Ж-76 魔 隷 創 成 ~Crimination Orb~ ⑥
【暗黒魔剣士】……?
強烈な光と共に生まれた割にはやたらドス黒くて禍々しい色彩の法陣だったので
嫌な予感はしたのだが最悪の方向でソレが当たってしまった。
え? やっぱりオレが魔皇だから?
余計なちょっかい加えて『本来のモノ』とは変わっちゃった、とか?
サーシャに特殊な才能が有るのは解ってたんだよ、
たった一日で身体が急成長した事も含めて。
やっぱり潜在的な魔氣と魔那の『器』がケタ外れに大きいから、
生まれる法陣も大量になる。
だったらソレに合わせて“その先”が在るんじゃないかと
ほぼ勢いと直感でヤっちゃったわけだけど
よりによってコレかよぉ~、
絶対危険と代償ガン積みじゃん、
“生命を蝕む” 的な。
あぁ、 うるせーよアビス、 強ぇのは解った、
天業、 神業とも違う
“異業”だってな。
でも一回決めたらもうそう簡単に変えられねーんだろ?
何か呪い的なモノでずっとそのままなニオイがプンプンするし。
そもそも10歳の女の子をガチの「剣士」にするとか、
ラノベのおっさんでもねー限り気が進まんよオレは。
そんな事を脳内で問答している間に引かれる袖口。
「魔皇サマ、 わたし、 “コレ” が良いです」
漏れる深紅の灼光に反照して、
少女の瞳が真っすぐオレを見つめた。
「イヤでもねぇ、 魔皇が云う事じゃないが絶対ヤバイよこの職業。
自分の生命削って放つ異能とか普通にありそうだもん。
あ、 やっぱ有るって脳内のうるせーのが云ってる。
解った泣くな、 話が進まねー。
だからさ――」
「わたしは、 コレが良いんです」
はい? だって「暗黒」よ? でもって 「魔剣士」よ?
女の子が嫌なモノのかなり上位なんじゃないの?
ほら、 もっと光的なキラキラした『生業』もあるじゃん。
この “白衣司祭” とかお勧めだなぁ~オレ。
「わたし、 『光』 は好きじゃないんです。
光は、 わたし達を照らしてはくれなかった、
ただの一度も、 救ってはくれなかった。
照らされるのは、 いつも他の人達だけ。
そしてその人達が、 わたし達から何もかも奪っていく……!
いる筈の神様も、 わたし達には何もしてくれない」
そう云えばそうか。
“神々の恩恵”とか抜かしておきながら、
どうしてハーフ・エルフが虐げられるのは放っておくんだ?
『神』 の奴ら――。
オレらの世界の 【差別問題】 と同じに考えてたが、
こりゃもう少し根が深いのかもしれねぇ。
「わたし達を助けてくれたのは、 救ってくれたのは、
魔皇サマの 【闇】 だけです。
だから信じられるのは、 信じたいのは、 もう魔皇サマだけなんです。
だから、 魔皇サマと同じになれるなら、 少しでも近づけるなら、
わたしはソレが良いんです」
『光』 と 【闇】
オレらの世界でも存在した概念だが実質的な“差異”は存在しなかった。
『神』 と 【悪魔】 も同じだ、
どっちも人間を大量に殺すっていう意味じゃ変わらねぇ。
従わねぇヤツはブッ殺すっていうただそれだけのモノ。
だったらもうソレでいいか、
例え【闇】に染まっても、 サーシャがオレみてぇになるとは限らねぇんだから。
『後書き』
今回はここまでです。
『十歳のハーフ・エルフだけど暗黒魔剣士に転職して無双です!』
とか書けそうですね、書かねーケド……('A`)




