Ж-11 ミエナイチカラ ~Invisible One~ ③
今まで、 嗅いだ事のない匂いの風が長い髪を揺らす。
そこで、 ようやく少し実感した。
此処は、 異世界なんだ、 もう元の世界には戻れないんだ、
昔のオレは死んだんだ、 厭でも此処で生きていかなくちゃいけないんだ、 と。
転生してからずっとフザけてて感情のままに行動してきたけれど、
もうソレじゃダメだ、 絶対ダメだ、
いつまでも相方に甘えてちゃいけないんだ、 って。
だからその気が変わらん内に口に出しとく。
「オレ、 次戦う」
「?」
リュカが澄んだ瞳でこちらを見る。
「次、 何が襲ってこようが絶対戦う!
そうじゃないと逃げ癖つき過ぎて
生き残る所じゃなくなる」
「ふむ、 言いたい事は解る、 が」
リュカは食べ終わった果実を土に還りやすい様に踏み
こちらを見ずに言う。
「君は、 少女だ」
あ、 と反論しようとするオレを片手で制する。
「無論承知している。 だが、 躰の事までは気概でどうにもなるまい。
背水を敷くのはまだ尚早――」
瞬間、 リュカをオレを横抱きにしその場から飛び退る。
先刻まで凭れていた大樹に、 四本の爪痕が刻まれたのを知るのは遥か後だった。
ああ、 また、 クソ――ッ!
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