Ж-79 逢 魔 ヶ 路 ~Devil Load's Road~ ㉒
あぁ~、聴こえてきた訊こえてきた。
ホント節操ねぇな、この源泉、【原初魔導】
その内『自己犠牲自爆呪文』とか勝手に聞こえてきたら
ガチでどーすんだよホントに。
アレ? ”魔法” と ”呪文” って一体どこが違うンだ?
無いとは言い切れないから怖い、オレの性格上。
まぁ、生きるの死ぬの拗らせてたヤツの云う事じゃねーな、
所詮その程度のモンか、オレの苦悩なんて。
ってかブッちゃけ今更ってカンジの魔導なんだよな。
”宝珠”もあるしイノウェもいるし、
「最後のカギ」手に入れた後の「アバ〇ム」ってカンジ?
まぁ何かの役に立つだろう、
❝範囲❞じゃなく『記憶』ってのがなんかルー〇っぽいし。
「はいじゃ、寄って寄ってぇ~」
突如足元から放出された光の魔氣、
在勝な魔法陣から如何にもな紋章と紋字が零れ出し
周囲を揺蕩う。
ベタな魔法は「演出」までベタだ、
オレが考えたんじゃねーからな、
勝手に脳内で魔言が流れて勝手に発動するんだよコレ。
「閃いたのか?」
「今日一日中拘ってコレって感じだけど、
まぁ遅かれ速かれ閃いてただろうね、何度か視たし」
寄ってとは言ったケドその必要無かったな、
結構効果範囲広ぇーわコレ。
だから移動の際「触る」の「抱きつく」のの
〇〇ラノベムーブは起こらない、
そもそもオレと相方だしな。
あ、イノウェどーする?
一緒に来る? 用があるなら「対象」から外すぜ、
”宝珠”と違って「強制転移」じゃないみたい。
あ、いいのか、一緒に帰るのか?
じゃあ行くよ? 遣っちゃうよ?
半領域系追想型転移魔導。
『ツ バ サ ヲ 広 ゲ テ』
おぉ、足元から光帯が迸って頭上へと飛翔、
一挙に縮小する夜の森と拡大する夜光雲。
宝珠みたいな次元転移じゃないのね、
単なる物理的な空間移動だ。
流石に速度は速い、でも「戦闘中」にはまず使用えねーなコレ。
『詠唱中』に動けねーし発動しても一回のただの移動。
『逃走』に使うならワンチャンあるかもだけど
なんか抵抗弱ぇーわ、弱い攻撃魔導でも一発喰らったら
即霧散しそう。
完・全に『移動用』で、相手の超必殺技を避けるとかには
使えなそうだわ。
『記憶』を頼りに移動する魔導なんだな、
”宝珠”は支配領域内なら行ってない場所にも行けるケド、
コレは逆に【明確に覚えてない】と一度行った場所でも行けない。
「電車」で降りないし印象も薄いって「駅」あるじゃん、
アレと大体一緒、だから森の獣道とか行くの無理、
全部一緒に見えるからオレが。
本当に使えんのかコレ?
封印確定スキルの匂いがスゲーするんだけど、
どこぞのニ〇ラムみてーに。
でもまぁ、最初に『記憶』に残ってんのはやっぱ此処か。
意表ついて「最初の城」にでも戻ってやりゃ良かった。
空からズームアップで迫る、夜陰に煌めく ❝精霊樹❞
あ、ばか、ソフィアバラすな。
出来ればこっそり帰って樹の隠し部屋でニ~三日は引き籠るつもりだったのに。
あぁ~あ、真っ先に土埃上げて吶喊して来てるスライムと
ハーフ・エルフと奴隷の少女、それといつものバ、 四人。
もう降りる前から『先のコト』が予想出来る、
どこぞのテンプレかよ、全ッ然面白くねーぞソレ。
あのなぁ、帰ってくんのオレだぞオレ、
英霊じゃねーんだぞ、
ってか相方ちょっと居なくなっても
おまえらそんなに「心配」しねーだろうが
何でオレの場合は違うんだよ?
ンなコト考えてる間に、先刻までの恐怖と絶望が薄らいでくる。
オレの存在が 【仮】 だとしても、おまえらは違う。
どっちにしろ同じなら、もう少しだけ生きてみるか?
此のロクデモネェ場所で。
どれだけ世界がクソだとしても、
人間はそうじゃないから――。
「姫!」
「姫ッ!」
「魔皇サマ!!」
「おひいさま!」
「女の神サマ!」
『ママァ~~~~~ッッッッ!!!!』
聲が聴こえる。
人間の声が――。
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