Ж-13 もう一つの大罪 ~Another Deadly Sins~
炎の揺らめきと爆ぜる木の音、
地に刺さった大剣に纏わる草笛の音。
「最後かも、 しれないだろ……」
そう呟いたオレは立ち上がり徐に小高い丘を上っていく。
「だから、 全部話しておきたいんだ……」
そんな某大作RPG10ごっこをした後、
微妙な雰囲気のままいそいそと褥についたのは
ソレを無かった事にしたかったのか違うのか。
取り敢えず草笛まで吹いてくれた相方に申し訳ないと想ったのは確かだ。
一応の寝床の確保は、 思ったよりも手間が掛からなかった。
火は魔導で熾せるし生木も一度火がつけばよく燃える。
ラクュの実が取れる大樹の下、 今日修得した魔導、
『樹 海 ノ 異 図』 で枝、根を操って編み込み
簡易の防壁に、 蔓もきつめに絡ませて全体を補強する。
更に葉を操って大量に降らせた後、
水分飛ばして半乾燥、 地面に敷き詰めた後、
残りを樹液で繋ぎ合わせればまぁなんというコトでしょう。
天然の寝袋に早変わり。
魑魅魍魎が跳梁跋扈する阿鼻叫喚の 『深淵迷宮』 で、
快適な夜の眠りをアナタに提供致します。
今なら底に尖った杭付きの落とし穴を、 10個ワンセットで御提供。
その周囲に張り巡らせた荊もアナタの眠りをサポートしてくれます。
更になんと、 全品オレの魔導が付属しているので
危険な輩が侵入した場合、 即座に感知出来る探査能力付き!
ここまでついて魔氣はオレが調子に乗りまくって
バタンキューする程度。
ちなみに夕餉は取り置いた各種食材と拠点に生っていたラクュの実、
そしてこれが非常に腹立たしいのだが、
その樹の根元や洞の中で普通に生えてたキノコ
(無論リュカの解析済み) が、 圧倒的大差で美味かった。
あんだけ苦労したのに (主に相方が)
あんなに魔物に追いかけ回されたのに、
こんな近場に高級食材が。
本当に大切なモノは、 一番近くに在ったんだ!
やかましい! 〇ね! もう寝る!