Ж-2 招かれざる者 ~too late? not、already too late!~ ②
「聖 霊 光 耀 枷!」
うお! ジジイの一人が何か撃ってきやがった、
足元がピリッとしたから反射的にバック・ステップ、
ついでに隣の彼の腕も掴んで、あれ? 軽い?
反応してたっぽい? 余計なお世話だった?
ヴァジリィィィィッッ!!
それまでオレ達がいた場所に、 直径1メートル位の魔法陣が出現して
雷みたいな光がバリバリ迸ってる。
ニコラ・テスラの交流じゃないから触れたら多分マジヤバイ、
ついでに路上で柔道マジヤバイ。
っつか何で2発撃つんだよ!?
魔王ってオレだけだろ?
さっき 「成功」 とか言ってたじゃん。
「ザフィケル様! 何故英霊殿にまで!?」
お、 ジジイの側近らしきヤツが代弁してくれた。
声からして女の子だね、 フード被ってるから顔は解らん。
言われた方は鬱陶しそうに言葉を遮る。
「既に、 魔皇に 『魅了』 された可能性が在る。
最悪、 諸共に “封具” で縛らねばならぬ。
源力減衰は痛いがな」
≪CAUTION! “封具” とは――
この世界での異能、 魔導、 闘氣等を封じ込めた器物の総称です。
その中には、 竜帝種や魔皇種にも効力を発揮するモノが存在すると云われます。
主は未だ生誕なされたばかり、 BE CAREFUL!≫
あぁ、 なるほど。 道理でさっきからこいつら、
半端な萌えキャラみたいにあわあわして近づいて来ないかと想ったら、
オレ達の処遇に困ってたわけね。
そりゃこんだけ殺しておいて、
折角出た 「成果」 まで殺しちゃったら大損だからね。
“そーゆーコトじゃねーだろ!”
あ、 何か改めてムカついたらオレの身体から炎みたいのが噴き出る。
コレが、 『異能』 とかいうヤツ?
本来視えない筈の 「力」 という概念が 「具現化」 してる、 みたいな?
お、 ヤツら怯ってる怯ってる。
そーだよな? オレはヤツらを殺せるけど、 ヤツらはオレを殺せない。
「先行投資」 は既に支払ってしまってるわけだから、
そう簡単に諦め切れない、叶わない夢と同じで。
それに “封具” とやらが在る以上、 オレを 「使役」 出来るんだから
なまじ可能性が有るだけに、 余計に 「損切り」 が出来ない。
だから保留か棄却かの判断がつかず、
思考と身体が 「硬直」 しちまっている。
あれ? これワンチャンあるんじゃね?
≪CAUTION!≫
蹴り足で踏み切って駆け出した身体が、 信じられないほど速く動く。
自重も軽くて羽毛みたいだ、 瞬時に変遷する周囲の景色も
まるでコマ送りを見てるみたいにはっきりと認識出来る。
秒間を更に凝縮した、 ミクロの世界なのに。
≪強化異能、 「汎用感知」、 並び、 「疾風迅雷」、 並び、 「精神集束」、
並び、『思考超加速』 発現! 定着、 不備無し。
PLEASE USE IT! 我が主よ!≫
あ? 何? さっきから脳内で色々くっちゃべってたけど、
時間がそんなに経ってなかったのは異能の所為?
常態発動? って、うお!
≪CAUTION! 非敵性個体、リュカ・サンダルフォンを解析。
特質異能、 『武芸者』の覚醒を確認。
英霊誓約、装纏・98%! 問題細微!
DURATION USE IT! 我が主よ!≫
いつの間にか隣に草薙クンがいる!?
オレより速くね? っつか付いて来ちゃったの?
まぁこの腐れ外道共と一緒に行くってのは
〇〇勇者コースBAD・ENDまっしぐらだろうけど、
オレと一緒に居るのも悪手じゃね?
たったの3蹴りでザフィケルとか呼ばれてた
一番偉そうなジジイの前に付く。
うおぉ! ジジイの顔面、 アップで見たくねぇ~!
何か知ンねーけどスゲーよく視える!
見えちゃいけない毛穴とか皺の奥とか!
護衛らしき手前の騎士共は一瞬でブッちぎった。
流石に剣は抜いてるけど遅い、
ボールがミットに入った後バット振ってるみたいなモン、
「硬直」 してなかったらこうはいかなかっただろうがね。
前を向いてるのに、 何故か背後の様子が理解るのも異能のおかげ?
まぁいいや、後でアビスに訊こう、
取り敢えず喰らえ!
親指を拳に握り込んだオレの我流!
欠点は3発も打つと中の親指がイカれて使いものにならなくなる点だが、
元よりケンカなんて一発目が全て、 路上のカリスマもそう言ってた!
遊びで殴るのと殺す気で殴るのとでは威力が違うんだよ!