Ж-79 逢 魔 ヶ 路 ~Devil Load's Road~ ⑰
ハイ、ってなカンジでやって参りました
岩山の迷宮。
正直二度と来る事ぁねぇと想ったけど、
まぁ成り行きだ、しゃーないしゃーない⤴
前に来た時は骸骨の魔物に襲われたけど、
オレ達が【深界層主】を斃して
そのオーブを持ってるからなのか
ナリを潜めてやがる。
まぁ、此処なら、同じ「同族」もいるわけだし
屍生人でも屍骸人でも
平和に生きられるんじゃねーの?
言ってる事が矛盾しまくってて我ながら笑けてくるケド。
背後の骸の大群衆は、
宝珠の能力で問題なく運搬出来た。
まぁ結構魔力は持ってかれたがね。
あぁ~、あぁ~、我ながらしくねーコトしてんのは解ってるよ。
別にコイツら「可哀想」とか想ったワケじゃねー。
強いて云うならマジで ❝なんとなく❞ だよ。
ソレ以上の理由も深い意味もねー、
〇〇のラノベ作家の「設定」みてーに
考えるだけ無駄、元が浅ぇんだから
ガチで何もねーよ本当に。
「ンじゃ帰るわオレ。たまには面見せっかも知れねーケド、
基本来ねーと想って。
後は魔物らしく冒険者襲うなりその脳ミソ啜るなり好きにしろよ。
魔皇が赦す」
左手をヒラヒラさせながら踵を返す。
オレらの世界じゃ ❝悪魔に最も近いのは人間だ❞
なんて言葉が在ったな。
あらゆる生き物喰い散らかしてンのに
テメーの「番」になったら大騒ぎ、と。
転生して別の生物になった分、
ソコらへん大分ニュートラルになってるね。
偶に「人間」っていう種族自体に
ムカつく時もあるわ。
ならガチで滅ぼしてやろうか?
❝魔皇❞ らしくよ。
「……」
ンでまぁこうなると想ったよ。
遠ざかるオレに骸骨共が行かないでとばかりに獅噛み付いて来る。
子供の方は文字通り足に噛みついてるしな、
もう歯がねーから甘噛みだけど。
ン? 一応「感謝」も混じってんのか?
声帯がねーから喋れねーけど、
死体でも魔那は在るからその感情みたいなのは伝わってくる。
そんな姿になっても生きてて嬉しいか?
チート能力も美少女もハーレムもねぇけど、
なら、オレの魔導もお慰みだな。
あぁ~あ、腐液、排液、その他諸々混ざっちまって
「絵的」には今のオレトンでもねー有り様になってんだろうけど、
もう嗅覚が麻痺っちまってっから
正直あんま気になんねーや。
脳内でアビスがまたギャーギャーうるせーけど
コレが精霊や妖精だったら
おまえそんなに騒がねーだろ、差別すんなよ同じ魔物同士。
そんなこんなでうちゃうちゃやって、
でも創造者の「命令」は絶対だから
迷宮の入り口近くなったら自然と離れたよ。
背後は振り向かねーが全員で手を振ってるのは解る、
最初より人数増えてるけどな、
まぁお仲間同士仲良くやれよ、後の事は知らん。
はぁ~あ、 取り敢えず魔導、魔導、
『窓 ノ 中 ノ 粉 雪』
今の今まで世界で一番汚い女だったかもなオレ、
某18禁ジャンルも真っ青、イヤ観た事ねーけどね。
日はもうとっくり暮れていた。
月明りと星の瞬き以外は光源の無い森、
魔皇の眼じゃなかったらガチで真っ暗だな、
昔の時代劇みてーに。
そんな文字通りの漆黒の中、
小波めく森を揺蕩う翡翠の灯火。
嘘っぽいほど敵意を感じないのでそのまま棒立ち、
ってか誰か解るのがちょっとムカつく。
はよ来いや、もっとスピード出るだろ
この広い森の中オレに向かって来てんだから。
『こんばんわぁ~♪』
「イノウェ……」
『まぁまぁまぁ~♪ 「発音」 を少し変えてもぉ~、誤魔化されませんわぁ~♪
でもソレならぁ~、いい加減よろしいかもですねぇ~♪
魔皇サマに ❝名❞ を賜るなどぉ~、
滅多に無い機会ですしぃ~♪』
よくある ”名づけ” の恩恵でもあんのか?
でもデータがスライム一匹しかねーから知らねーよ、
オレが不便だから勝手に呼んでるだけだし、
昔からアダ名つけるのは結構得意だったがね。
脳内のアビス曰く大精霊 ❝ドライアド❞ なら
一度通過した森の中なら大概自由に移動出来るらしい。
瞬間、光速ってほどではないが任意の場所に自在に
「転移」する事も。
オレの持ってる”宝珠”に似た異能か。
なら今日のオレの一連の「動き」もずっと視られてたってコトだな。
チト不覚だ、イラつき過ぎて全然気づかなかった。




