Ж-76 魔 隷 創 成 ~Crimination Orb~
『QUOOOOOOOOOM!!』
朝焼けに響く巨獣の嘶き。
「よぉ、 スフィ公、 元気だったか?」
そう言って手を挙げるオレに巨大な女貌が擦り寄ってくる。
やっぱデケーなコイツ、 【深界層主】 には劣るけど
ここら一帯じゃもう 「主」 扱いだろう、
逆らう魔物がいたら見てみたい。
『だめ、 はなれて、 ママは、 ミウのモノ』
言いながら甲冑姿の少女が巨獣の顔を一生懸命押しのけようとする。
一人でこっそり来たかったんだが隣で寝てるコイツまでは出し抜けなかった。
流石に寝る時まで 「この姿」 じゃオレとベッドが死ぬから
元に戻るよう滾々と言い聞かせたがね。
『QYUM、 QYUM、 QYUUUUUUUNN!』
『だから、 ダメ、 おねいちゃんのいうこときくの』
姿が変わっても解るのか、 巨大なスフィンクスはミウに懐いてじゃれつき出す。
魔物は 「眼」 じゃなくて魔氣と魔那で個体を識別するらしいからな、
見た目「スライム」とかあんま関係ないのかも。
『CUUUUULULULULULUッッッッッッッ!!!!!!!』
魔物の鳴き声とは想えない、 恐ろしく澄んだ音色。
茂みの方が避けるみたいに、
優雅な脚取りで緑色の鬣を携えた白馬が姿を現した。
「どうどう」
『あ、 また。 ダメっていってるのに』
クルクルと愛嬌のある声で首を垂れる白面を軽く撫でてやる。
おまえも元気だったか? “ユニ公”
相変わらず角が立派だな。
んじゃまぁメインの二人が来た所で残り一斉に呼んでみようか、
口に咥えた指笛にユニコーンとスフィンクスの鳴き声が加わる。
すぐに土煙を挙げて周囲一帯の魔物の群れが集まった。
「わざわざ呼んだのは他でもねーけど、
おまえら、 ある場所の “見張り” やってくんない?
移動はこの宝珠で出来るからすぐにでも行ける。
おまえらオレの “千魔隷属” で繋がってっから、
ソレを応用すれば 「感覚」 も共有出来んだよ」
時間限定だけどね、 オレとミウの魔那がリンクしてるみたいな状態は
造り出せる。
『深淵の森』に魔物が居るのは当たり前だからな。
オレやリュカが見張るよりは怪しまれるリスクが少なくてすむ、
人間=集落がある、 って余計な連想もされずにすむしな。