Ж-22 双 星 召 顕 ~Chaos/Cosmos~
夜の帳が薄くかかり、
若干窶れ気味の三人がフラつきながら姿を現した時、
テラス越しの山荘前には村中のハーフ・エルフがずらりと顔を揃えていた。
両脇に篝火が焚かれその特徴的な耳のある風貌を照らしている。
本当に、 ハーフ・エルフしかいないんだ。
寿命が長いっていうのは本当みたいで、 みんな若くて精悍ってか、
ハクエイの爺ちゃんみたいな老齢の人は数えるくらい、
中年層もかなり少ないように見える。
はっきり言って雰囲気は良くない、
サーシャの周りにいる子供連は興味深そうな視線を向けてくるが
その周りの大人達は一様に渋い顔をしてる。
試しにさりげなく手を振ったら舌打ちされたよ。
(サーシャは嬉しそうだったけど)
相方も同じ様にしたのに差別だ差別、 魔皇差別だ。
謝罪と賠償を以下略。
「よく集まってくれた皆の者」
真ん中にいた爺ちゃんが一歩進み出る、
それだけで周囲のザワめきがピタリと収まり
剣呑な空気が緊張に変わった。
改めるまでもなく人望と求心力は相当だなこの人。
こうして皆をまとめてる姿を見ると
毛玉みたいな容貌もカリスマ滲んでるように感じる。
「先に申し上げた通り、 “神託” に拠り魔皇陛下がこの地に降臨なされた。
更に慮外の僥倖に拠り英霊閣下まで帯同なされた。
此れは瑞兆である!
力無き我等に、 堪え難き辛苦を受容するしかなかった我等に、
遂に天が救いの手を差し伸べられたのだ!」
チト大袈裟じゃね? と想ったが喋り口は巧いなこの爺ちゃん。
端々に挟み込む用語も、 意味が解らなくても
感覚で伝わるように工夫してある。
言葉に緩急付けて大仰な身振りも加えてるから
早くもみんな聞き入ってるよ。
ンじゃオレもちょっとだけ手助けしようかね?
「おおおおおおぉぉぉぉぉ!!!!!!」
周囲から驚きの声があがった。
氷の魔導の応用、 砕いた氷片を空中に散布し、
顔を出し始めた月明りと篝火の光を反射させただけ。
でもライトだのネオンだの知らない人達からすれば驚くだろうね、
一応角度付けて幻想的な色彩になるよう調整してるし。