Ж-76 魔 隷 創 成 ~Crimination Orb~ ④
こーゆー時、 自分一人の方が気が楽だってのが
つくづく身に沁みる。
「他人」が絡むと一気に話がややこしくなるからな。
「やっぱ、」
「やってください!」
躊躇して魔氣の放出を止めようとしたオレにサーシャの声が響いた。
「わたし、 強くなれるからも知れないんですよね?
わたしが成功したら、 兄妹も、 両親も、 他の皆だって。
だったら危険があっても大丈夫です。
だって魔皇サマが、 いつもいつもわたし達にしてくれた事だから!」
宝珠の深紅の煌めきが更に輝度を増す。
少女の決意に煽られたかのように、 ただ紅く。
テメーの事しか考えてねーラノベ女よりずっと立派だ。
解った、 なんかあってもオレが魔導でなんとかするから安心しろ。
【死 蝕 兇 天 儀】
転生に転生を重ねるのはオレの得意技だ。
莫迦共に吠え面かかせてやろうぜ、
10歳の女の子の方がおまえらより遥かに強いって。
差し出した深紅の宝珠に少女の手が重なる、
端から見れば【悪魔の契約】そのものの光景だろう。
そうだな、 魔皇と出逢わなければ差別や迫害はあるが
“戦わなくて” 済んだかもしれない。
だがもうどうでもいい、 オレが連れて行くと決めた、
なら魔皇らしく倫理も責任も踏み躙ってただ進むだけだ。
《CAUTION!!》
サーシャが宝珠に触れた瞬間、
また一抹光が弾けて頭上に紅い線で描かれた法陣が浮かんだ。
一つじゃなく無数、 否、 十個以上在るぞ!
随分と大袈裟だな、 『生業選択』 ってのはいつもこうか?
「いえ、 通常のモノとは違います。
ここまで強大な魔氣と魔那は生じず、
法陣ももっと小さくて少ないのです。
敢えて表現するなら、 ワタシが “海神の神殿” で
『賢者』 の天業を得た時に近いかと――」
オレの問いにソフィアが半ば放心したような様相で応える。
どうやら “特別製” ってワケか?
【深界層主】の宝珠だから寧ろ当然か。
脳内で叫ぶアビス曰くこの無数の法陣の一つ一つが
その者の運命を変える 『生業』 を表すらしい。
しかし “選択の機会は一回のみ”
後はその選んだ『生業』で一定の「功績」を残さないと
新たな『選択』の時は訪れないのだそうだ。
その数、 種類は民族、 性別、 年齢、 個人によっても違う、
しかしそれでもこのサーシャのように
『最初の選択』 でこうも無数の法陣が表れるのは稀であるそうだ。
 




