Ж-11 ミエナイチカラ ~Invisible One~ ②
「……」
はっきり言ってヒモじゃん!
オレ要らねーじゃん!
異世界ニート!? 新しいなソレ!
いいよなぁ~、 『武芸者』
実践的で応用も効き、 尚且つデメリも少ないという
完全スキルじゃん。
ソレに対してオレの異能の何とも微妙なコト……
『創造者』
簡単に言うと能力は概念操作。
オレの精神が想い描いた、 魔導や異能、
果ては他のモノまで無から生みだすコトが出来るらしい。
といえばトンでもチートっぽくて聴こえはいいが、
別にオレの想い描いたモノが即、 何でも手に入るわけじゃない。
あくまで純粋な、 嘘偽りの無い原基の感情、
トコトン追い詰められた必死さのようなモノが必要不可欠なのであって
それこそ絶望か渇望でもしないと発現しないそうだ。
(元になる媒体が有れば、 ある程度アビスが補えるらしいが)
だからオレが頭の中で武器が欲しい、
食べ物が欲しい、 それこそデ〇・ノートが欲しいなんて念じても
当然何にも出てこない。
そんな都合の良い話があるわけないと、
オレ自身が否定してしまっているから。
『ご都合主義』 の話キライだしね。
格闘経験は疎か、 殴り合いのケンカすらした事ないヘタレが
人外の化け物との戦いで活躍する話とか〇ねとすら想うからね。
故に非常に扱い辛い、 ヘタすりゃ封印確定のスキルなのだ。
一応 【原初魔導】 っていう魔導形態が生まれたけど、
コレもまたオレの精神に依存してて、
切羽詰まらないと術が発現しないからなぁ~。
ボクシングの試合で 「オレ追い詰められると強いッスよ!」
とか抜かしてるようなモンで、 イヤ強いヤツは元々追い詰められんだろう、
ソレ単に練習してないだけじゃねーの? というなんとも度し難い異能なのだ。
そんな落伍者とは違う人格者が
異世界の木の実を品良く齧りながらふと呟く。
「良いものだな……」
「はい?」
「いや、 不謹慎だとは承知しているが、
この風景だ」
そう言って視線を向ける先。
……うん、 確かに。
昨夜の紅い月にも驚かされたけど、
これはコレでまた――
ガジュマルに似てるが細い無数の幹が有り得ない角度で絡まり合って、
それで一つを形成している大樹。
嘗ては人の営みが在ったのか、
風雨に晒されても劣化の少ない繊細な装飾が入った石門。
その周囲に同様の工芸が施された祠、 灯籠、 苔生した石畳。
降り注ぐ木漏れ日の中揺蕩う、 魔那と思しき燐光。
遥か先に見える、 朽ちた風車、 切り立った崖、 その先に広がる幻想の自然。
逃げに逃げまくってこんな所に来てたのか。
っつーか周囲の風景に気を配るとかそんな余裕あるかボケェ!
いや、 リュカが悪いんじゃないよ、
全部オレ達をいただきますしようとする魔物が悪い
魔物が悪い…………あとオレが悪い (ボソッ)