EPILOGUE ~Death & Rebirth~ ④
――ヤベェ。
死ぬほど、 気持ち悪ぃ。
合わない安酒で悪酔いした時の、 数千倍の気持ち悪さだ。
正直死んだ方がマシ、 明日なんてこなければ良いのにと
ス〇ロボに参戦出来ない某漂流巨大戦艦のヘタレ主人公張りに
寝込みたくなる。
あぁ~、 でも此処は一生引き篭もりたくなる
住み慣れたマイルームではなく魔物が跋扈する 『深淵迷宮』
このまま寝込んでたらガチで喰われるよね?
ってか今のこの状態も喰われた後だからじゃないよね?
腕も脚もキショイけど一応感覚はある、
魔物の胃袋で溶かされてないと良いなぁ~と
重い瞼を開けた瞬間。
「……」
暈けた視界に入ったのは金髪の美少年。
おおう、 こいつぁ極上だぜ。
単行本を 「縦」 にしろって言われても知らんがなって話だけどね。
「ようやく、 眼を覚ましたか?」
炎に照らされた風貌、 若干、 憔悴しているように見える。
焚き火の中で爆ぜた枝が音を鳴らした。
辺りは、 既に真っ暗、 頭が朦朧としているのとは関係ないくらい。
「まずは、 これを飲め」
簡素な鉄製のカップに、 何やら熱い液体が注がれている。
疑問は置いといて取り敢えず受け取り、 両手で捧げ持つようにして中身を啜る。
ゲホッ! 苦ェ! それも単一の苦さじゃなく何か色々混ざった複合的な苦味が
それぞれ太さの違う棘で舌を突き刺す、 宛ら悪意の塊みてーだ!
あ、 でも飲めなくない。
味は最悪だけど何か気持ち悪さが若干薄らいだみたいで
躰が拒否してない、 寧ろ欲しているようだ。
「私が採取していた薬草と解熱、 復調作用のある野草を清水で煮出したモノに、
ポーションを混ぜた薬湯だ。 布都も、 随分尽力してくれた」
ほうほう、 オレのためにわざわざ煎じてくれたわけだ。
悪いね相方、 って言いたいんだけど声が出ねぇ。
何か口唇が戦慄くだけで言葉にならない、
だから疑問も口に出来ない。
今、 “ポーション” っつったよね?
あとこの鉄のカップも 、一から造るって無理だよね?
材料無いし設備も無いしオレはブッ倒れて寝込んでたし。
そのような疑問をカップに注がれる視線だけで察したのか
リュカが何か投げて寄越す。
珍しくブッきらぼうな態度だな……
そこに転がっていたのは、 青い、 シガレットケースみたいな革製の箱。
妙に凝った装飾と銀製の留め金も付いている。
生まれたての小鹿みたいにプルプル震える指先を伸ばすより先に、
リュカが拾い上げてボタンをパチン、 と外す。