Ж-75 従 魔 変 貌 ~Servant Metamorphose~ ⑩
「とにかく、 いくら姫に似てるからってミウちゃんにヘンな真似しないでよね。
子供と同じなんだから、 したら本当にパーティーから追放するからね!」
「ミウちゃんは人間になっても肌がスベスベですニャ♪
今日は一緒にお風呂に入りましょうですニャ~♪」
完全敗北者となり両膝をつく男の肩に
狼人が手を置いている。
イイ奴だなおまえ、 人気投票したら意外と上位に食い込むよ。
「ま、 そーゆーワケ。
色々あったけど、 オレは大丈夫だから、
詳しい事はそのうち集会場で話す。
考えまとまってねーからちょっと待って。
心配して出迎えありがとうね。
皆にも良い事だから期待してて」
相方に寄りそったままそう告げると、
皆また何か言いたそうに口籠ったが、
結局不承不承ぞろぞろ家に帰っていった。
サーシャはまた何かあるといけないから
今日はオレが爺ちゃん家で預かるって告げて
家族には帰ってもらう。
心無しが本人もホッとしたようだ、
ミウの事に隠れてるけどこの娘も
スゲー『成長』したみたいだしね、
今日一日でどこぞの野菜星人張りに。
『一番弱い娘を強くする』
実はコレもオレの 【戦術現魔】 の一つ――。
才能あるヤツを一人二人強くしたって意味ねーんだよ、
『全体』 としては。
『競争』じゃなく【戦争】は、100点取れる少数ではなく
50点で良いから簡単に取れる多数を選ぶ。
サーシャにも出来る事なら他のヤツにも出来る、
ソレがこの娘を一番近くに置く理由。
『護らないと死ぬ存在』 を常に意識しとかねーと、
結局 “自分の身の安全” で満足しちまう。
気づいた時はもう【危機】が眼の前に迫ってる状況だ、
オレとリュカとソフィアは生き残るかもしれねーが、
村の半数は確実に死ぬ、 カリム他3人も無事とは言い切れねぇ。
最悪村が分断されて散り散りになったとしても、
それぞれ生きていけるだけの 『戦闘力』 が要るんだよ。
【弱くても正しく】 じゃ生きていけない、
オレらの世界でもそうだったんだから
異世界じゃ猶更。
だから新しく手に入った “宝珠” で戦力の底上げを図る。
明日からでも始めるぞ、
クズはこっちの都合に合わせて攻め込んできたりしねーからな。
告白する万全の準備が整うまで待っててくれる『ラノベ女』みてーに、
現実は甘くねーんだよ。




