Ж-78 運 命 迸 流 ~Destiny Stream~ ⑫
「では、ワタシの方から――」
全員が大樹の周りに集まりオレ達は前に出て無数の奴隷と向き合う形になる。
何か小学校の「朝礼」を思い出すね。
夏休みの前とか蒸した体育館で生徒がバッタンバッタン倒れてるのに、
スーツ着た校長の爺だけ何故か倒れねーのよ。
全然覚えてねークソつまらねー話きっちり最後まで話しやがるからね。
ちったぁ生徒の身の上心配しろよ〇〇教師共。
「概要は伴侶より承っております。
当該の予想に反する事無く、
子供達全員が無事『生業』を受諾した事を確認。
【廃業者】は一人もおりません。
殆どが「初級業種」でしたが、
中級、上級の適性が在る者も数人確認出来ました。
これにより……」
魔導でファイルみたいなのを出して
魔氣で書かれた文字を事細かに読み上げる。
流石は『賢者』戦闘だけが特技じゃないわけだ。
ウン、よくまとまってて解り易くて聞き易いんだけど
どうにも物足りない感が一つ。
声掠れてるがコレは訊かねばなるまい。
「あのぉ――、❝異世界でチート能力❞ は――?」
片手を上げて喉の奥から声を絞り出す。
「――何の事でしょうか? おひいさま。
左様な事象は、寡聞にして存じ上げません」
ねぇのかよ!
オレらの世界じゃ無い方が珍しかったのに!
何この「百連ガチャ」引いて全部“ハズレ”だったみたいな気分!
全身から血ィ嘔いたんだぞ! 声プロレスラーのおっさんだぞ!
ってな事を想い悔しくて地面を百叩きしてると
相方が傍に来てそっと肩に手を置いてくれた。
周りに流れる気まずい疑問符、
「異世界人」には解らんかも知れんが
オレらの世界じゃ『常識』だったんだよ!
どいつもこいつも口開けばそう言ってて
新聞のチラシにも載っとったわ!
「あの――。ご心痛の論拠は解りませんが、
これだけの人数、しかも年齢も性別も民族も違う者達に、
一度に『生業』を授けて問題無かった事が
驚嘆すべき事象です。
通常は本人の魔氣を遣わねばなりませんし
非授になる事もしばしば――
何より自身の魔氣を遣って供与を施すなど、
『高位神官』クラスの魔導か異能でないと不可能です。
対象は伯爵以上の貴族か王族の第六継承者まで。
ソレも儀式を用いての「単体」に過ぎません」
そうなの?
他の小説じゃ勝手に呼び出した
〇〇王族とか〇〇女神とかが随分簡単にやってたケド。
コレじゃ「ハズレスキルで追放」も出来ねーとか
想ったけどそれほど悪い結果でもねーのか?
『上級職』が生まれなかったのは
まだオレの魔導のレベルが低いか練度不足なだけ?
うわわわわわ。
ちょっと落ち込むとすぐに群がってくる大量の子供共。
まぁ不安なんだろうね、オレが生まれて初めて出来た『庇護者』の一人だから
親も知らねーコイツらにとっては何で心配になるのかも解らず
反射的に纏わってるに過ぎない。
そんなおまえらだから『反則能力』目醒めてもオカシクねぇとは想ったが
残念、此処の現実は甘くねーみてぇ。
大して不幸でもねー陰キャのラノベ主人公にはホイホイ与えられるのにな。
ウン、やっぱり『神』は殺そう。
妙な決意表明と同時に、
大樹を揺らす風と葉々鳴りの音――。
「おひいさまは、本当にいつも、他者の事しか考えていませんね。
その『ちーと能力』とやらを、自分の為に利用しようとは、
欠片も考えていない」
「そういう男だ。最初からな」
「え――?」
「失言だ。聞き流されよ」
ハァ、群がる子供共を宥めるのに一苦労した。
ン? 何でおまえら泣いてんの? 莫迦四人。
今回はここまでです。




