Ж-77 声 亡 き 聲 ~Nameless Demi-Huma~ ㉑
「……」
ようやく、やっと、リュカの剣が前に向くのを止めた。
刀身を背に収めるがまだ右手が小刻みで震えて
自分の意志じゃ手が離れないらしい。
その掌は血でバリバリ、
休むどころか呼吸する間さえ惜しんで
ブッた斬り、ブッ放す、完全に正気を逸脱していた状態だ。
敵から付けられた傷は一つも無いが、
自分の『武力』の反動が身体を酷使し精神を苛んでいる。
“魔薬”
やっと追いついたよ、今のままで、オレが視えてなかったろ?
こんなに近くにいるのにさ――。
「……」
正直、見てらんねぇ、返り血で紅に染まった友人の姿は。
心はまんまズタボロだろ?
オレと違って幾らクズ共を殺そうが拷問に掛けようが、
おまえの気持ちは少しも癒されないから。
ま、取り敢えず今は「動こう」ぜ。
何も考えない方が良い時って、絶対あるから。
さて、残ったヤツらに“魔薬”一人一人に掛けるのも
メンドクセェな、怪我で動けないのもいるだろうし
そもそもオレらの存在が解ってねぇのもいるだろう。
結構多用する魔導だし、コレも【原初魔導】にしちまうか。
効果範囲は概略的に細かい調整は後ですりゃいいや。
今は兎に角、一人でも多く掛かるように。
~§其方が諱 月次に久しき 証憑が如し§~
~§召す呼応 招く呼動 生世に万劫に§~
~§乃公至妙に 爾が其儀を 恵み賜いきや?§~
~§万物を 万物を――§~
~§今宵 爾が姿 帳に裏う§~
~§徒然に望する 太虚の洞§~
~§双影 星を避けて 双眸 星を躱けて§~
『初 マ リ ハ イ ツ モ 雨』
今日はここまでです。




