Ж-22 双 星 召 顕 ~Chaos/Cosmos~ ②
「見よ! このように! 魔皇・ノエル・L・メタトロン様も、
我等を祝福しておられる! 怖れる事はない!
ただその御加護を供じ、 その御慈悲に深謝せよ!
人為らざる偶像も、 その従属である勇傑も、 我等からは眼を背けた!
なればこの御方に添う事に、 一体何の惧れが在ろうか!」
打ち合わせしてないのに合わせるの巧いな爺ちゃん。
使える男は機転が利くというヤツか。
オレもちょっと小首を傾げて不思議ちゃん度をアップしておく。
無表情、 無口キャラは正ヒロインより人気出るからな、
多少あざとくてもやれる事はやっておく。
そこで一度指を弾くと、 空中に配置していた氷片が粉々に砕けて
乱反射を繰り返しながらハラハラと舞い落ちる。
全然意味の無い光景だけど 『宗教』 ってそういうモンでしょ?
何かカルトの教祖にでもなった気分、
極彩色の煌めきへ陶然となってる者達にチョイと罪悪感。
やがて氷塵が夜気に呑まれると同時に訪れる一抹の静寂、
一寸先も危うくなる暗闇の中に、 一際鮮やかな英姿が現れる。
真・打・登・場!!
脳内でアビスと一緒にキャー、 と叫びながら
今度はバレないように指を袖の中で弾き
その身に纏った黄金色の闘氣をより誇張する。
っつか明らかに前より輝度と密度が向上ってねー?
オレが寝込んでる間にみっちり修行してやがったな、
一体ドンだけの魔物を倒したんだか、 ズルイぞ相方?
夜風に靡く美しい金髪以上に、 闇夜に鮮烈に迸る黄金の闘氣は、
正にその存在を示すが通り英霊の顕現だった。
「幾多の困難に打ち克ち、 忍び難き苦難にも決して
膝を折る事のなかった儚くも強き者達。
まずは卿等の不撓の精魂に、 敬意を表したい。
この異邦の世界に来訪し、 不知に等しき我が身なれど、
貴君らと邂逅出来た事は、 望外の歓びであると切に想う」
爺ちゃんの老獪さやオレの姑息な手段とは違う、
一部の打算も媚びもない言葉。
多分、 本気でそう想ってる。
現に場を支配する空気が和らいで来てるよ、
さっきまでみたいな威厳による畏怖や
未知に対する当惑じゃない。
だってその澄み切った声にオレですら呆然となってるんだもの。
ヤバイ、 今の相方になら〇られてもイイとか考えちゃってる。
その手の動画は観た事ないけどね、
昔の武将にそんな風習があったってのは聞くけどね。
そんなBLチックなコト考えてる阿呆な魔皇は無視して
英霊様の声は響きますとも。