Ж-19 纏ろ得ざる者 ~Disapproval Tribe~
そんなこんなで聞き出した耳長っ娘の名前は “サーシャ”
この 『深淵迷宮』 の浅層に隠れ住んでる
“ハーフ・エルフ” の娘だそうだ。
本人の話とアビスちゃんの助言をまとめると、
どうやらハーフ・エルフって言うのは他種族との混血であるため、
「迫害」 を受け易いのだそうだ。
特に “同族” の差別意識はその永い寿命とも相俟って根強いらしく、
今じゃ紛い物、 雑ざり物の謗りを避けらないらしい。
『エルフ族』は、 その生まれつき高い魔氣と英知により
この世界ではかなりの権威を保持している種族らしいのだが、
それ故にその高貴な 「純血」 を穢す者に対しては容赦がないらしい。
護るべき社会もなければ国もない、 種族すらない
“寄る辺無き者” に、他者が一体どんな仕打ちに及ぶかは
想像に難くない。
何しろどう扱ったって罰せられないわけだから、
可哀想にと保護するんじゃなく 「奴隷」 として冷遇にするに決まってる。
善い人間は存在するが、 そうじゃない奴はもっといっぱいいるからね。
オレらの世界でも別に珍しい話じゃなかったし。
だから――
「どうして私なんかに、 こんなに優しくしてくれるんですか?
私は、“ハーフ・エルフ” ですよ?」
無垢な表情で告げられたこの言葉には相方がマジギレしてたわ、
オレはふ~ん、 ってカンジだったけど、
誰もソレを否定しない事にキレてたんだね。
どーでもいーけどミウ、 泣くか怒るかどっちかにしろ、
こーゆー所は人間の子供みてーだなコイツ。
まぁそんな理不尽やらや不条理やら結局オレらにはどうしようもないから
兎に角、 彼女をその隠れ集落とやらに送ってお終いという事にしたよ。
無論、 村の中までは行かないけどね。
尾行には充分注意するけど、 本当に隠すなら知らないに
越したことないしね。
独り言や相方との何気ない会話の中に漏れるかもだし、
どこで誰が聞いてるか解らない、
異能、 魔導具、 魔物にだって人語を解すヤツがいるからね。