Ж-78 運 命 迸 流 ~Destiny Stream~ ⑥
「――! ――ッ!」
見上げると、何故かソフィアが口元に手を当てて泣いていた。
予想だにしなかった光景にオレもしばし唖然とする。
怒る以上に泣く所なんて、この娘に於いては
一生見る事無いと想ってたからね。
片方のロッドは翳したままで回復魔導が途切れないのは
流石と云えるが術が弱まったのはその所為ね。
ってかここに至る一連の流れで「泣く」トコなんて有ったか?
ガバってる少年漫画の「感動シーン」じゃねーんだから、
全然“繋がって”ねーぞこの前後。
残りページ数が少なくなったラノベにも同じ事が云える。
「……どした……の……?」
弱ってる血だらけのねーちゃんにツッコませるなよ
人魚姫の『賢者』
マジで意味が解んねー、新世界入った後の海賊漫画くらい
「場面」の放り込み加減が素でエグイ。
「ごめん……なさい……ワタシにも……解らない……のです……」
顔を背け肩を震わせながらそう告げるソフィア。
『賢者』にも解らないコト? そりゃあ大変やね。
まぁアニメやマンガと違って『答え』の用意されてない事なんて
現実にはいっぱいあるからね、 ソレでいいんじゃねぇの。
聞いといて悪いけどオレもビックリしたからさ。
「ただ……美しくて……胸が、締め付けられて……止まらないのです……
深海の水底にも……星界の何れにも……
こんな『光景』は、御座いませんでした……
逆は、 嫌というほど眼にしたのですが……
如何に富を積もうとも、栄華を極めようとも、
決して見られるものでは無いのです……」
あん? つまり無数の『種族』が?
それも『亜人』や『奴隷』の子供が?
何人もオレに纏わりついて一応は笑って安らいでるから、
ソレが光の加減とかの所為で
ナニカの【象徴】みたいに君には視えちゃったワケ?
偶然と困惑も有ったかもだけどさ。
そ~んな御大層なモンじゃなかろうに、
頭が良いってのも大変だね。
今はオレしか頼りがいねーから、嫌でも無理に縋り付いてるだけだよ。
明日には多分「君」の方に全員行ってるさ、 オレならそうする。
そして渇いた風の中、一人石けりしてる自分が見えるようだ。
でもまぁ、云われてみれば元の世界でも
「平等」とか「救済」ってのは本当の意味じゃ見た事無かったかも。
学校なんて『不平等』の巣窟みたいな場所だったし、
社会に出ればソレがより一層顕著となる。
建て前としての『平等』なんて誰も信じて無かったし、
差別や虐めはより陰湿な形として如実に存在し続けた。
赤の他人を身体張って守るヤツなんて
現実では一切見た事無い。
オレだって魔導や異能が無けりゃヤらねーよ、
そもそも物理的に出来ねーし。
でもまぁ、 【虐げられるのが当たり前の世界】、 か。
『超常』が普通に存在する世界なら、
取り繕う必要も無いのかも知れない。
本当にいる『神』が屑共は祝福して、
こいつらは当たり前のように見捨てられてる。
オレのヤった事が偶々、【神でもやらない事】だったってだけだ。
本当の処はどうだか解んねーし見る者によっては関係無い。
オレの世界で数千年前に磔られた男も、
本人は何考えてたか解りゃしねーしな。
今日はここまでです。




