Ж-12 樹 海 ノ 異 図 ~Disaster Of Green~ ⑤
無動の敵故に途轍もなく大きく振り被る事が可能となり、
ソレ故に存分に溜めこまれた力を強く踏み込むと同時に
繰り出した瞬間に両手持ちへと切り替えた大薙ぎ払いが、
腰の捻転と肩、 肘の旋廻も相俟って
文字通り緑の一閃と化し獣達の首を拘束ごと
清々しいほどの斬れ味で刎ね飛ばした。
血が噴き出す寸前の赤い肉の裂け目に邪な笑みを深くしたオレは、
盾に成り得る巨大な刀身の腹で熱い返り血を受け止める。
流石に魔物、 首を刎ねられたとはいえしばらく四肢は動いており
その傷口も不気味に蠢いていた。
(死後に発動する異能とかはなさそうだな)
流石に用心深過ぎとも思ったが一応完全に絶命するまで
きっちり確認したオレは、 そこでようやく骸共に背を向け拘束を解く。
左手で大剣を担ぎながら指先を弾くと、
あれほど強固に全身を引き締めていた森の縛鎖がスルリと解け
六つの首無し胴体がドサドサと地に落ちる。
遠間の “早贄” にはそのままだが戻すのメンドイからそのままにしとく。
「見事なものだな」
超速の 「前衛」 を務めてくれた今回の功労者が槍を肘に抱えながら
厳かに拍手を送ってくれる。
……まぁ色々想う処はあるのだが何も言わず彼の賛辞を受け止める。
代わりに。
「やる」
オレは担いでいた魔導の大剣を無造作に差し出す。
「よいのか?」
受け取る仕草からしてもう柄が手に馴染んでいるように感じた、
だからオレは事も無げに私見を漏らす。
「オレの躰じゃ、 多分その大きさに引っ張り回される。
使えないわけじゃないけど、 魔導の邪魔になる。
はっきりいって素手のがマシ」
いまはね、 と一応脳内で加えておく。
「ふむ、 今 “数寄者” で 「鑑定」 してみたが、 かなりの業物だな。
『樹緑』 属性という、 稀少な特性。
こちらに不利な属性が少ない上、
殆どの属性に対し減衰する事がないようだ。
硬度も相当なモノだ」
「木材も熱なりなんなりで超圧縮すれば、 ノコギリでも切れなくなるからね。
オレの魔導で想いっ切り森の魔那ブチ込んであるから、
ダイヤ並に硬くなってるんじゃない?」
そう言いながら光の加減でやや緑がかって視える刀身を一瞥する。
鍔も柄も蔓や樹幹の捻じれを想わせる装飾が入ってるが
使い勝手は悪くない筈だ。
さて、と。
ンじゃ 「仕上げ」 に掛かりますか。
頭ン中でアビスちゃんがCAUTION! CAUTION!
うるさいし。
「何体か残そうか? 『武芸者』 で 「解体」 とか出来るんじゃない?」
「そうだな。 一体だけもらおうか。 無論配下のモノで構わん。
この剣の “様し” には十分であろう」
「了解ィ」
差し出した左手に魔氣を込める。