Ж-80 未 来 劫 路 ~La'cryma Obscuritas,~ ②
「やっぱりな」
最初に口を突いて出た言葉はソレだった。
当たり前じゃん、約束の場所に幾ら近づいても
”巨大な気配”がしねーんだもん。
そりゃ竜族だの巨人だの神狼だのが
持ってるお馴染みのアレだろ?
「 ❝人型化スキル❞ 」
偉そうに武装した鳥人共の真ん中で腕組みをしている
ソイツに逆水平で指差しながら云った。
おまえいつからその体勢で待ってんだよ?
誰も来なかったらどうするつもりだ?
アハハ、唐突に「図星」突かれたモンで怯ってやがる。
このオレが「え!? おまえ獣帝!? 小さくなってるじゃん!」
とかどこぞの〇〇ラノベ主人公みてぇな反応すると思ったか?
ただの色盲じゃねーかそんなモン。
「おまえらの世界」のコトなんざ、
オレらの世界の妄想であらかたヤり尽くされてんだよ。
なんだかんだで ❝繋がって❞ ンだから当たり前だろ?
変な「電波」でも飛ばしてんのか次元を越えて。
「最初からその格好で来れば、オレも”対応”違ったかもな。
あ、ダメか? 「次来たら殺す」ってソイツに言ったといたから」
再度逆水平で差す指先。
魔導の損傷でボロッちまってるが
一応生きて立ってる”レディン”とかいう鳥人に視線を向ける。
おおビクッってなりやがった、一秒の間もなくすぐに諫めたケド。
云うまでもなく相当の使い手だな、
魔導の不意打ち無しで真正面から闘り合えば、
オレ一人じゃ相当梃子摺るかも知れねー。
詠唱に時間かかるしアノ時コイツは戦意ゼロだったからな。
【異世界病】で気分堕ちててムカついてたから鏖そうとしただけ。だってボク魔皇だもん、何か問題が?
「――ッ!」
そうやってそのレディンの眼前に顔を近づける。
嘴と口唇が接するほどの距離に。
謝罪も反省もする気はねぇ、
もう端から考えるのがメンドクセェくらいに
話が拗れちまってるんだから
もうこれ以上無いくらいにまで拗れ散らかす。
「よぉ? 悪かったないきなりブッ殺そうとして。
でも大魔王ってのは遭遇したら
即問答無用で殺しにかかってくるモンなんだ、
オレらの世界の昔のヤツは特に――」
~§夢幻の因果の交叉路にて 僕は双瞳を蔽う蔭に巡る§~
チッ、”囁きが始まっちまった。
武装しててもボロボロの敗残兵みたいな
周りの奴らの姿に異能が反応したのかもな?
獣帝にじゃねーぞ、 こいつらなんで逃げずに付き従ってるんだ?
また魔皇に殺されるとか思わねーわけ?
~§其は万象か或いは劫罪か 朽ちた腕を踠き擁くのみ§~
~§卑者の誓約 愚者の咆哮§~
~§ア・ネヴァ・セイ・レイ・シ・ガ・ネェ・ン・ジャ・モルォ§~
そーいや ”この手” の魔導、 覚えてなかったな
ずっと ❝魔薬❞ に頼り切りだったから。
『初 マ リ ハ イ ツ モ 雨』はその変化系だからね。
「再生」じゃなく『回復主体』のはコレが初めて。
手足の欠損は治せても「体力」は回復しねーのよ、
当然痛みとか疲労とか嘔吐感もそのまんま、
だって”くっついた”だけだもん、
外科手術の麻酔が切れたら痛てーのと一緒。
まぁ本来初歩の魔導だから
特に覚える必要も無かったんだケド――。
~§屡々 我を惟い賜らふ 猜疑無き口吻を§~
~§暗冥の帳の中 寛恕の絆を§~
~§ジ・ヴィ・リィ・フ・フォル・ディス・トーラ・ジェイ・ル・ク・ジャイル§~
~§楚は妄り茨に身共を纏らう§~
覚えちまったモンはしょーがねー。
ここで解除したらどうなるか気になる処だけど
まぁ今回は遣っとくか。
広域拡散型永続式治癒魔導。
『誰 ガ 為 ニ 君 ハ 泣 ク』
ダッサ!
何この 「名前」!?
オレが考えたン違うからな!




