Ж-75 従 魔 変 貌 ~Servant Metamorphose~ ⑤
「うむ、 当初の我々の目的は完遂した。
予想外の戦果も得たが
些か主旨が暈けて来た感もある。
ここら辺が潮時を云う事であろう」
「伴侶、 おひいさま、 特にサーシャ、
本当にお疲れ様でした。
では離脱の魔導を行使します」
休んで魔氣も多少回復したのかソフィアが杖を掲げようとした瞬間――。
『まって』
聞き慣れた声だがほぼ聞き流してるので面食らった。
いつもは絶対離れないオレの肩から勢いよくPOM☆
と飛び降りると、 そのままピョコピョコ跳ねながら
椅子の亡骸に近づいていく。
「おいミウ、 帰るぞ?
気に入ったのかその死体?
また連れて来てやるからこっち来な」
そう言っても戻って来ない、 初めてだなこんな事。
何でアビスが一番びっくりしてるのか知らんけど。
「ママは疲れてんの、 今日は風呂一緒に入っていいから早く――」
『ママ、 これ、 いらないの?』
思わず息を飲んだのはこの小さい魔物から
初めて 『意志』 を感じ取ったからだ。
喋れるとはいっても今まで明確な知性は
コイツからは感じられなかった。
「いるもいらねーも 「死体」 ってのは誰かのモンじゃねーんだよ。
取り合いする莫迦もいるけどおまえはンな事知らんでいい」
確かに、 『貪喰』 掛けりゃ何かしら手に入るかもな。
でも今日はもういいよ、 ガチでもう疲れた、
腹いっぱいの所にどんなに美味いごちそう出されても
いらんがな、 って話。
『じゃ、 ミウが、 もらうね。
ママと、 いっしょ。
やっと、 ママと、 いっしょ』
「は――?」
『あばどん☆』
亡骸の前で止まったスライムが、
そう言って異能を行使した。
《CAUTION!!》
脳裏でアビスの驚愕が響くと同時に、
小さなスライムの躰が膨張し
巨大な軟体状となった肉塊が
椅子ごと亡骸を呑み込む。
コイツにこんな能力あったのか?
戦闘員にはカウントせず単なるマスコットとしてしか
認識してなかったオレは驚き通り越して唖然とするしかない。
今思い出したが【魔 皇 種 源 泉】 『逢 魔 ヶ 刻』で
魔皇の “眷属” になってるんだっけ? コイツ。
じゃあ知らない間に 「成長」してたのか?
表面的には見えないだけで。
想えば 『貪喰』 で述べ1万以上の生命は呑み込んでる。
直近では 『界層主』 と 【深界層主】 まで。
ソレが魔那でオレと繋がってる者に影響を与えないわけがなかったのか。
《従属、 ミウ・L、 『特質異能』
【星喰者】 発動!
吸収、 融解、 再構成、排出、
全てハイレベルで行われています!
WHAT’S A INCREDIBLE THIS ONE!?
我が主よ!!》
知らんがな、 イヤマジで知らんがな。
思い当たるとすればオレの胸の先っぽに吸い付くのは
魔氣と魔那を吸収してたんだと
今想えばそう感じるだけで、
『拾ったスライムが実は最強でした』
みたいな〇〇ラノベ展開
オレは想像もしてなかったよ!




