Ж-1 禁 忌 召 喚 ~Victim of Sacrifice~ ③
「オレの、 オレの息子……」
「あぁ~、 〇陽にほえろ風に叫んだ所悪いのだが」
全米が泣いた! と言っても過言ではない悲哀の表情で
えぐえぐと嗚咽するオレに横の美少年が
若干引き気味に声をかける。
「私は、 草薙 陽ノ介という者なのだが、
此処は、 一体何処なのだ? 知っている事があれば教えて欲しいのだが」
「えぇ~、 江戸時代の、 人ですかぁ~?」
未だに 「息子」 の喪失から立ち直れないオレは
泣きじゃくりながらも足元のシーツを彼に渡しながら応じる。
「いや、 よく言われるが現代人だ。
一応まだ20代だ。
名前と口調は、 あまり気にしないで貰えるとありがたい」
20代って、 その姿とショタ声で言われてもね。
行くとこいけば一時間ン万円コースは固いんじゃないッスかぁ、
知らんけど。
「オレだって解ンないよぉ!
気持ちよく寝てたら変な 「声」 に危険だのなんだの
呆戯かれて叩き起こされたのぉ!」
「声? む、ぅ」
ヤベッ、 涙声だから声が若干萌えキャラっぽくなっちまった。
っつか今のオレ、 完全に少女声ってかアニメ声になってんじゃん。
演技しない声優の地声っつーか、
ラノベのヘタレ主人公ならものの2秒で落ちるっつーか、
バカッ! とか おまえのせいなんだから!
とか抜かしたら〇〇〇が狂喜乱舞っつーか、
ツンデレキャラじゃん! 今日日今更!?
い、いやだあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!
「くぎ〇つっても、 もう〇〇〇じゃんよぉ……」
今度はハラハラと静 か に泣くオレの背中を
ショタがよしよしとしてくれる。
本当で良いヤツだなこいつ。
仲間ンなる? 一緒にギャング組織乗っ取る?
「依代の解析、完了致しました!
リュカ・K・サンダルフォン! 『英霊種』 です!」
白いローブを纏った若い男が少年になんか言ってやがる、
手になんか紫の水晶玉持ってるね、
途端に周囲からおぉ~! と歓声があがった。
「やったぞ! 成功だ!」
「勇者種ではなかったがこれならば!」
「しかも英雄種ではなく英霊種とは!」
なんか知らんけど喜ばれてるよ、良かったねリュカ君、
いや、陽ノ介君、 だっけ? そう想い親指をグッとして向けるオレに対し、
彼は何故かビビったような表情で、 首を振りその細い顎で周りを差す。
「メタトロンの娘の解析はまだか!」
「申し訳ありません! 魔氣が淀んで混沌としており
術式が阻害されております!」
「早くせよ! これ以上陛下の御心を煩わせるわけにはゆかぬ!」
「成功」 とやらの所為で俄然偉そうになったジジイ共を無視して
見渡した周囲、裸で白い布に寝かされていたのは、
オレ達だけじゃなかった。
10、20、30……パッとで数え切れないくらいの
少年少女がそこに寝かされていた。
一糸纏わぬ姿で眠りにつくその円周の先には、
視界に収まらないくらいの超巨大な魔法陣が拡がっていた。
「お、おい、 ちょっ、 と……」
思わず左隣に寝かされていた少女の肩を掴み、 揺する。
冷たい。
同じ人間とは想えないくらい、 恐ろしく冷たくて、 固い。
リュカの方も同じように隣の少年の肩を揺すり、
起きろ! 起きろよ! と必死に訴えている。
もしかして、 もしかしなくても、 完全に死んでる。
だってその少女の淡い脹らみには鋭い刺突痕があり、
そこから血が流れて脇腹の辺りで固まっていた。
蝋のように白く冷たい肌、 凝結した血液、
涙の、 痕。
≪CAUTION!≫
夢の中の声が頭蓋で響いた後、
オレに向けられていた水晶玉が暴力的な音を立てて砕け散った。
「何事だ!」
「まさ、か……嘘だ……嘘だ……
我々は、 我々、 は、 なんというモノを……!」
若い男が引き攣った表情で首を振りながら後退る。
「報告せよ!」
「一瞬だが、 視えました……
この娘、 は……ノエル・L・メタトロンは……!」
≪特質異能 『創造者』 の強振に拠り、
【號魔異能】 『憤怒』 覚醒!
【魔 皇 種 源 泉】 憑着・128%! 不備無し!
CONGRATULATION! MY MASTER!≫
「魔王! 否! 【魔皇種】 です!」
左の眼窩に、 灼け付くような激痛。
誰が為なのか、 紅い鮮血がドロリと瞳から滴った。
NEXT PHANTASM…Ж