻をくすぐる
「おはよう!來さん!」
「あら 自分で起きて偉いね〜」
「もう そんな事で褒めないでよ」
とは言え悪い気はしない
甘やかされてるのは十分理解しているが彼女の温もった声音を聴くとお世辞でも嬉しくなる
朝食を済ませ外出用の衣服に着替える
「どこか行くの?気を付けてね」
「うん」
「迷ったり怖い事があったら電話する事!それと…」
「暗くなる前に帰って来る事!分かってるって 行ってきます!」
「ふふ 行ってらっしゃい」
向かった先は誰もいない小さな湖
数羽の小鳥が鳴いている心地のいい世界
小さな洞窟を抜けた先に見えるこの世界は私しか知らない秘密の基地だ
「よし!運動しよ!」
走って走りまくる 少し休憩を挟んで筋トレ 普段は引きこもりだが体型は意地でも維持している(笑) ごめん
今頃私と同い年の子達は学校に通っているのだろう ふと思うと心が少し傷む
他にも読書したり勉強したりエロ…おっと誰か来たようだ
日が落ちる前には洞窟を抜け出し帰路に着く
「ただいま〜………?」
静かだ いつもなら笑顔で「おかえり」と出迎えてくれるのに
「…來さん?」
リビングの方に向かう 灯りはついてない
薄着身悪い感覚が背中をなぞる 次第に体は強ばり足音を忍ばせる
ゆっくりとリビングに繋がる扉の奥を覗き込む
「…!!來さん!?」
彼女が机に伏せて項垂れている
すぐに彼女の元に駆け寄り肩を揺する
「起きて來さん!大丈夫?起きて!」
ポタ…ポタ… 何の音だ?彼女の下から聞こえる 嫌な音の正体を探るべく下を覗き込む
「あぁ……ああぁぁあ!!!」
赤い雫が同じ速度で落ちる
腹部からの大量出血 触れた彼女の手は冷たかった
「一体何が!?來さん…あぁ…どうしよう」
混乱している中 か細い声が聞こえる
「き…ちゃん…」
「來さん!大丈夫だから!すぐに…えっと…救急車と!止血だ…巻かなきゃ…」
「きーちゃん…愛…してる…大丈夫…また…会えるから…必ず…」
「何…言ってるの お願い そんな事言わないで 私まだ何もしてないよ…」
震える声で言葉を絞り出す だが"生きて欲しい"そんな願いも呆気なく息絶えてしまった
死んでしまった あれ…?私ってこんなに冷たかったんだ 心も体も
冷たい涙が頬を伝った
私の母は死んだ 必ず会えると呪いを遺して
「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ」
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ鎌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
空虚な心 冷えきった彼女の血が滴る音が響き渡る暗い世界
無機質な機械音が響く しかしそれは異常な音
【ピピピ…ジジ…ブゥーン…ジジジジジ…】
【File.No.004 宿主の急激な感情の振れ幅を感知 測定開始 】
【file.No.005 制御不能 記録シーケンス継続不可 異□発生□常□□□□□□】
その日 夕陽が射し込む美しい世界
アース王国中心部にて 暗い暗い一閃の闇が空を穿つ
その異様な気配は街中に広がり人々の目を奪った
ある人はその光景をこのように例えた
世界の終焉が訪れた と
消えた闇は再び美しい夕日の世界を取り戻した
その後は警察とか色々駆けつけてきた
私は気を失っててその場で倒れていたらしい
目覚めた病院で私は身の毛も凍る話を聞いた
「そんな…そんなはずは無い!あれが見間違いな訳無い!!」
「しかし…そう言われましても…」
「あの日!來さんは…來さんは…」
死体が無かった 血痕も見つかっていない
あれから数日 取り調べを受けた
どれだけ自分の意見を主張しても聞いてくれない
私が薬でもやってるやつに見えたのかも
何も進展も無く家に帰ってきた
痕跡が無いのであれば探しようが無い
そして実感した
この虚ろな空間 静寂 誰もいないキッチン 靡かないカーテン
一人はとても寂しい事に気づいた
來さんが倒れていた机をゆっくりとなぞる
「殺しシテヤル………え?」
自分の発言に驚いた
何に対して殺したいと願ったのか
ふと口を付いたその言葉がかなり不快感を伴った
あの日以降 自身の体から不気味な物が蠢いている
それはとても禍々しく この世のありとあらゆる不純物を混ぜ合わせたようなもの
それは出してはいけないと直感した
「私はこれからどうすれば…」
静まり返った部屋 ソファに腰掛け過去の思い出にふける
來さんは記憶が欠けていた
23の時に大きな事故に遭い記憶を無くしたらしい
倒れていた所を市民が発見 施設で保護され復帰した
後に自身の口座に貯蓄が目を疑う程あったとか何とか
そしてそのまま一人暮らし
ある日朧気な記憶を頼りに進んだ場所に赤子の私が居た
「こんな所に赤ちゃん?」
土や葉 小さな虫などが体を覆っている
「これも何かの縁 一緒に帰ろう」
小さな手が彼女の手を強く握りしめた 涙が泣く子の頬をつたう
「うん 頑張ろう…頑張ろう…」
記憶を辿って出会った赤子は運命だと感じたらしい
思い出す記憶は幸せな記憶ばかり
失って気付くとはよく言ったものだ
涙が溢れた 來さんに心配をかけたくないから泣くのを我慢していた
けど零れた 今まで堰き止めていたダムが決壊するように
これからどうすればいい?そうだずっと昔からやりたかった事がある 旅だ 放浪しよう
荷物をまとめ身支度を行う どこまでも どこまでも ずっと旅をしよう そして死のう
意味なんか見出したくない 考えたくもない もうどうでもいい 全てがどうでもいい
とゆう事で翌朝
彼女が居た机に私の御守りを置いて家を出た
まずは音楽都市 ステラに行こうと思う
音楽は好きだし疲弊しきった心を癒してくれるかもしれない
とにかくひたすら歩いた ただ北西に向け歩いた
金銭面は彼女の口座に残ったお金がある
変に無駄遣いしなければ旅するには充分な金額だ
夜になれば野宿 腹が減ったら食事 身体は公園の水や川で流した
放浪してから2週間が経った
上手くやり繰りし国境を越えステラ王国の傍まで来た
今の所危機は一度脱糞しそうになった位で訪れてない
見渡す限りの大草原 空を見上げてぼんやりと考える
そして自分に呆れる いつも衝動的なくせに 変なところで用心深くて
結局 自分のことなんか何もわかってない 本当に自分が嫌いだ
(本当に…)
のんびりと空を見つめてたその時 草むらから「カサッ」と音がする
「なに?」
音は一つじゃあない あちこちから 囲むように複数
しかもどんどん音は近づいてくる
「なになになになに!?やばいやばい!」
見えない何か 音だけ近付くこの感覚が酷く私に焦燥を与えた
息が詰まる 一瞬だけ見えた白黒の縞模様 豹のようなしなやかな体
図鑑で見たことがある……これは――
「狩りだ……あの模様 シマガラトラ!」
シマガラトラ 獰毛種
豹に似た身体に縞模様 群れで獲物を狩り 肉も骨も食い尽くす害獣
主に家畜を襲うが 空腹時は何でも襲う獰猛性
私は全速力で走り出す
「あああぁぁっ!こっち来るなぁ!!」
必死に逃げる 何時ぶりか 全速力で走ったのは
横隔膜がせり上がり左脇腹が締め付けられる感覚
草が絡まってうまく走れない 足裏に石が刺さって痛い しかし命の危機を前にその痛みは些細な事だった
「ハァッ…ハァ……ッッハァッ」
息が途切れる 弱っている獲物を狩人は逃さない
「出ろ!出ろよ!」
あの時感じた不純物が呼応しない どうして!?何故!?
集団で囲い込むように じわじわと追い詰めていく
横から一匹が襲いかかってきた なんとか避けたけど転んでしまう
「うっ……くそっ ふざけんな……!」
体が限界を迎える 這いずりながら逃げようとするが体は言う事を聞かない
それでも必死に逃げた 逃げた 必死に
今度は正面からヌッと現れた 喉に絡むような唸り声を上げて
心臓がキュッと音を立てた気がした
(ああ……終わったな 案外呆気ないもんだ)
最後の最後 塞いでいた気持ちがこぼれた
「うぅぅ……死にたくない 死にたくない!!誰か助けてぇーーー!!恋も!キスも!手も繋いでない!エッチもしてないぃ!美味しいものも食べてないぃぃ!!@&#∀Д!!」
我ながら意味不明すぎて何言ってるか自分でもわからなかった
その時 空気が変わった
一発の銃声 弾丸がシマガラトラの眉間を撃ち抜く
「へ……?」
続いて二発 三発……合計十五発
すべてが正確に シマガラトラの眉間を貫いていく
呆然とする私の前に 一人の男が現れた
「おい……お前 こんなとこで何してる?」
これがホトユリ・イドラとの出会いだった
(なっ……なにこの顔面偏差値……!白馬の王子様じゃん!)
普段から人の顔色を伺ってたせいか 私は観察力だけはあった
(身長……170以上 服越しでも分かる割れた腹筋 紫の瞳に つり目 髪は銀灰色 顔は怖いけど正真正銘のイケメンだ…)
分析していると――
「おい 聞いてるのか」
「あ…えっと…助けてくれてありがとう!私の名前は―――」
男は次の瞬間 私の背後に回り銃を頭に突きつける 背筋がゾワゾワした
「ここは俺達の縄張りだ 誰の許可を得て入った?」
「縄張り!?そんな事は知らず申し訳ない 私は…」
「黙れ不法侵入 お前は捕らえさせてもらう」
「話を…」
「大人しく縄に…」
「話聞け!ばーかばーか!死ね!ファッ〇!この顔だけ神に愛されイケメン野郎がッ!」
話を聞かない相手に手数で攻め立てた
「うるさい!!」
銃の柄で殴られ 私はそのまま気絶した
「品の無い……騒がしい女だ」
ホトユリ・イドラ
主能力 武器人間
体を本人の把握する武器に変形する 変形した武器のステータスに応じて闘気を消費する
副能力 地雷虫
地面に這う型と空中型 どちらも複数出現可能 衝撃や自身のタイミングで小さな爆発を起こす
気絶してから数時間は経っただろうか
目が覚めると 後頭部がズキズキと痛む
(漫画とかで後ろから殴られて気絶とかあるけど…あれマジなんだ)
↑危険だから真似しないようにね↑
「イテテ……ここは?」
見回すと窓が一つ
外では草が風に靡いている
中は古びた木造の部屋 ベッドは今にも壊れそうでギシギシと音を立てる
「…って 裸じゃん!?私 裸じゃん!?!?」
もしかして──見られた!?私の私!?包帯巻かれてるし!?
ってことは……ってことは──!??
一人でよからぬ妄想をしていた時
扉が開いてあの男が戻ってきた
「起き──」
「変態!えっち!!」
瞬きの間に 彼の腕が銃に変形 赤いレーザーが私の眉間を正確にロックオンする
「すみませんでした!!ご手当て 誠にありがとうございました!!」
即土下座 命あっての物種だ プライドも糞も無い 漏れそうにはなったが
土下座した勢いで頭をぶつけた
隣に置いてあった水が零れる 彼は呆れた顔をした
溜息を一つついて彼は自己紹介を始める
「俺はホトユリ・イドラ ここ ラテン村の出身だ お前は?」
「わ 私は宿木 桔梗 えっと…アース国の中心部が出身 訳あって旅をしてるの」
彼は分かりやすい
あからさまに私の事を窺っている
どうしたものか と話題を変えようとした時 玄関の方から音が聞こえる
「お兄?誰かいるのー?」
この部屋の扉は木造の引戸
それにとても古い 今にも壊れそうな扉を問答無用
声の主が思いっきりぶち開ける
「兄!……………」
「帰ってきたのか ヴィタ 扉がまた壊れる いい加減学べ」
だからボロボロなんかい!と心で突っ込んだ
その少女の名はヴィタ
まず目に映ったのはそのπ 美しい と思った
肩に胸に腹に太ももに 露出しすぎでは…
そして何故かヴィタは沈黙 何故だ?何故……
あ━━━━━━━━━━━━━━━
ほぼ素っ裸でベッドに横たわる私
そしてイドラ 零れた水 それは事後のようにも見える
案の定…
「キャーーー!お兄!私何も見てないよ!見てなーい!」
勢いのまま引戸を閉めて結局ぶち壊した
イドラは面倒臭いのが増えた って顔をした
壊れた引戸を後目にヴィタを追う
少し時間が経った━━━━━━━━━━━━
首根っこを掴んで猫のように連れてこられたヴィタがそこに居た
「こいつはヴィタ 俺の妹だ 世話が焼ける馬鹿と阿呆を煮詰めたような奴だ」
「どうも!私はヴィタ さっきはごめんごめん!勘違いしちった(笑)」
「えっと…どうも 宿木 桔梗です よろしく」
「もーそんな堅苦しくしないで!てかどんな経緯で家に来たわけ?」
「あー私もよく分かってないんだけど…」
ステラ王国へ向かう経緯を話した
イドラは大人しく話を最後まで聞くのに対しヴィタはその時の内容に合わせ波長するようにコロコロと表情を変えた
「へー それで兄に助けてもらったと」
「うん…本当に助かった ありがとう」
「気にするな」
「兄…プッ(笑)照れちゃって(笑)」
拳骨がヴィタの頭を穿つ 思わず頭を抑え込み声にならない声で叫んでいる
「長旅ご苦労だったな だがラテン村には正式に入口がある 例え知らない と言い訳しても無駄だ」
「そ…そんな」
参った ここでは不法侵入扱いらしい でも標識も柵も仕切る物も何も無い 私は不満を述べた
「でも何かで区切られてないと分かんないよ 今まで沢山の人がそう言ったばすだ!」
ババン!と強く出た が…
「えー?もしかして桔梗知らないのぉ?」
「…?」
「世間知らず〜 このヴィタ先生が教えてあげよう!」
まず原因は引き籠もりが故世間を知らない無知な私が悪かった
驚いた 今はアース王国とステラ王国を繋ぐ道が山中を 海中を通って車で行けるらしい 他にも電車やバスでも行けるとか
「周りは危険な獣ばっかりだから普通外から入ってくる人はいないよ?ましてや歩いてだなんて」
「そうなんだ」
それだけ私は心が参ってた
無心になって歩き続けなければ壊れそうな気がした
一人の夜程寂しいものは無い
「にしても色々あったんだねー」
痛みが癒えたヴィタは立ち上がり真っ直ぐに見つめてくる
その瞳は琥珀 整った顔立ちに兄と似てツリ目
兄妹揃ってこの容姿 正直嫉妬した
「私はこれから不法侵入で裁かれるの?」
「そうだな 俺達が長に報告すれば…な」
すれば…って事は報告をするか否か お前の今後は俺達が握ってるぞ という風にも聞こえた
がここで切り崩すのがもうお馴染み ヴィタ
「報告はしない!だって私まで赴かなきゃいけないし めんどーだもん」
「おい それはお前が決める事じゃ…」
「その変わり 少しお手伝いしてもらう それでいいね 桔梗」
頷いて了承した イドラは呆れた様子
お転婆娘や我儘 身勝手 そんな印象を受ける たが持ち前の明るさと積極性 それに嫌な言い方をすればこの馴れ馴れしさ
ヴィタには人を惹き付ける魅力がある
「そうと決まれば!ラテンに染まってもらいます!」
「え?」
「兄 外で待ってて」
ここはラテン村 生後まもなく 古くからの習わしにより紋章が刻まれる
ペイント(彫り師)と呼ばれる専門家が紋章を体に彫ってくれるらしい
「紋章は何でもいいの ただ出来るだけ見える位置に彫るのがルールって感じかな」
「へぇー それはどうして?」
「ラテン出身かすぐ判断できるから」
この村では蛍海をすり潰し濾した液体で紋章を彫る
そこに染色液を混ぜて使う訳だ 蛍海により彫られた紋章は水を弾く 熱にも強く擦っても紋章は崩れない
「と このように紋章が存在するのです」
ヴィタは右脇腹にある紋章 ラナンキュラスを見せてくれた イドラは首元にヒイラギがあったな
「ヴィタ先生 勉強になるよ」
彼女は照れくさそうに笑った 可愛いな
「あとはラテンの衣装 私の貸したげる」
肌に優しい素材で作られた編み物の衣装 着心地は充分いい ただ不満が一点
サイズが少し大きい 彼女はπがあるから そこだけが不服だ 不平だ 許せない
「よし それじゃあ行こ 桔梗」
「うん」
外で待っていたイドラと合流する
初めての友達が出来た そう思った 嬉しい
「おおーここがラテン村!賑やかだねぇ」
「まぁ 隣がステラ王国って理由もあるけどね」
隣が音の国本拠地な事もあって音楽は盛んだ
それぞれがそれぞれの生業を持って生計を立てている
「でも今日は何かあったみたい」
走ってステラ王国に向かうラテンの兵士が見えた
「王国で何かあったみたい」
この時はあまり気にとめなかった
だって歩く度に鼻をくすぐる美味しい匂いがあちらこちらでするから
「見て桔梗 これはジューク サクサクで少し塩っけのあるお菓子 食べてみて」
「ん!美味しい ポテチみたいだ…どうしたのヴィタ?」
「ぷくく…それ実は羽衣飛蝗だよ」
「バッタ?へ〜揚げたらこんな美味しいんだね〜 知らなかった」
ヴィタは少し面食らった顔をしている 普通他所から来た人間は違う食文化に抵抗を覚えたりするものだ
「桔梗 変わってるね〜」
「そうかな〜 あ 奢ってくれてありがとう」
「おい 早く行くぞ」
揚げた羽衣飛蝗を丁度完食した頃
「着いたよ」
見えたのは奥に続く暗い洞窟
「洞窟 明かりはあるの?」
「蛍海を使う」
空のランタンに入れると中で光が反射し暗闇の世界を照らしてくれる
歩きながら説明する
「ここは礎の洞 この奥にはメタモル鉱石が手に入るの」
メタモル鉱石 この使ってるランタンの素材や机に椅子 その他色々 この鉱石でヴィタは装飾品を作って販売してる
「動物の糞や死骸 色々なものが雨によりこの洞窟の奥に雫として落ちてくる」
それが結晶になり鉱石を作る イドラの能力を使って鉱石を取るらしい
「おい 魔物だ」
ピタッと足が止まる 前にいるのは所謂魔獣
魔獣とは害を成す(人を襲う 家畜を殺す 街を荒らすとか)ものを言う
洞窟に住み着く毛蝙蝠 咬飛種だ
暗闇に特化した眼を持ち毛で覆われた身体は攻撃を通さない 牙で噛み付く
「何あれ 気持ち悪い」
「あれ 丸焼きにしたら美味しいんだよね〜」
「ほんとぉ〜〜!!!(*´﹃`*)」
「おい!油断するな 来るぞ!」
鋭利な牙をむき出しに 耳障りな鳴き声で襲ってくる
イドラは右腕を刀に 左腕を盾に変形させる 手際良く一羽二羽三羽…盾で噛み付きを防ぎ刀で斬る
ヴィタは翼を生やし右腕を刀に変える 毛蝙蝠に劣らない速さで次々と倒していく
私?私は見物人 当然だ にしてもヴィタどんな能力なんだろう 不思議だ
「お前も手伝え 長に言いつけるぞ」
「いや〜それが 一旦後で話していい?」
手っ取り早く始末した後に待ち受けてたのは容姿抜群兄妹からの見下し尋問タイム 私は正座
「お前の能力はなんだ 答えろ」
イドラに見下されると萎縮する 本人に自覚があるのかないのか 顔が怖い 睨まれたらパない
「ダチに隠し事は無し!さぁ〜教えてもらうかぁ〜」
ヴィタに見下されると見蕩れる 並ぶ2つの丘 美女に見下され罵倒されたいという方におすすめ 罵倒はしないけど
「実は私…」
私の知る限りの過去を話した
「えーーーーーーー!!!」
イドラは無口のまんまだ 能力が無い人間にどう反応すればいいか迷ってるようだ
「ごめん 隠してて」
「いやいやいいよいいよ!びっくりしたー」
「お前 本当に能力が無いのか?」
イドラはまだ疑ってるようだ
「残念ながら本当だよ 何をそんなに疑ってるの」
「お前から異質な気を感じた 初めに出会った時からだ お前を俺はまだ信用してない」
ここに来て衝撃発言 私は目を見開いた 彼が感じた違和感は恐らくあれだ
私の母が消息不明になった翌日 自身の体から不気味な物が蠢いている
それはとても禍々しく この世のありとあらゆる不純物を混ぜ合わせたようなもの
「ヴィタ 俺は家族を護る事を最優先としている」
腕をライフルに変形し私に標準を向ける
「ちょっ 兄!少し話を…」
「ヴィタ!…もう家族は お前だけなんだ」
今の言葉で彼が過剰に反応する理由が分かった 家に両親は居なかった 恐らくもういないんだ
彼の直感は 嗅覚はその危険を察知していた
「殺すの?」
「あるんだな お前の中に 能力ではない 別の何かが」
ヴィタは不安そうにこちらを見つめている
「出せ」
「…え?」
「出せ お前のその能力ではない何かを 出せ」
「でもこれは…」
出してはいけない 本能で直感したから
「そうやって お前はずっと逃げ続けるのか」
ヒイラギの花言葉 用心深さや保護 そして先見の明と言う意味がある
「うるさい お前に…」
イドラはとっくに見透してる 過去の話を聞いた時から 私がどんな人間かを
「お前に…」
ずっと逃げて来た 小さい時から 人から 現実から そして私から だから宛もなく旅に出た
意味とか見いだせないのは私が逃げたから 現実に向き合えば壊れると思ったから そして今全て述べた事が逃げた事実への見苦しい言い訳だと言う事も
「お前に何が分かる!」
全部理解していた上で それでも尚 私は逃げた
「お前に…何がっ…!」
暴れたい 今迄の苦しみとか!悲しみとか!怒りとか!嫉妬とか!全部忘れる為にただ!暴れたい!!
募ったものがそれに力を分け与える それの名前は "闇"
「お前に俺の何が分かるんだ?」
まるで人が変わったように 明るかった色が深く黒い色に染まる
(口調が変わった…それになんだ あの黒紫の禍々しいものは)
両腕から湧き出る闇 不規則に 流動的に動くそれは見るだけで不快感を伴う
「さっきから偉そうに…」
「桔梗 どうしたの!?ねぇ兄!!」
「離れてろヴィタ 俺が止める」
「闇剣 et 炎」
腕から溢れる闇が剣の形を成す そこに加えて闇の炎を纏っている
「お前を殺せば 心の底から笑えるかな?」
「どうだろうな それはお前次第だ」
イドラは見逃さなかった 一粒の涙が桔梗から零れたのを
制御が効かない 決壊したダムが止めることを知らないように
そうして二人の闘いが始まった
その気配を感じ取り二人の男女が近付いていた
男の名はフルファイル 女の名は栞 那由多
ここらか桔梗の物語が 一ページ目を綴る
ホトユリ・イドラ(18)
好きな物 脂身の少ない肉
嫌いな物 甘すぎるもの
特技 50m5秒




