Ж-12 樹 海 ノ 異 図 ~Disaster Of Green~ ②
『ヤりおるわ小僧! コレほどの血の滾り、 久しく忘れておったわ!
貴様を屠った後の、 生娘の肉はさぞ甘美となろうな!』
「笑止!」
そんな二人の死闘をオレは樹の影からどこぞのお姉さんのように
ガンバレー、 と声無きエールを送る。
一騎打ちとは言え魔物の気が変わってオレを狙ってくる可能性は高いし、
その隙突かれてリュカがヤられればA級戦犯確定、
助けにいって助けを求める醜態を晒した
どこぞの〇〇ヒロインを笑えなくなる。
っつか布都ってヤツにヌッ殺されんじゃね?
流石にそこまで無能じゃ。
そんなこんなで高速立体機動を繰り広げる二つの影を後目に、
オレは雑用係として周囲の地形に意識を這わす。
彼の性格上、 不確定な要素、
自分の足場にリスとかウサギとか?
小動物が飛び出してきたら絶対避けて体勢崩すだろうし、
そこを虎に狙われたら悔しくて夜も眠れない。
大事な相方の生命を護る崇高な使命!
決してサボってるわけではない。
ないったらない。
……ン?
ちょっと、 待てよ。
『グガアアアアァァァァッッ!!』
そうこう言ってるうち戦局に動きが。
リュカの槍撃が虎の皮を切り裂いたらしい。
余りのスピードとキレで真一文字に飛び出す血、
それでもまだ動き回ってるけど明らかに速度が落ちた、
代わりに槍の手数が半端なく増える。
あぁ~、 こりゃ決まったな。
実力が拮抗してる者同士なら、
ほんの僅かな傾きでも勝負の趨勢を確定し兼ねない。
況してや戦闘スタイルが噛み合ってるのなら、 猶更。
恐らくあの虎にも奥の手的な異能なり魔導なり有るんだろうけど、
あんな矢継ぎ早に攻められちゃソレを遣う暇もない。
出来るならとっくに遣ってる筈。
え? 誰が解説役だって?
うるさいなぁ。 失礼だなぁ。
『き、 貴様ら何をヤっている!? 早――』
一度大きく弾き飛ばされ地に伏した虎が、
攻め掛かる前方ではない場所に吠えた。
ビンゴォ、 来ましたよ、 来ましたよ。
オレは軽く舌舐め擦りし、 来るべき方向に魔導を這わせる。