Ж-14 魔 皇 単 騎 ~Running To Horizon~
さてその後だが、 調子に乗って二陣、 三陣と焼いてしまい、
どこぞの蜘蛛サンみたいにお残し厳禁とばかりに
食い漁ったのでしばらく動けなくなった。
スライム共が膨れたオレの腹をトランポリンにして
遊びやがったので魔導ブッ放そうとしたのを相方に止められる。
しかしやる事はたくさんあるので少し腹が熟れた後
無理して行動開始。
肉は鱈腹喰ったがそれでもまだかなり余ってるので
腐る前に煙で燻す。
「燻製にもしますよ~♪」 というネタを相方が解ってくれたのが
地味に嬉しい、 後で 「無空波」 教えてやる。
やり方は簡単、 肉を伸ばした蔓や鈎針状に変形させた枝に吊るし
その真下で火を焚くだけ。
材料の木屑はたっぷりあるし後は火力と煙を留める事に
気を配れば良い。
魔導の練習も兼ねて造った 「箱」 は二つ。
『樹 海 ノ 異 図』 で幹を操り直方体にしたモノ。
『千 ノ ナ イ フ ガ 胸 ヲ 刺 ス』 で
やや薄目のプレートを造ってソレを張り合わせたモノ。
素材の違いでどう味が変わるかチト楽しみだ。
応用とはいえ魔導を遣ってるから中の肉の様子は逐一確認できるし、
燻煙が熱く成り過ぎたり濃く成り過ぎた場合は
『不 夜 ノ 旋 風』で吹き流せば良い。
オレもまさか生活圏内で魔導の制御するとは想わなかったよ、
普通こーゆ―魔法的なモノって戦闘の中で
御都合主義的にパワーアップするモンじゃないの?
「オレは負けない!」「私は諦めない!」 とか言って、
イヤ何が普通かと問われるとオレも困るんだがネ。
取り敢えず解った事は威力や精度を下げると
『想念詠唱』 は必要じゃないコト、
当然魔氣の消費もソレに準ずるね。
まぁ元々戦闘用の魔導だしソレを燻製造りに使えばそうなるわなぁ~、
後空間に展開する場合は自分の魔氣のみじゃなく
大気中に存在する魔那も利用した方が
術式が滞りなく発現すると云った処かな?
さて、 保存食造りに精を出すオレとは裏腹に
相方は草むらに座したまま一向に動かない。
無論サボっているのではなくその前には、
昨日からの戦果、 解体された魔物の 「素材」 がズラリと並んでいる。
いずれも皮を剥いだり、 牙を顎部から取り外したり、
肉から骨を削ぎ取ったり、 爪を根元から抜き取ったモノなど
血腥い代物の数々だが、
『数寄者』 の異能に拠って無駄なく緻密に解体されたモノなので
切り取られた各部位に醜悪な杜撰さはなく
寧ろ技巧の機能美すら感じさせる。
暫し瞑目し眼を開いた相方は、
「すまないが」
とオレを呼び、 待ってましたとばかりに傍に寄った後
頼まれたモノをちゃっちゃと魔導で造り出す。
針と糸と、 出来ればナイフみたいな小刀だってさ。
OK、 OK、 お安い御用。
何となく目的を察したので鋏も要る?
と聞いたところ是非にというコトだ。
どちらも前述の魔導で簡単、 糸は蔓と木の皮を細かく裂く。
5分と掛からずそれぞれ大きさを違えた針と刃物、
二種類の糸が出来上がる。
頻りに感謝されたがなんのなんの、
ニートは仕事与えられりゃ働くぜ、
ただ 「面接」 受けにいくのがイヤなだけなんだぜ。
と、 もっと働きた~いとその作業を見守る。
寝そべってこ〇たスマイルで見つめていたのだが、
なんかやり辛そうなのは気の所為だろう。