Ж-76 魔 隷 創 成 ~Crimination Orb~ ⑧
「ありがとう御座います、 魔皇サマ」
変わらない少女の声色、 でも絶対的に違うナニカを纏わせて
ソレはオレに届いた。
「素晴らしい――。 まるで、 世界が変わったみたいです。
冷たくて透明な水が、 頭の中と全身を隈無く充たしているみたいな。
今までのわたしはどうして、
あんな薄汚いニンゲン共の冒険者などに怯えていたのでしょうか?
過去の自分が、 許せない気分です」
アカーン! 「能力」 手に入ってちょっとイキってる~!
そのうち「勝てんぜおまえは」とかドヤ顔で言い出しそうな
『異世界チート症候群』
罹かっちゃイケナイもんに罹っちまったぁ~、
主にオレの所為で!
「あの、 も、 もしかして、 私達の事も、 嫌いになった? サーシャ……」
「ファムたちも、 一応 「冒険者」 なのですニャ……」
気配が変わって今や威圧感すら漂わせるハーフ・エルフの少女に
セリナとファムが不安そうに問いかける。
まぁショックっちゃショックだろうね、
こいつら仲良かったから。
「え? どうしてですか?
わたし達は同じ “魔皇サマの下僕” でしょう?
わたしが嫌いなのは、 魔皇サマとハーフ・エルフに危害を加える
ニンゲン共だけです」
無垢な表情、 「守りたい、 この笑顔」 とコメントしたくなるような
今までと変わらないサーシャの姿だった。
だからおまえらその溶けた表情で頭掻くのやめろ、
結構エグイこと言ってンぞ、 魔皇に向かってくんのは
『正しい』 ヤツのが多いだろうに。
「体内の魔那が変質した所為か、
今までより強く “声” が聴こえるようになりました。
これが、 幻精霊アビス様のお声ですか?
実に清澄な、 森の神が如き調べです」
だからテメーも照れんなっつーの人の脳内で、
サーシャは魔導だの異能だので
よくオレと“繋がって”たからな。
魔那が共鳴してアビスの念話もよく伝わるようになったのかも。
【暗黒魔剣士】の特殊能力かも知れんがね。
「あの、 カリムさん? よろしければその「斧」を、少し貸してくれませんか?」
? 気づかなかった。 足音も無しでいつの間にか視界から消えている。
「え? いや、 え~と、 コレは馴染みの武器屋に造らせた特注品だから、
トンでもなく重いぜ。 サーシャみたいな女の子じゃ無理だ。
……ところで俺の事は?」
「大好きですよ♪」
だからその「表情」やめろっつーの、流行ってんのか?
あんまりクドイとラノベキャラの「口癖」みてーに
寒くなってくるぞ。




