Ж-79 逢 魔 ヶ 路 ~Devil Load's Road~ ⑧
ヴュッッッッッグオオオオオオオオオォォォォォォォォ
アアアアアアアアアアアアァァァァァァァァ―――――――
――――――――――――ッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!
突如天地が覆った。
事実それだけの災厄を伴って大地が融けた。
オレが一人で樹の上にいたのはこの結末が解ってたから。
巨大な存在は一部例外を除いて大地が無いと存在出来ない。
じゃあ、ンなモン無くしちまおうってのがオレの考え。
今まで何度も ❝界層主❞ と戦ってきて、
オレも何も考えてねぇわけじゃねーのさ。
超広域型地形変異魔導、 『太 陽 ニ 脊 ヲ 向 ケ テ』
元は無数の ❝毒の沼❞ を創って敵の侵入を阻む魔導だったが
ソレを「応用」すればこんなコトも出来る。
通常8種の沼地を全部一まとめに、
毒、酸、血、蟲、骨、荊、膏、そして黒液、
ソレらが全部混ざって濁流のように渦巻いてんだよ。
腐蝕、殺傷、屠毒、病疫、汚辱その他諸々、
あらゆる悪性要因が全部重複して
累乗になって底無しの地獄沼へと呑み込まれるって寸法さ。
『―――――グヴォォォォ!!!!! グガアアアァァァァ………………!!!!!??
…………オゥグゥゥゥ!!!!???? ゲ、ヴァァァァァァ!!!!!!』
驚き過ぎて声も出ねーか、獣帝サンよ?
オレが小娘だからって完全に舐め腐って、
戦う気ゼロだったからな?
豪傑の武将だって油断コキまくってりゃあ
転んで骨も折るし小さな怪我で破傷風にだってなるんだぜ。
真っ向からの『全力勝負』なんてヤらねーよ、
戦闘が描けねーラノベ作家じゃあるまいし。
オレ達がヤってんのは 「戦い」 じゃなくて ❝殺し合い❞ だろ?
ソコに ❝合図❞ はねーんだわ、
ヤベッ、元の世界の〇〇みてーな〇〇漫画思い出しちまった。
「ゲボ……ォォォ……!! 魔、魔皇、殿……!?
何……故……!?ご、誤、解……!
我が、主……は……!」
獣帝の周りの羽虫も一緒に吞み込まれた、
魔導発動の吸引力によって、周囲の空気は真空に近くなるし
ソレに伴う暴風と放電まで生まれてる。
森ン中じゃ全力で「翔ぶ」ってわけにもいかねーだろ?
羽ばたいてても浮いてるくれーじゃ魔導の余波は防げねーよ。
魔皇は例外、流石に沼本体に呑み込まれたら死ぬだろうけど
「副次効果」は無効なんだわ。
イノウエが自分の異能でブッ倒れねーのと一緒。
漆黒の濁流、地獄の怨嗟。
座ってた元の樹はとっくに呑み込まれて擦り潰された、
オレは魔導で宙の上に立ってる。
激流の中の擦過物は残虐な兇器、なんなら兵器と云っても過言じゃない
折れた荊と割れた骨と砕けながらも生きてる蟲がまんま一緒。
フン、最後に見るのも主様とやらじゃなくて見知った顔か、
レディンとか言ったっけ?
昨日傷治して今日殺してりゃあそりゃワケわかんねーわな。
オレもそうだよ、恨みはねーけど義理もねー。
ただ魔物の大群が迫ってくるのは充分脅威だから
全部まとめて沈んでもらう。
善悪とか道理とか言い出すなよ?
おまえら魔物でオレは魔皇なんだから。
コレがオレが独りでいたもう一つの理由。
アイツら相手が ❝悪党❞ じゃねーと戦えねーんだわ、
最低でも”先に攻撃される”まで待っちまう。
奇襲、不意打ち、問答無用の先制攻撃、
躊躇無くヤれんのはオレだけ。
おまえらが「来た」コトさえ教えねーよ、
だからわざわざ森の深い所で待ち伏せてんだ。
❝疑わしきは罰する❞
こーゆー悪役ムーブ余裕でかませんのもオレだけ。
善人が得する事は少ねーんだわ、
特にこーゆー『無法地帯』や『戦いの場』じゃ猶更。
何でもヤるよ?
『神』が居てもこの程度の世界なら、
魔皇がナニしようがお咎め無しだろ?
人間は良くてなんで魔皇はダメなんだ?
あ?