Ж-77 声 亡 き 聲 ~Nameless Demi-Huma~ ⑱
「う、動くな! 動くんじゃねぇ! このガキ殺すぞ!」
ガキ共の寄せ集めでビショビショになったオレのちょっと先にて、
リュカの黒い外套が戦風に靡いている。
浅層出口側のここは特に幼い子供が多かった、
アビス曰く「亜人」の子供の血は、
ある種の霊的効用が高いと
「人間」の貴族の莫迦共に信じられてるんだってさ。
だから裸にして甚振ったり八つ裂きにしようとしてたわけか?
『深淵』の此処なら何をやっても赦されるから。
生憎だったな、赦されねーよ。
神が居なくてもオレ達がいま此処にいる――。
「貴様が殺そうとしていた子供だろう……!」
新しい剣技か? 斬ったっていうより刃が通った場所が
そのまま消滅したみたいだ。
【刹 幻】っていうらしいけど
激しい怒りで新たな異能が目醒めるのは“英雄”の特性、
その上位種である『英霊』なら猶更の事だ。
特に致命的だったのは木々からブラ下げられた
『赤ん坊』の揺り籠。
一体何の為に在るモノなのか?
魔皇じゃなくても世界くらい滅ぼしたくなるかも知れない。
あぁ、 初めて想ったかもしれねーな、
“人間じゃなくて良かった” って。
フム、あらかた殺したか?
“転移系”の魔導がある以上、全部仕留めたってのは望み薄だが、
入る事が阻止出来ない以上、出る事も完全にシャット・アウトは出来ない。
そしてオレ以上に力を持て余してるのが相方だ、
凄まじいまでの魔氣が全身から渦巻いて放電のように爆ぜてる、
その所為で自身も傷ついてしまってるくらいだ。
「逃がさん……一匹残らず……駆逐してくれる……!
人の皮を被った人外の外道共……
墓も遺さず根絶やしにせん……!」
こりゃ何云っても止まらなそーだな。
このまま『深淵』の外に飛び出して、
その“星界”にまで攻め掛かっていっちまいそうだ。
しゃーない、「探査系」の魔導、少々骨だが今ここで創るか?
状況的、精神的に多分条件は充たしてる。
『創造者――』
~§離れる 稀望 廃する残望§~
~§末期さえ遺却し 境界を忘却せよ§~
~§此が能才 光遍く星彩なれば§~
~§其が冀望 戯れ刹那の光芒とならん§~
『揺 ル ギ 無 イ モ ノ 一 ツッッッッ!!!!』
躰から輻射状に放散される魔氣。
“宝珠”の感覚が躰に沁み付いてたのもデカイ、
未踏の領域を走った魔導が魔那に反響して
元の世界のソナーみたいに明確に脳内で周囲の地形と存在を再構築する。
今回は殺すヤツが服着てるから解り易いや、
わざわざ自分で殺され易いようにしててくれる。
まぁソイツの魔那が発する、邪悪なんて表現以下の
汚ねぇ感覚も一緒に来るけどね。




